代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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一次エネルギーを安い天然ガスに 安全基金の活動と考え方(81)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 パナソニック、ソニー、シャープなど日本の代表的な家電企業が軒並み業績不振に陥っています。
その理由の根本的な原因の一つは、電力価格が世界一高いこと。
これが経営戦略の幅を狭めてきたのです。
現在、電力の半分は天然ガスで作られています。
日本は、天然ガスを液化してLNG(液化天然ガス)で輸入するため、価格がアメリカより3倍くらい高くなるのは仕方ありません。 しかし、「9倍」も差があるのです。

 東京電力や東京ガスをはじめとするエネルギーの独占企業が、天然ガスの価格を石油価格にリンクさせて長期契約したため、 石油の高騰とともに、日本が買う天然ガスの価格は大きく上がりました。
 一方、頁岩(けつがん)から天然ガスを取り出す画期的な技術が開発されたアメリカでは、シェールガス革命が起き、埋蔵量が100年を超えて、2008年から価格が大きく下がりました。
日本での天然ガス利用は、東京電力が東京ガスと共同で1969年にLNGを導入したところから始まり、今でも最も多く使っている企業は東京電力です。
見逃されているのは、自動車製造工場で燃料として使われ、化学工業で原料として用いられていること。
世界一高いLNGと電力を使って造る日本のクルマは、競争力を失ったので、それを、エコカー補助金や、輸出車の消費税払い戻しで利益を得る構図になっているのです。

 アメリカでは、安くなった天然ガスを原料にして、プラスチックの基礎原料であるエチレンをさらに安く造る技術開発が進んでおり、 2016年には天然ガスを用いて製造したエチレンの価格が10分の1になる予定です。 そうなると、日本の石油化学工場は、全滅します。
 日本の産業が低迷し、敗退が続く理由は、円高だけでなく、電力を作る基礎エネルギーと、化学工業の資源を世界で一番高く買っているからです。
日本は、一次エネルギーの4割が石油で、2割が天然ガス。石油依存度の高さが世界一なので、石油が安い間は儲かりました。
ところが、石油が高騰し、アメリカの天然ガス価格が暴落したので、今は石油を減らし、天然ガス価格を交渉して安くしなければ、日本経済は低落することになるのです。

 政府は8月末までに新しいエネルギー政策を決めるとして、2030年までに原発「0%」「15%」「20〜25%」の3案を提案しています。これは、すべてダメな案です。
大飯原発を止め、原発を0%のまま廃炉にして、LNGを現状からさらに増加させるのが、日本がとるべき道です。
政府の「0%」案のように、コストの高い自然エネルギーが35%を占めるようになれば、日本経済は破綻します。
 自然エネルギーを、「再生可能」「クリーン」と言うのは間違いです。太陽光発電や風力発電で、同じ装置は造れませんし、 装置を造るときに、大量の資源とエネルギーを使い、大量の廃棄物を出しているからです。

 日本の一次エネルギーを安い天然ガスにしないと、日本経済に未来はありません。


2012年9月1日発行 No.281より

安全基金の活動と考え方(82)「「尖閣」は国際司法裁判所に」

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