
習近平主席の「怒り」と「恐れ」
高市総理の「台湾有事」発言で始まった中国政府の度を超した日本への「怒り」と「威圧」は、新年を3日後に控えた12月29日に人民解放軍による「台湾侵攻」に向けた大規模軍事演習に拡大し、東アジアに一段と「緊張」をもたらしています。
「中国は実に厄介な国です」と、今、多くの日本人が素直に感じている気持ちではないでしょうか。ここで考えたいのが、習近平主席が何を怒り、何を恐れているかです。日本への「怒り」の理由は、多くの人が指摘しているように、高市発言が中国共産党の核心的利益の「一つの中国」を侵したと言うことでしょう。習主席は中国共産党の歴代指導者のなかで、革命の経験も貢献も全くない単なる党員上がりの指導者です。しかも、国家主席の任期「2期10年」を破って4期目を目前としているので、就任に当たって国民に約束した「一つの中国」は習氏の避けて通れない悲願なのです。高市発言は習主席が国民の目を「一つの中国」に引き寄せる絶好のチャンスだったと考えられます。
「百姓でも皇帝になれる」
中国人なら、誰もが知っている格言に「王侯将相、寧有種乎(いずくんぞ種しゅあらんや)」があります。国王や将校、大臣になるのは家柄や血統ではなく、自らの努力と運によるものだと言う意味です。
中国最初の統一王朝である秦王朝は、反乱軍の首謀者である「陳ちんしょうごこう勝呉広」が「王侯諸将、いずくんぞ種あらんや」と、兵卒を鼓舞して 秦を倒したと伝えられ、今でも 中国人は格言として心に留めています。
それでは、習主席は何を「恐れて」いるのでしょうか。
中国で生活していた時に、この格言を貧しい若者から「自分はトップに立ちたい」と言う言葉とともに聞き、中国人の気概に驚いたことがあります。同時に、日本と中国の発想の違いに気づかされました。
中国では「力と運」があれば、誰でも、最高権力者である皇帝の地位に就くことが可能です。しかし、日本では天皇家の「血筋」がないと天皇にはなれません。過酷な年貢に苦しむ農民が一揆を起こしても、せいぜい領主を倒すぐらいで、領主に代って将軍となった人はいません。ましてや、天皇になることは絶対にできません。
ですが、中国では農民の不満が爆発するとその破壊力はすさまじく、地方政権どころか中央政権まで崩壊させました。
4000年の間に19ほどの王朝が興亡し、しかも、異民族のモンゴル族が明王朝を支配し、満州族が清王朝を統治しました。
要するに、王朝が興亡を繰り返し、異民族が皇帝として天下を支配できたのは、中国全土に「王侯将相、いずくんぞ種あらんや」の気風が土壌としてあったからです。
この歴史を毛沢東は、「銃口から政権が生まれる」と説いたと知られています。
繰り返しますが、そうした歴史があるから、革命の実績がないまま一人独裁の座に就いた習氏は、庶民の不平不満の爆発が「銃口」に繋がると「恐れている」のです。
毛沢東が台湾の独立を支持していた
多くの日本人は、「台湾有事」がなくても、いずれ「台湾は中国に統一される」と思っているようですが、大事なことは中華人民共和国は「一瞬たり」とも、台湾を領有したことも、支配した歴史もないことです。
つまり、中国共産党にとって台湾は「失われた領土」ではないのです。
台湾有事は明らかに「侵略」です。
こう伝えても、ほとんどの人が、台湾は日清戦争で日本に割譲されたので、香港がイギリスから返還されたように、台湾が中国に戻るのが必然だと思っています。
これは大きな過ちです。
香港は紀元前の秦王朝の行政に組み込まれていたので、中国領土だったことに疑いはありません。
しかし、台湾が中国の行政下に入ったのは明の末期から清にかけて、漢民族が圧政から逃げて住んだ平地部だけのことです。
日清戦争で日本が領有し、日本が敗北すると台湾で独立運動が始まりました。
当時、蒋介石が率いる国民党と闘っていた毛沢東は、台湾の独立を支持していました。この重要な事実が見逃されています。
その後、台湾は国民党の独裁政権が続いたのですが、李登輝によって民主化の道が開かれ、「戦闘」も「独立宣言」もなく、台湾人の国家を実現したのです。
要するに、台湾は「独立国家」なのです。
体制の内側で始まる「中国有事」
多くの人が、中国が台湾侵攻すると、勝利は確実と見ていますが、これは錯覚です。
重要なことは、軍を動かせるか、です。
中国共産党が存続の危機となった天安門事件では、鄧小平は軍隊に市民への発砲を命令しました。これは鄧小平が抗日戦争と国共内戦を軍とともに戦ったからこそ、軍に影響力を行使できたのです。
しかし、革命を経験せず、軍歴もない習近平主席が軍に、本当に開戦を指示できるでしょうか。習主席が抜擢した軍幹部が次々に失脚しているのです。
党中央委員会(約200名)の委員なのに軍籍を剥奪された軍幹部8名の半数が、台湾侵攻に直結する部隊の関係者です。
この事実は、中国共産党政府が機能不全に陥りかかっている証です。本当に「台湾侵攻」を始めると、体制の内側から始まる「中国有事」があり得るのです。