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後進国ニッポン(下)
タクシー・地下鉄に驚く

日本は先進国と思いがちですが、本当の先進国に行くと、日常のサービスからSDGsへの取り組みまで、日本がいかに遅れているか、実感させられることばかりです。 
自動運転タクシー(無人タクシー)のイメージ

衝撃の無人タクシー体験

 ゴールデンウイークにアメリカを出張で訪ねたとき、サンフランシスコ市内で自動運転タクシー(無人タクシー)に乗りました。衝撃の体験でした。
 スマホのアプリで予約すると、時間通りホテルの前に到着。運転席をのぞくと、誰も乗っていません。
 ドアを開けて助手席に1人、後部座席に私も含めて2人乗り込むと、すぐに目的地である中華街のレストランに向かって動き始めました。
 内部は運転手がいない点を除いては普通の車となんら変わりません。ただ、誰も触っていないのに、ハンドルが勝手に右に左に回るのを見ていると、とても不思議な気持ちになりました。
 当然ながら赤信号ではちゃんと止まり、青に変わったらゆっくりと発進。車線変更もスムーズ。かなり安全運転です。
 ちょっと驚いたのは、交差点での右折。右側通行であるアメリカでは、車は、進行方向の信号が赤でも、安全が確認できれば交差点内に入り右折することが認められています。
 乗車した自動運転タクシーは、歩行者や車がいないのを確かめて、赤信号で右折しました。そこまで精緻にプログラムされていることに感心しました。
 レストランの前まで来ると、きちんと道路の端に寄って停車。料金は乗る前に支払い済みなので、そのままドアを開け、下車しました。
 10分に満たないぐらいの乗車時間でしたが、狐につままれたような体験でした。

米中が開発競争、日本は出遅れ

 レストランからの帰りは普通の有人タクシーに乗りました。
 運転手に自動運転タクシーに乗った話をしたら、「一世代前の無人タクシーはトラブルが絶えなかったが、今の世代の無人タクシーに関しては、トラブルは聞いたことがない」と言っていました。
 自動運転車はアメリカや中国などが開発にしのぎを削っています。
 乗車したタクシーはIT大手グーグルのグループ会社ウェイモが開発したもの。
 電気自動車大手のテスラは中国のIT大手バイドゥと自動運転車の開発で、近く提携するとみられています。中国でも自動運転車はすでに実用化されています。
 日本の自動車大手も自動運転車の商業化に向けて動いていますが、米中に大きく後れをとっています。

クレジットカードで地下鉄

 アメリカに出張する3日前まで、1週間ほどイギリスにいました。
 行く前に、少しは現金を持っていったほうがいいだろうと思い、羽田空港で2万円ほどポンドに両替しました。
 しかし、滞在中、現金を使う機会は、ホテルの部屋を掃除するメイドのためにチップを置く以外、まったくありませんでした。すべて、日本からのクレジットカードで事足りたからです。
 ロンドン市内の地下鉄やバスは、乗車時に専用の読み取り機にクレジットカードをサッとかざすだけのいわゆるタッチ決済。
 最初は、本当にクレジットカードで乗れるのかと恐る恐るかざしましたが、すぐにゲートが開いてスーッと通れたので、びっくり。
 一緒に東京から行った他の日本人もみんな驚いていました。
 それに引き換え、昔から「東京の地下鉄は便利で外国人旅行者も驚き!」などとマスコミがよく自慢げに報じてきましたが、多くの外国人が日本に押し寄せている今、地下鉄やJRの券売機の前で戸惑う様子の外国人の姿をよく見かけます。
 日本でも、最近ようやく九州の福岡市地下鉄や西日本鉄道などでクレジットカードによるタッチ決済が始まりましたが、本格普及はまだだいぶ先のようです。
 イギリスでは乗り物だけでなく、お店やレストランも当然のようにキャッシュレス。
 ホテルの近くの歩道で毎朝営業している屋台のようなパン店があり、そこでパンを買ったら、クレジットカードのタッチ決済で済ませることができました。

アメリカではマイボトルが普及

マイボトルに水を給水するための給水所

 話をアメリカに戻しますが、滞在中、気付いたことの中で特に印象に残っているのは、ペットボトルをほとんど見かけなかったことです。みんなステンレス製などのマイボトルを持ち歩いていました。
 大きな会議でも、テーブルの上を見ると、参加者のマイボトルが並んでいて、ペットボトルは見かけません。
 アメリカでは今、環境問題への意識が非常に高まり、使い捨てプラスチックを追放する動きも広がっています。まさにそれを実感しました。
 日本でも最近は「SDGs(持続可能な開発目標)」の文字が企業広告に氾濫し、テレビも盛んに取り上げていますが、それらが空虚に響いてきます。
 帰りのサンフランシスコ空港では、空港内に、マイボトルに水を補給するための給水所(上写真)があり、多くの搭乗客が利用していました。マイボトルを持っていない私は、残念ながら利用できませんでした。 (猪瀬)