専門分野も知らない専門家
食品標準成分表の最後に「調理済み流通食品類」という項目があります。
1982年に新設され、食品数が増えて現在は50食品になり、粉末スープとフライ用冷凍食品を除くと、そのまま食べることができる状態の栄養量が載っています。
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の値を見ると、驚くほど少ない値でした。
1日の食事量を1kgと仮定すると、100g中の「調理済み流通食品」の値を10倍にして、それが推奨量を上回っていれば、不足のリスクがない食品になります。
4ミネラルを調べると、1つでも推奨量を上回る食品は12しかありません。
不足したミネラルを補給するには、推奨量の2倍以上入った食品が必要ですが、そんな調理済み流通食品は「インゲンのごま和え」と「ヒジキの炒め煮」だけ。
調理済み流通食品をよく食べ、この2つを食べない人はミネラル不足になります。
食品成分表でも不足がわかるのに
私は2010年から市販食品の実測を重ねて4ミネラルが大不足になっていることを実証しました。
しかし、実測しなくても、食品成分表を用いている人なら、大不足になることがわかるのです。
食品成分表の解説でも、「調理済み流通食品」は消費量が増えていると、重要性が指摘されています。それなのに、ミネラル不足になることに、なぜ気づかないのか?
ミネラルの専門家が、食品成分表に出ている市販食品の実態をまったく知らないのはなぜか?
ミネラル不足で、ミネラル専門家の頭が悪くなっているのか?
栄養士はミネラルを軽視する傾向があるが、ミネラルが大不足の数値が出ても、気にしないのか?
根拠の数値を示そうと努力してきた私としては、不思議なことばかりです。
専門家は専門分野で間違っても平気?
日本中の栄養専門家が「ミネラル不足はないか、あっても少ない」と言う大きな根拠は、「日本人の食事摂取基準」に「大不足」と書いていないからです。
「日本人の食事摂取基準」は5年に1度改訂され、今は2025年版を策定中です。
昨年8月から審議が始まり、3月6日に開かれた第5回策定検討会の資料を見ると、ミネラル不足の見解は出て来ません。
『脳にも悪い!違反食品』が出版されたのは昨年10月。何度も大きな新聞広告が出て、元国立健康・栄養研究所理事長の渡辺昌先生の「これだけ証拠を示されたら、食品業界は改善するしかない」というコメントが大きく掲載されたのに、検討会の専門家は誰も読んでいないのです。
この本を読んでいない専門家は、本を読んだ素人以下の知識です。
だから、食事から一番抜かれているマグネシウムについて「通常の生活において、マグネシウム欠乏と断定できるような欠乏症が見られることはまれである」と、不足した実態に気づいていません。
カリウムも、「健康な人において、下痢、多量の発汗、利尿剤の服用の場合以外は、カリウム欠乏を起こすことはまずない」と書いていますが、これも大間違いです。
食品成分表で、ゆでた人参に130㎎含まれているカリウムが、「水煮人参」には2㎎しか含まれていませんでした。そんな水煮食品が、スーパーでは広い売り場で売られています。そこでよく買う人は、ひどいカリウム欠乏症になっている可能性が高いのです。
資料は、事実どおりに改訂が必要です。