日本人の覚悟を試す事件続出
9月18日早朝、中国海軍の空母「遼寧」を含む艦艇6隻が、沖縄県沖の接続水域を航行しました。
それから数時間後、広東省深圳市で日本人小学生が命を奪われる事件が発生。
その後、中国で「沖縄独立」を促す動画が拡散されていたことを日経新聞が明らかにしました。
3つの事件はまったく異なるように見えますが、中国共産党の動きを遡って考えると、「根っこ」は1つです。
中国共産党は1999年に、建国100周年となる2049年までの「国家100年目標」を定め、領土の保全(復活)、経済社会の核心的利益、国家の安全を目指すことを国家の悲願としました。その戦略の途上で3つの事件が起きたのです。
3つの事件の意味
中国の艦隊が沖縄の接続水域を航行した理由を、多くの日本人が勘違いしています。
単なる「いやがらせ」や「示威」を目的にした単純な行為ではありません。
これは、中国が約40年かけて南シナ海に浮かぶ粟粒のような小さな島や岩礁を奪い取った「侵略行為」を、沖縄でも実行し始めたと理解すべきです。
江戸時代の百姓が、隣りの田を爪で掻きとるようにして奪い、拡げたのと同じやり方です。一つ一つは非常に小さな侵略ですが、25年先までを考えると大きな出来事につながっているのです。
石破茂新総理は自民党総裁選挙の真っただ中でしたが、重大事件が勃発したにも関わらず、「遺憾砲」を発しただけでした。
日本の政治家が中国の暴挙に気づかず、目を背ける中、習近平政府は弱体化する中国を強い国家に見せようと、台湾統一に向けて着々と戦略を進めています。
台湾世論の分断工作をし、領空・領海を侵犯して、台湾を脅すことが日常の行動になっています。
その延長戦上で起こったのが、長崎県沖で中国軍の「情報収集機」が領空を侵犯した事件です。軍事的には、空母が接続水域を航行したことより、はるかに深刻で、重大な事件なのです。
台湾有事で勝敗の鍵となるのが空軍力。
中国軍は日・米・台の空軍機を打ち破るため、日米台の空軍機レーダー情報を手に入れる必要があり、そのために“あえて”領空侵犯し、レーダーを浴びてレーダー情報の獲得を狙ったのです。
中国の狙いは「台湾有事」だけではありません。日本の世論を分断し、沖縄を中国領とする作戦を静かに進めています。
それが、日経新聞が何度も報道している「琉球は中国に属し、日本に属していない(琉球属干 琉球群島不属干日本!)」と書いた動画で、2023年からSNSで拡散しています。
検閲に厳しい中国政府は、「他国を我が領土」と身勝手に言い張っている動画を消去していません。
それは、「国家100年目標」で領土保全をうたっている一方で、習近平主席が23年に、琉球王国時代の中国と沖縄の結び付きに言及しているから、と理解されています。
これを知ると、中国が爪で田をひっかくようにして領土を拡げてきたズル賢い魂胆で中国海軍が領海侵犯し、空軍が領空侵犯したことが見えてきます。
「 仇日教育」の影響
領海侵犯事件の数時間後に起ったのが深圳市で小学生が命を奪われた悲しく辛い出来事です。
このような事件は、今後、在中ビジネスマンに拡大していくと考えられます。だから、大事件なのです。
ところが、中国当局は「偶発的な事件」と言い張り、批判が中国政府に向うことを警戒し、謝罪すらしていません。
事件の起きた9月18日は満州事件の発端となった「柳条湖事件」が勃発した日で、中国が「4大国恥日」としている「反日記念日」です。だから、中国政府は国内事情で事件が起こったとは口が裂けても言えません。
犯人は44歳の男で、江沢民元主席の愛国教育という名の「日本を恨む(仇日)教育」が徹底して行われた時代に育った人物です。
この男が、中国発展の象徴であった深圳で仕事に就いたときには夢と希望をもっていたと思いますが、半端でない中国の不況は、彼を負け組にしたのです。
彼の犯行動機の裏に、「仇日」があり、「愛国無罪」という心があったと想像するのが自然です。
6月28日には江蘇省蘇州市で、40代の男が日本人のスクールバスを狙い、バスに同乗していたスタッフの中国人女性を殺傷した事件が起きています。
これらの痛ましい事件は、40代の男が起こしているので、愛国教育と関係があったと考えるべきです。
日本人駐在員の命が危険にさらされる
これからは中国経済の弱体化で、愛国教育で育った中高年の負け組が “どっと”はみ出してきます。
中国進出で潤ってきた日系企業も不況の影響で、これからは撤退、縮小、合理化、人員削減が避けられなくなります。
日系企業から掃き出された中国人のビジネスマンが、不平、不満を抱いて、愛国を大義名分に日本人に対して事件を起こすことは十分に考えられるのです。
中国政府だけでなく、中国でのビジネスも怖くなっているのです。