教えて!寺澤先生

マイコプラズマ肺炎が流行し、百日咳も流行しそう
咳止めに漢方薬を

咳が出るとき、咳止め薬を飲むと、咳が長引くこともあります。漢方薬で咳を止めることも選択肢に入れてください。
写真はイメージです

咳症状の感染症が流行

 マイコプラズマ肺炎が10年ぶりに流行し、東京都、福井県、岐阜県、茨城県などで多発しています。
 咳が一日中出て、鼻水は多くなく、中耳炎を合併しやすく、発疹がよく出るのが特徴です。
 咳が出始めると、家庭で咳止め薬を飲む人がたくさんいます。
 でも、マイコプラズマ肺炎だったら、咳止め薬は無効です。
 病院での診断は、PCR検査が有効です。しかし、検査できる施設は限られています。
 咽頭分泌液からの菌検出には1週間かかり、その間は、病名が正確にわからないまま、医師は対応します。
 治療には抗生物質が用いられますが、ペニシリン系、セフェム系の抗生物質は無効なので、診断されるまで、無効な抗生物質が使われていることがよくあります。
 マイコプラズマは、肺炎があるのに比較的元気で、「歩く肺炎」といわれます。
 感染力は強くなく、家族や、保育園・小学校の同じクラスで感染が広がります。
 小児、若者に多いのですが、高齢者が感染すると重症化して、呼吸困難を訴え、亡くなることもあります。毎年1500人以上が死亡
しています。

百日咳が世界で流行

 欧米では百日咳が猛威を振っています。
 フランスでは今年13万人が感染し、25人が死亡しています。
 アメリカでも感染者が増えており、今年の世界全体の感染者数は、2012年以来の最多となる見込みです。
 百日咳は、新生児や乳児が感染すると死亡することもある怖い感染症で、16世紀にフランスのパリで最初の流行が確認され、世界各地に広がりました。
 その後、有効なワクチンが開発され、患者数は徐々に減っていきました。
 ところが、百日咳ワクチンによるとされる脳症が問題となり、1975年に百日咳の予防接種は一時中止されるなど、混乱が続きました。
 1981年に、新タイプの三種混合ワクチンが導入されると、接種率は再び向上し、患者数、死者数が再び大きく減少しました。
 それが今になって再び増え始めている原因の一つは、様々な理由でワクチンを忌避する人が増えているからです。
 日本では今のところ多発していませんが、首都圏で百日咳の報告が増えているので、流行する可能性があります。

長引く激しい咳が特徴

 百日咳は長引く激しい咳が特徴です。
 感染すると7~10日程度の潜伏期を経て、普通の風邪のような症状が起き、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります。
 短い咳が連続的に出た後、笛の音のようなヒューという音が出ます。これが繰り返し起き、しばしば嘔吐を伴います。
 生後3ヵ月未満の乳児がかかると重症化しやすく、命に関わることもあります。
 感染力が非常に強く、ワクチンを接種していなかったり、接種しても時間がたって免疫力が落ちていたりすると、感染する確率が高まります。
 百日咳は、原因菌に対応した抗生物質を服用すれば、翌日から呼吸困難が改善する例があるほど効果があります。
 胃食道逆流症が起こっている場合には、胃酸を抑える薬も服用します。

咳止め薬は効かない

 マイコプラズマ肺炎、百日咳、そしてRSウイルス感染症も、ひどい咳が出るのに、咳止め薬が効きません。
 一般にみられる「かぜ症候群」の咳にも、咳止め薬は効きません。
 咳は、気道の分泌物を出すための唯一といっていい反射症状ですから、自分で痰を出せるときは、咳止め薬を服用しない方がいいのです。
 痰を出しやすくする薬は3種あります。でも痰を柔らかくするだけでは、かえって咳が悪化する可能性もあります。
 最も多用されるカルボシステインは4歳以下で呼吸困難などの副作用があります。
 咳が長引くので、咳止め薬をやめてみると改善する例をしばしば経験します。
 咳止め薬が効かない病気が流行っている時期は、飲まないのが賢明です。

咳には漢方薬が有効

 マイコプラズマ肺炎、百日咳などの感染症でできた気道の炎症や、過敏な反応を鎮める治療をするには漢方薬が有効です。
 咳が長引いているけれど、全身状態が良いときは、特に有効です。
 咳止め効果が高いのが「麦門冬湯」です。
 ただし、幼児、肥満体、痰が多い、熱がある、下痢をしている場合は、使用してはいけません。
 全身倦怠感が続いて、痰が出るときは 「竹筎温胆湯ちくじょうんたんとう」が有効です。
 夜より日中に咳が多いときは「半夏厚朴湯」も併用してください。
 神経が興奮しているときは、「柴朴湯さいぼくとう」や「神秘湯」を併用すると、落ち着ける作用がある柴胡という成分が効果を発揮します。
 これらの漢方薬は、長期服用できます。

参考

マイコプラズマ肺炎の感染者数の推移・全国比較 最新ニュース - NHK
...