ネオニコ系農薬を製造販売する住友化学が会長を務める経団連の会員企業から政治献金を受けている与党は、ネオニコ系農薬の規制強化をする気は毛頭ありません。
しかし、本誌などがネオニコ系農薬の問題をしつこく追及してきたお陰で、ネオニコ系農薬に対する世間の目は厳しくなり、国内出荷量はここ10年、ほぼ横ばいです。
そこで農薬業界はネオニコ系農薬に代わる農薬を売り込み始めました。
ネオニコ系ではなくても、生物の神経を狂わす神経毒性、浸透移行性で作物全体を毒にして虫を殺し、洗っても落ちないのが特徴であることに変わりはありません。
なので、これらの農薬は「隠れネオニコ」と呼ばれています。
スルホキサフロル、EUは規制強化
隠れネオニコで、最も気をつけるのは、スルホキサフロル。『トランスフォームフロアブル』などの商品名で売られています。
日本では2017年に農薬登録が認可。
開発元のコルテバ社は、「安全性は、様々な試験によって確認されています」と技術資料の中で説明しています。
しかし、欧州連合(EU)は2022年、生態系への影響が大きいとして屋外での使用を禁止しました。2015年の認可からわずか7年後のことです。
アメリカでも、昨年3月にカリフォルニアやニューヨークなど13の州の司法長官が米環境保護庁(EPA)に書簡を送り、スルホキサフロルの使用を厳しく制限する施策の導入を求めました。
日本は2022年、厚生労働省が60品目以上の農産物でスルホキサフロルの残留基準を緩和。イチゴは0.5ppmから8倍の4ppmに、ホウレンソウは6ppmから3.3倍の20ppmになりました。
スルホキサフロルと並んで出荷量が増えているのが、トリフルメゾピリム。商品名は『ルミスパンスFS』など。
環境省の資料には「作用機構は昆虫の中枢神経系のニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、神経伝達を阻害することにより死に至らしめる」とあるので、ネオニコ系とまったく同じです。
今のところ海外での規制強化の動きはないようです。
農薬に表示義務はないので、野菜や果物、コメにどんな農薬が使われているか、消費者は知る由がありません。
有機を選ぶのがベストですが、そうでない場合は、店員に、ネオニコや隠れネオニコが使用されていないかしつこく質問しましましょう。それが、農薬の使用量を減らすことにつながります。(猪瀬)(小若)