2022年4月に全面施行
スーパーなどで売られているパンや麺の原材料欄に「○○(国内製造)」という表示を数年前からよく見るようになりました。
食品の表示ルールを定めた「食品表示基準」が2017年9月に改正・施行されたのに伴って導入された表示で、2022年4月に全面施行されています。
食品表示基準は原則、国内で製造されるすべての加工食品に対し、主原料の原産地を表示するよう義務付けています。
ハムにアメリカ産の豚ロース肉を使っているなら、原材料欄には「豚ロース肉(アメリカ産)」と表示し、国産の生乳で作ったヨーグルトなら、「生乳(国産)」と書かなければなりません。
消費者の3人に1人が誤解
しかし、例外がたくさんあります。
カップめん、うどん、そば、そうめんの麺
が、アメリカで栽培され、日本に輸入された小麦から作られていたなら、表示基準の大原則に従えば「小麦(アメリカ産)」と表示されるはず。しかし、実際は「小麦粉(国内製造)」と表示されています。
製品の原材料が農産品ではなく、農産品を加工した加工原材料なら、その製造地を表示するだけでよいというルールになっているので、小麦でなく、小麦粉を原材料に用いると「小麦粉(国内製造)」でいいのです。
これが、問題になっているのは、消費者が騙されているから。
消費者庁が2016年3月に行った消費者調査で、産地情報を入手する手段を消費者に聞いたところ(複数回答)、93.6%が「食品(包装容器)に表示されている表示を確認する」と回答しました。
「○○(国内製造)」は、容器に生産地の情報が載っておらず、加工地が「国内製造」と表示されているので、消費者は産地を知ることができず、国内で生産されたと思う人がいることになります。
この表示が普通に使われるようになった昨年秋、消費者団体が東京の原宿と阿佐ヶ谷で街頭調査をしたら、回答者の約3割が「国内製造」の意味を誤解していました。やはり、多くの人がダマされていたのです。
食料自給率にも影響
農林水産省が2017年度に実施した輸入小麦に対する残留農薬検査では、アメリカ産とカナダ産のすべてから発ガン性が疑われる除草剤のグリホサートが検出されました。
農民連食品分析センターが2019年に行った食パンの検査でも、小麦の原産地が不明なブランド全てからグリホサートが検出され、「国産小麦使用」のパンからは検出されませんでした。
日本は諸外国に比べてネオニコチノイド系農薬の基準が緩いので、国産の方が外国産に比べて安全、と簡単には言えません。
でも、グリホサートに不安を抱く消費者が、輸入小麦の8割を占めるアメリカ産とカナダ産の小麦を用いた製品を避けて、国産小麦を使用した製品を買うようになると、極めて低い日本の食料自給率が、わずかですが改善します。
それなのに、食料自給率をさらに引き下げかねない「国内製造」という例外表示がなぜ設けられたのでしょうか。
業界の圧力に屈する消費者庁
消費者庁の背後に食品業界がいます。
食品表示基準の改正が議論されたとき、製粉業界は小麦粉を例外扱いするよう強硬に主張しました。製粉協会は「小麦粉への原料原産地表示が適用となった場合、我が国の豊かな食文化が損なわれ、消費者に不利益を与えかねない」とまで主張したのです。
本音は、輸入原料とわかると、売り上げが下がりそうだと思っての主張です。
産業界が政治力、つまりお金を使って自分たちに都合のよい仕組みを作り上げていくのが日本で、原料原産地表示に関してもそれがいかんなく発揮されたのです。
6月4日、衆議院・消費者問題に関する特別委員会で立憲民主党の山田勝彦議員が、「『国産小麦』と表示できるようになれば消費者は積極的に国産小麦が原料のパンや麺を選択するようになり、間違いなく我が国の食料自給率が向上していく」と、食品安全を担当する自見はなこ内閣府特命担当大臣に表示ルールの見直しを迫りました。
自民党の大臣は明確な回答を避けました。
醤油や食用油も
「国内製造」表示を原則とする加工原材料には、醤油や食用油もあります。
醤油も、原料大豆がアメリカ産やブラジル産の場合は、遺伝子組み換え大豆の可能性が十分にあり、セットで使われる除草剤のグリホサートが残留している可能性も高くなります。
油類も、食用調合油、ラー油、マヨネーズ、半固体状ドレッシングなどの原材料表示が「○○油「国内製造」」となっています。
食用油は国産原料がほとんどありません。原料生産国で異常気象が起きれば、油が高騰し、翌年も異常気象が起きれば、商品が消えます。「国内製造」表示をやめて、原料の国内生産を高めるべきです。 (猪瀬、小若)