生まれて初めて熱中症を体験
私事ですが、先日、熱中症にかかりました。記憶する限り、人生初の熱中症です。
土曜日の午前中、炎天下で2時間ほど草刈りをしていました。その後、午後に外出先から帰宅したところ、急に、めまい、吐き気、頭痛、倦怠感に襲われました。
熱中症を疑い、水分を摂ろうとしましたが、吐き気のために摂れません。
翌日曜日に塩をたっぷりとまぶしたおにぎりを食べるまでは、食事もまったく摂れませんでした。
日本救急医学会の最新の診療手引きである『熱中症診療ガイドライン2015』は、熱中症を症状の度合いでⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と、三段階に分けていますが、私のケースは症状から判断してⅡ度でした。
Ⅱ度は、症状として「頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下」が見られ、「医療機関での診察が必要」なレベルです。
医療機関での処置は、水分を補給しながら、しばらく安静にします。同時に、体温をモニターします。水が飲めないような状態なら、点滴で水分とナトリウムを補給します。
幸い私は自分が医者なので、医療機関には行かず、自分で処置しました。
参考までに、三段階の中でも最も軽いⅠ度は、めまい、たちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返りなどの症状が出ますが、意識は正常です。
応急処置と見守りが必要ですが、通常はその場で、涼しいところで安静、体を冷やす、水分とナトリウムを補給するなどの処置を施します。
最も重いⅢ度は、入院治療が必要です。意識障害、けいれん、四肢の動きが悪いなどの症状が一つでも見られれば、集中治療が必要になります。多くは、肝臓や腎臓にも障害が出ます。
私も、一歩間違えれば、大事になるところでした。
高齢者、自宅が最も多い
熱中症は年齢にかかわらず、誰でもなるリスクがありますが、とは言え、やはり高齢になるほどリスクは高まります。
消防庁がまとめた2023年5~9月の熱中症による救急搬送人員の累計は9万1467人。前年同期に比べて約29%増えました。年によって上下動はあるものの、長期的に見ても増加傾向にあります。
9万1467人のうち、65歳以上は5万173人で54.9%を占めています。
発生場所で見ると、最も多いのは住居(自宅)が39.9%。屋外での作業中や外出時を上回っており、これらのことから、自宅にいる高齢者が最も熱中症のリスクが高いことがわかります。
月別では7月、8月が最も多いので、やはりこれからの季節が一番注意しなければなりません。
暑いだけでは起きない
熱中症は、気温の高い環境に長時間いたり、高温の中で筋肉運動をしたりすることによって、体温が上昇し、高体温と脱水によって起こります。家の中でも、エアコンをかけずに長時間いれば、熱中症にかかりやすくなるのです。
しかし、ただ単に暑いだけでは熱中症は発症しません。 例えば熱帯モンスーン気候に属する東南アジアのタイは、人口約7千万人と日本の6割ほどですが、熱中症患者は年間約3千人で日本の30分の1に過ぎません。
これほど差が付く要因の一つは、「暑熱順化」です。
暑熱順化とは、体が暑さに適応し、発汗によって体温を下げる機能を指します。要は、もともと暑いので、人々が慣れっこになっているということです。
もう一つの要因は、暑い時間帯に屋内外で仕事をしない習慣です。暑さを避ける社会の慣習が熱中症を予防しているのです。
最近の気温の上昇はやむを得ない要因かもしれませんが、危ない時間帯には無理して働かない、活動しないという習慣を社会全体で築いていかないと、熱中症は今後も増え続けていく可能性があります。
塩分の控えすぎに注意
暑いところに長時間滞在しないという以外に、個人としてできる熱中症対策は、こまめに水分補給することです。
この対策は特に高齢者には重要です。高齢になるほど、体内の水分量が減少するからです。
高齢になると腎臓の尿を濃縮する機能が低下して、濃い尿を出せなくなります。すると、尿量が増えます。水分を補給するとさらに尿量が増えるため、高齢者は水分摂取を減らそうとしがちです。
水分摂取を減らせば、脱水症状のリスクは高まります。
また、高齢になると若い頃より汗をかきやすくなります。汗をかくと、汗と一緒に水分や塩分も排出されます。汗をたくさんかいた後に、顔に塩が浮き出ているという経験をしたことのある人は多いはずです。汗をなめるとしょっぱい味がします。
これらのことからも、汗と一緒に塩分が失われていることがわかります。 水分不足と同様、塩分不足は熱中症のリスクを高めます。だから、運動した後に飲むスポーツ飲料にはナトリウムが入っているのです。
高齢者は血圧を気にして塩分を控えがちですが、控えすぎると熱中症のリスクが高まるので、バランスが重要です。