教えて!寺澤先生

のどが痛いときは検査を

のどの痛みはインフルエンザや新型コロナのせいだけではありません。他にも怖い病気の可能性があるので、陰性になったからといって油断してはいけません。

インフル、新型コロナは高止まり

 最近はほとんどニュースになりませんが、インフルエンザや新型コロナウイルスの感染者数は高止まりしていて、依然、警報レベルにあります。
 インフルエンザも新型コロナも、感染すると、発熱や鼻水、咳、のどの痛み、頭痛、寒気、関節痛、腹痛など様々な症状が一気に出ます。ただ、これらの症状が出ても、病院で検査すると、陰性の場合があります。陰性と診断されると、思わずホッとしてしまいがちですが、油断は禁物です。
 インフルエンザの流行が終わりに近づくと、症状だけで判断するとインフルエンザと間違ってしまいそうな紛らわしい感染症が増えてきます。例えば、のどが痛く、熱が出る感染症は、インフルエンザ、新型コロナ以外に、溶連菌感染症、アデノウイルス感染症などがあります。

溶連菌感染症

 溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌の感染症です。
 溶連菌感染症は子どもがかかる病気と思われがちですが、大人の細菌性咽頭炎でも、半数から溶連菌が検出されると言われています。症状は、急な発熱とのどの痛み、のどに血糊が付いたような真っ赤な所見が特徴的です。
 のどの分泌液を採取して行う迅速診断で、約5分で診断できます。  
 首都圏では昨年後半から溶連菌感染症が流行しました。そのためか、一時溶連菌の迅速診断キットが品切れになり、検査ができないという事態が起きました。キットがなくても、咽頭の細菌培養検査で診断できますが、培養には2~3日必要です。現在は、迅速診断キットの品不足は解消しているので、診断が遅れる心配はありません。
 幼児は、溶連菌感染症にかかると、嘔吐する場合があります。小学生ぐらいの子どもの場合は、全身に痒い発疹が出ることもあります。大人はこうした症状は出ず、のどの痛みと発熱だけなので、溶連菌感染症かどうか判断がつきにくいのです。
 治療はペニシリン系、セフェム系抗生物質がよく効きます。一度の感染では完璧な免疫はできないので、何度も感染する場合があります。かつては、感染後にリウマチ熱や腎炎が起こることがあったため、溶連菌の感染がわかると4週間後に尿検査をしていました。しかし腎炎になる頻度が非常に少ないことがわかったため、現在は不要とされています。

アデノウイルス感染症

 アデノウイルス感染症も各地で流行しています。
 溶連菌感染症と同様、子どもの感染症と思われがちですが、子どもから親や祖父母が感染することもあります。私も数年前に孫から感染し、1週間も苦しみました。院内感染が猛威を振るうこともある感染力が強いウイルスです。
 アデノウイルスが引き起こす代表的な病気は、プール熱(咽頭結膜熱)です。
 高熱が出て、のどが痛くて、目が充血して真っ赤になり、強い倦怠感に襲われます。代表的な夏風邪でしたが、昨年からずっと冬の間も流行が続いています。
 発熱して受診したらインフルエンザも新型コロナも陰性と言われたのに、3日、4日かっても解熱せず、改めて受診するとアデノウイルスに感染していたというケースがあります。アデノウイルスも迅速診断キットがあればすぐに診断可能ですが、キットを備えていない病院も多いので、受診前にキットの有無を確認しておくといいでしょう。
 治療に抗生物質は無効で、解熱剤や痛み止めの対症療法で回復を待ちます。熱が1週間続くこともありますが、時期が来るとストンと解熱します。

甲状腺炎

 感染症かどうかは不明ですが、大人で、のどの痛みで受診することが多いのが、亜急性甲状腺炎です。
 甲状腺の病気は若い女性に多いと言われますが、男性もまれではありません。年齢的には、10代後半から増え始め、30代が最も多く、60~70代まで発症します。
 亜急性甲状腺炎は、強いのどの痛みと倦怠感が特徴です甲状腺が腫れるため、のど以外に耳やあごの痛みを伴うこともあります。また、痛みが首全体に及び、触ることが出来ずに、甲状腺の触診や超音波エコー検査が十分にできない場合もあります。熱はあまり出ず、37度台の微熱が大半です。治療はまず、消炎鎮痛剤を試みますが、それが効かない場合、副腎皮質ホルモン剤が有効です。
 痛みは平均2ヵ月で消失します。1~2割が再発すると言われています。

痛みや熱が3日以上続いたら要注意

 そのほか、舌ガン、口腔・咽頭ガン、シェーグレン症候群なども、のどの痛みを伴うことがあります。シューグレン症候群は膠原病の一種で、唾液の量が減って口腔、鼻、目が乾燥します。のどの痛みや熱が3日以上続いたら、是非病院を受診して血液検査と細菌検査を受けてください。