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プロジェクト:マレーシアのゴミ集積場産土壌におけるダイオキシン類の汚染
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ダイオキシン類の毒性発現機序

ここから、ダイオキシン類の毒性影響評価について発表させていただきます。
ダイオキシン類による毒性影響の多くは、この経路を経て発現します。

すなわち、ダイオキシン類が細胞内に入ると、まずアリルハイドロカーボンレセプター(Ah-レセプター)に結合します。その後、この複合体が核内に入り、さまざまなDNAを制御し、その毒性を発現します。

すべてのダイオキシン類がこの経路を経て毒性を示すことから、これらの物質の毒性影響を評価するさいに、最も毒性の強いダイオキシン: 2378-TCDDの毒性値に換算する方法が用いられています。

toxic mechanism


TEFsとTEQs

この毒性値は、 2378-TCDD毒性当量換算値(TEQ)と呼ばれています。

このTEQは、こちらに示しました計算式を用いて、算出します。

TEF and TEQs


マレーシアのゴミ集積場産土壌中における ダイオキシン類のTEQ

こちらに、マレーシアのゴミ集積場産土壌から検出されたダイオキシン類のTEQを示しています。縦軸は試料採取地点と検体番号を、横軸はTEQをpg/g乾重当りで示しています。

最も高いTEQを示したのは、セランゴールのゴミ集積場土壌で、3,100 pg/g と510 pg/gでありました。これらの値は、日本の環境基準値や監視値を超えており、ゴミの燃焼によるダイオキシン類の発生があることを示唆しております。
このような高値は、ゴミの燃焼を止める必要性と、土壌洗浄の必要性を意味しています。

ケダのゴミ集積場の土壌中TEQは 7.8~48 pg/g 乾重当りで、 ペナンは10~16pg/gでした。

興味深いことに、クアラルンプールの管理型都市ゴミ集積場産土壌のTEQは最も低く、対照地であるレイクガーデンと同レベルの低い値でありました。

これらの結果は、ゴミ処理を管理することで、マレーシアのゴミ集積場におけるダイオキシン類の排出量を、削減できることを意味しております。このゴミ処理の管理とはすなわち、無秩序なゴミの焼却を止めるということです。

the TEQs found in soils


アジア途上国の都市ゴミ集積場におけるPCDD/DFsのフラックスの国際比較

ここからは、なぜ、PCBsやダイオキシン類の排出源・汚染源対策は先進諸国のみならず、地球規模で取り組まなければならないのか、説明したいと思います。

この図は、アジア途上国の都市ゴミ集積場におけるPCDD/DFsのフラックスを先進諸国の値と比較したものです。
この場合、このフラックスは、 PCDD/DFsがどの程度生成しているかを意味しており、値が大きくなるほど、生成量が多いことを示しております。

今までは、ダイオキシン類の生成は、その国の経済状態に左右されることから、先進国で多く発展途上国で少ないと考えられていました。

しかしながら、アジア途上国のゴミ集積場のフラックスは、先進諸国に比べきわめて大きく見積もられました。このことは、これらの地域でのPCDD/DFs生成量は、先進諸国より多いことを意味しております。

すなわち、地球規模でみた場合でも、発展途上国のゴミ集積場は、ダイオキシン類の主要な発生源として機能していることが考えられます。

このような熱帯・亜熱帯アジアの問題は、その特異な気象条件のため、地球規模での問題となります。

Estimated fluxes of PCDD/DFs to soils in dumping sites


POPsの地球規模での拡散

この図は、地球規模でのPOPsの拡散をモデル化したものです。

熱帯・亜熱帯アジアは高温多雨な気候のため、これらの環境中に放出されたPOPsは、すぐに大気中に気化したり、雨水によって流れ、地球規模で拡散します。そして、最終的な到達点である極域や外洋に蓄積されます。


鳥類におけるPCDFsとモノオルソコプラナPCBs蓄積濃度の生息域比較
ここに、汚染源がほとんど存在しないにも関わらず、外洋において高い残留レベルが報告されている例を示しています。

この図は、外洋と日本沿岸、日本内陸部に生息している鳥類のPCDFs とモノオルソコプラナ PCBsの蓄積濃度を示しています。陸棲種を緑で、沿岸種を青で、外洋に生息している種を赤で示しています。

もし、POPsが拡散せず、汚染源のみを汚染しているとしたら、最も高い濃度は陸棲種から検出され、次いで沿岸種で高くなります。そして、外洋種が最も低くなります。

しかしながら、このクロアシアホウドリとコアホウドリ、これらは外洋に生息しているのですが、陸に生息する種と同レベルの高いPCDFsとモノオルソコプラナPCBs蓄積値を示しました。
このような傾向は、PCBsや有機塩素系農薬など他のPOPsでも報告されております。
もちろん、このような現象には、各鳥種の生態も関与しているかもしれませんが、同時に、一部の外洋では、発生源に近い陸域と同レベルの汚染状態であることを示しています。

すなわち、地球規模での環境保全という立場から考えた場合、数カ国のみで行うダイオキシン類やPCBs、あるいはその他のPOPsの排出源・汚染源対策は、不十分であるということです。POPの汚染レベルを下げるには、世界規模での協力が必要です。

Comparison of concentrations of PCDFs and mono-ortho coplanar PCBs in muscles of albatrosses with those of avian species from Japan


まとめ

それでは、本研究をまとめたいと思います。

まず、分析に供したすべてのゴミ集積場産土壌からダイオキシン類が検出され、その汚染がマレーシアにも及んでいることが判明しました。

最も高濃度でダイオキシン類を残留していたのは、セランゴールのゴミ集積場産土壌からで、ゴミの燃焼によるダイオキシン類の生成が示唆された。

最後に管理型ゴミ集積場の土壌中ダイオキシン類濃度は、対照地と同レベルの低い値でありました。 このことは、ゴミ処理を管理することで、ダイオキシン類の発生を抑えることを意味してます。

PCBsやその関連物質、PCDDsやPCDFsは、環境残留性と高い生物蓄積性があるため、一度、環境中に放出されると、無害化されるのに数十年の年月を必要とします。
また、これらの化合物は発生源・汚染源周辺から、簡単に地球規模で拡散されます。

これらのことやその強い毒性を考えると、次世代により良い環境を残すために、更なる調査と排出源・汚染源対策を早急に行う必要があるでしょう。

ご清聴、ありがとうございました。


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