PCB(ポリ塩素化ビフェニール:Polychlorinated Biphenyl)という名前を聞いたことがありますか?
PCBは普通、透明でねばり気のある液体です。
一見、よくある油のように見えるこの化学物質は、電気が極めて流れにくいといった絶縁性があり、酸にもアルカリにも強い、化学的に安定しているという、とても便利な性質を持っています。かつては「夢の化学物質」と呼ばれ、感圧紙、蛍光灯の安定器、トランスやコンデンサーなどに広く使われました。
ところが、PCBは、私たちの体に害があることがわかってきたのです。皮膚や肝臓に障害を起こし、神経や免疫の機能をかく乱してしまうのです。
さらに、やっかいなことは、PCBは一度、体に取り込まれると、体内で分解されにくく、ずっと残ってしまうことです。草食動物にPCBがたまっていると、それを食べた肉食動物にPCBが取り込まれます。食物連鎖の上のほうに位置する生物、つまり、人や肉食動物ほどPCBは高濃度に蓄積する傾向があります。
そしてPCBは、母親から子どもにも受けつがれてしまいます。子どもは、化学物質に敏感な場合が多いので、その影響は、計り知れないものがあります。野生動物では、大量死などPCBによる被害が疑われる例が報告されています。取り返しのつかない事態がすでに始まっているのです。
また、PCBは気体となって、どこへでも飛んでいってしまいます。PCBを使ったことのない南極や北極にまで移動しています。環境中に出ると、世界中に広がり、なかなか分解されません。
私たちは便利なPCBによる恩恵を受けてきました。しかし、その不利益を大きく被るのは、製造・使用とは縁のない、これから産まれる世代です。この20世紀の負の遺産を、未来へ持ち越してはいけません。私たちの代で終止符を打つことは、世界共通の課題です。
このCDで、PCBについて、知識を深め、私たち市民に何ができるのか、一緒に考えてみましょう。
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