代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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将来、遺伝の被害が出続ける 安全基金の活動と考え方(83)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 非汚染地域に住み続ける人たちの子13人と、汚染地域から移住してきた人たちが結婚してできた子11人に分けて、足、頭、のどが痛いかを聞くと、差がありませんでした。
それは、理由を考えると、当然でした。
 このような条件の親と子に集まってもらうのは大変でしたが、学校で、2つのグループに分けて調査する意味はなかったので、 合計値を報告書(第3回ウクライナ調査報告書P14)の一覧表に載せました。
 遺伝の実験は、ショウジョウバエを万単位で用いて行うと、35年前に聞いていました。
同じものを食べ、同じ条件で生き、同じ遺伝子をもつ動物実験でも、万単位が必要なので、食べるものの種類や量が違い、 あちこち出歩く人の場合は、数百万人を調べても、科学的には批判が出ます。

 遺伝子が傷ついた影響が、どのように出るのかを、簡潔にご説明します。
遺伝子が傷ついても、ほとんど劣性です。だから、1人の傷では影響が出ません。
ヒトの遺伝子は23000ほどあります。
23000の遺伝子の同じ個所に傷がついている男女の子どもだけに影響が出るのです。
 10の遺伝子に傷がついている男女が結婚し、子どもができたとしましょう。
父と母の傷ついた遺伝子の割合はそれぞれ2300分の1。遺伝子の同じ個所に傷がついている確率は230分の1。この確率でしか、遺伝子の傷は表面化しないのです。

 230人を調べて、1人しか影響が現れないのですから、学校で24人を調べても、何もわからないわけです。 ところが、病院に行くと事情が違います。遺伝病の子は病院に集まっているからです。
 私がミスしたのは、病院で調べることを、学校で行ったこと。
ただし、孫の世代で、遺伝的な影響が桁違いに多く出ることは間違いありません。
 ウクライナ政府が集めている病気のデータを、チェルノブイリの子ども世代と、孫世代に分けて集計して比べれば、どんな被害が、どれくらい出ているかがわかります。
これから孫世代が増えていくので、ウクライナの政府機関でデータを管理している専門家に聞いて回れば、遺伝による被害の実態は、まもなくわかるようになります。

 放射能による遺伝の被害は、個人に限って子どもを見れば、リスクは事実上ゼロです。
しかし、日本人全体の遺伝子には傷が蓄積し、日本人が存続する長い間にわたって、多くの「被害者」が出続けます。
そのとき、遺伝病は被害が出たと認識できますが、頭が少し悪くなったとか、体が少し弱くなるような遺伝的劣化は、認識することすらできません。
だから、遺伝子に傷をつけないように政策をとるのが正しい対処法で、それができるのは国の政治家です。
 ところが、政治家はもちろん「霞ヶ関」も遺伝には無知で、子孫に対する犯罪を繰り返しています。
原発に批判的な政治家が、放射能汚染された農産物は、混ぜて薄めて食べるのがいいと主張するありさまです。

 せめて、私たちだけでも子孫に危害を加えないよう、できる限り放射能を避けられるように活動していきたいと思います。


2012年11月1日発行 No.283より

安全基金の活動と考え方(84)「歳をとるほど放射能で痛みが出やすい」

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