代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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プロvs素人 安全基金の活動と考え方(8)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一

 商品に問題があった場合、消費者は販売店か製造業者に話して問題を解消してもらうことになります。簡単に片付けばいいのですが、そうはいかないこともよくあります。

商品に欠陥があって被害者が出ているのに企業が改善しないケース、商品を捨てた後に環境をひどく汚染しているのに企業が改善しないケース、詐欺的な商品を意図的に企業が売り続けているケース…。
そういうことがわかると、消費者としては企業と向かい合わざるを得なくなります。
消費者がそのような状況に立たされるのはまれですが、企業の消費者窓口にはプロがいて、重要な問題にはベテランが対応します。実力に差があるので、話し合っているうちにうまく丸め込まれて、たいていはうやむやになっていくわけです。
時間がたつと、消費者はさらに不利になっていきます。気力をずっと維持させていくのは大変です。改善の交渉を進めるには、時間も費用もかかります。
さらに、自分も相手も転勤でどこかへ行ってしまうかもしれません。引越し後の忙しいときなどに交渉するのは大変です。企業の担当者が変わると、説明を最初からし直すことになります。

このように、プロvs素人、プロvsボランティア、というのが世の中の構図。消費者が不利な中で商品の問題点が語られ、少しだけ改善策が取られていくわけです。

 プロのいる消費者団体に問題を持ち込み、プロ対プロで改善を図っていくことは、社会的に意味あることといえます。しかし、持ち込まれたテーマを社会問題化していく能力を持つ余裕のある消費者団体は、私たちも含めてほとんどないのが実情です。
 市民運動や住民運動も、構図は同じで、永続的に人がいて、金もある行政や大企業のプロに対して、ボランティアで闘いを挑むわけです。
相手が時間を長引かせる戦略をとったら、たいていは市民・住民側が負けます。

「プロ対プロに」という話を聞いたのは、1990年ごろに横浜国立大学の加藤龍夫教授(当時)からで、まだ、安全基金はボランティア団体でした。この話もキッカケの一つになって、プロの団体に向けて変革を始めました。そして、加藤先生からたくさんのアイデアをいただきながら、1992年ごろから有給のスタッフを増やしていったのです。
現在では、スタッフ全員が有給に切り替わっています。

ところが2003年に内閣府から「NPO法の運用方針」が出て、経費上ボランティアが半分以上でないとNPO法人として認められなくなりました。つまり、プロの団体は非常に存続しづらい制度になったので、現在のNPO法には、市民側が常に負ける仕組みが隠されているわけです。
日本中の市民団体は、どんどんNPO法人になっています。でも、この動向は2003年から、社会の改善に有効でなくなったと私は考えています。

 次回は、「ネックレス消費者運動論」について書きます。


2006年8月1日発行 No.208より

安全基金の活動と考え方(9)「ネックレス市民運動論」

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