代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「口蹄疫を拡大させた獣医師」 安全基金の活動と考え方(54)

 2001年にイギリスで口蹄疫が大発生したときは、600万頭以上が処分され、2兆円を超える被害が出ました。 このとき、口蹄疫がまさに全土へ広がりつつあった3月に、私は渡英しました。 ほとんど取材に応じないといわれる全英農民組合(NFU)の、口蹄疫担当の食品科学部長に会えて、実情を聞いていたら、「処分した家畜の補償価格は、前日の市場の終値」と言われました。 低い市場価格で補償されても、生産者は立ち直れません。 「日本では、必ず通常の市場価格で補償され、さらに国が生産者を援助する」と私が言うと、部長の顔色が変わり、それからNFUは意見を変え、4日後に英政府の施策が変わったのです。 そんなことがあったので、今回の宮崎県の口蹄疫にも一言述べておきます。
 今、新聞では赤松広隆農相に非難が集中しています。しかし、彼に危機管理能力があれば、外遊などしていません。 ないから外国に出ていたわけで、この政治家を槍玉に挙げていても時間がムダです。 それより、本当の責任者のことを考えましょう。
 3月31日、農家から通報を受けた宮崎県家畜保健衛生所の獣医師が、4頭の水牛に発熱や下痢などの症状を確認し、「経過観察」にしました。 これが最初の、しかも最大の失敗です。4月20日、別の農家の牛に感染の疑いが出て、口蹄疫と確認され、そこから急速に広がっていきました。 4月22日に水牛のサンプルが検査され、23日に「6例目」として確認されました。 70q離れたえびの市でも発症していますが、この感染時期が初の発生から3週間の無防備期間だったら、宮崎以外にも口蹄疫が広まっている可能性があります。 昨年は台湾で、今年1月には韓国で口蹄疫が発生し、現在でも終息していません。 その台湾・韓国から、宮崎県は観光客を誘致しているので、県の担当部局や獣医師は、口蹄疫に神経質になっていなければならなかったのです。それが、この有り様。
 私のような素人でも、イギリスから帰国する前に靴を捨てました。ところが、警戒中の成田の消毒槽はカラカラでした。 もしかしたら、無警戒な獣医師たちが、車を消毒せずに農家を回り、口蹄疫を広めてしまったのではと、私は疑っています。
 5月14日、「宮崎県家畜改良事業団」でも感染の疑いが出て、種牛49頭を処分することになりました。 その前日、同事業団は、飼育している種雄牛6頭を、急きょ約60q離れた仮設牛舎に避難させています。 非難させた翌日、残った牛に感染の疑いが見つかったという都合のいい話は本当でしょうか。 イギリスでは、家畜を殺して処分していた兵士が次々とノイローゼになりました。 これは序の口。感染が全国に広まれば、流通が滞って日本経済はさらに低迷し、自殺者が続出することになるでしょう。
 そういうことにならないよう、獣医師と専門家の奮起を望みます。

食品と暮らしの安全 代表 小若順一
2010年6月1日発行 No.254より

安全基金の活動と考え方(55)「菅政権に期待する」


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