代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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署名運動をしない理由 安全基金の活動と考え方(3)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


「署名簿はそのまま倉庫に入れる」
中央省庁の役人から、こう聞いたことがあります。
省庁に申し入れして、署名簿を渡すと、多くはそのまま倉庫に入り、誰にも見られないまま焼却されているというのです。

こう聞いたこともあって、22年前に安全基金がスタートしてから今まで、署名運動をしたことはありません。 今では、保管するスペースがないとして、署名簿を戻されることもあるようです。
自治体の首長をリコールするときには、署名簿は法的な強制力があります。しかし、通常の署名運動には法的強制力がありません。ですから、どんなに署名が集まっても、行政を動かそうとする目的が達せられたケースはほとんどないのが実情です。

このように署名運動は、効果が少ないことを明らかにしないまま、行われています。
もちろん、私は署名運動の足を引っ張るつもりはないので、友人が署名簿を回してきたら、何でもすぐに署名します。知らない人からの募金付署名には署名しません。
私が署名運動をしない理由は、活動の目的を達するのに効率が悪すぎるからです。
安全基金を設立した当初はすべてボランティアで運営していたので余裕がなく、効率の悪いことはしたくありませんでした。今は、事務局メンバーがすべて有給になったので、やはり効率の悪いことはできません。

新しい問題を提起すると、たいていはすぐ壁にぶつかります。すると、かつては「署名運動をしたら」とアドバイスされたものです。しかし、もう今は言われなくなりました。
署名運動が有効なのは、生協や労働組合です。まじめな人や、関心を持っている人は、署名をするかどうかを考えたことがきっかけとなって、運動に加わってくれるケースもあります。こうなると、戦力が増します。 署名簿を持っていけば、活動していることを印象づけられますし、運がよければ組合員が増え、カンパも集まって運動資金がたまることすらあるのが署名運動です。
こうして、運動体は大きくなっていきますが、署名運動だけで目的が達せられることはまずありません。
活動の目的が、行政施策を市民のためになるよう変えることだとして、それがどんなときに起こるかを考えてみましょう。

役人たちが抵抗できない状態にまで時代が動くと、そこで施策は初めて変わるのです。
施策が変わったとき、流れをさかのぼっていくと、必ずどこかに人間が関与した起点があります。この起点に関与できる快感は大変大きいので、私たちはそれを狙って活動することがよくあります。
しかし、そんな起点を意図的に作り出せる能力を、人間は持っていません。ですから、私たちは時代に合わせるつもりでさまざまな調査を行い、そのどれでもいいから、時代が変わる起点になってほしいと願って、情報を発信しているわけです。
署名運動には、時代の変化に関与できる楽しみがないので、私たちの活動スタイルには合わないと考えています。

次回は「自然の原則に従って動く」について書きます。


2006年3月1日発行 No.203より

安全基金の活動と考え方(4)「自然の原則に従う」

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