代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「「継続性」の市民運動ジャーナリスト論」 安全基金の活動と考え方(13)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一

 新聞やテレビで気にかかるのは、ブームのときはどうでもいいことまで報道するのに、一般的には「継続性」がなく、問題点が残っていても報道しなくなることです。
1人の記者が、同じテーマで安全性の問題を記事にするのは1年に1回がせいぜいで、通常は2年に1回程度。社会にある問題点を、改善されない程度に報道するのがマスコミの実態です。
それに比べて、同じテーマを継続して追及する市民運動は、影響力が小さいとはいえ、大きな存在価値があります。

私たちと縁が深いのは、新聞の家庭欄ですが、ここでも同じテーマを継続して取り上げることはまれ。その主な理由は、読者が多様なので、いろんなテーマを取り上げざるをえないからだと思われます。
その点、市民運動や消費者運動は、特定テーマの追及からスタートしていることが多いので、継続して取り上げるのは当たり前という感覚です。
また、大企業から広告をもらうこともないので、自己抑制することなくテーマを追及できます。
広告への依存は、テレビや雑誌が特にひどい状況です。収入の大部分を広告費に依存しているので、大企業の商品の欠点は、よほどのことでなければ指摘できません。

例えば、掃除機の排気の汚さです。私たちが最初に取り上げたのは2004年4月号。それから2年半の間にマスコミが報道したのは、毎日新聞と産経新聞の各1回だけ。テレビと雑誌は1度も取り上げていません。
韓国に掃除機の情報を持ち込んだら、NHKに相当するKBSテレビが3つのニュースで、民放のMBCもニュースで報道し、新聞各社も大きく取り上げました。
そのため、家電メーカーはすぐ大幅に改善したのですが、そういう隣国の情報も、日本では一切報道されませんでした。
そこで私たちは、オキシジェンの購入者500人にアンケート調査を行い、ぜんそくでは55%、その他アレルギーでは45%の人が改善していることがわかりました。つまり、これらの人のアレルギー症状は、国産掃除機が起こしていたわけです。
ぜんそくで亡くなる人は年間3000人を超えているので、掃除機の排気を改善すれば、1000人を超える命が助かると考えられます。ところが、情報を流しても、マスコミは掃除機の排気問題を取り上げません。記者が自己抑制を利かせているのです。
専門家や警察が因果関係を認めていないと、テーマとして取り上げることを控える傾向がマスコミでは強くなっています。

かつては、しつこく取材して報道を続ける記者がいたのですが、そういう記者は非常に少なくなっています。
現代の市民運動はその穴を埋め、ジャーナリストとしての役割を一部担っています。
これからはインターネットを利用した新しいタイプの市民活動が隆盛に向かうのでしょうが、その場合も「継続性」が必要とされるでしょう。社会は、問題点を指摘して改善させる機能を必要としているからです。

 次回は「時代の流れにまかせて」です。


2007年1月1日発行 No.213より

安全基金の活動と考え方(14)「「時代の流れ」をつくる」

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