国際会議
コーデックス・第2回バイオテクノロジー応用食品特別部会
(幕張)速報-3月27日-
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本日のまとめ

08:00〜08:55 追跡可能性の作業部会
09:00〜11:30 議題5 安全性評価のガイドライン
11:30〜12:20 議題4(リスク分析の一般原則)の議論が終了していない部分
12:20〜14:00 昼食

14:00〜14:20 議題4の議論が終了していない部分
14:20〜15:19 議題6 追跡可能性に関する議論ペーパー
15:19〜15:21 議題7 一般認知(familiarity)に関する情報ペーパー
15:21〜15:40 議題8 分析方法
15:40〜16:05 休憩
16:05〜17:10 議題9 その他(次回の場所や日程など)
17:25〜18:00 アレルギーに関する作業部会の日程などの決定

■今日の話し合いの結論

1.提案されていた2つの文章、「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析に関する一般原則」と 「組み換えDNA技術応用植物に関する安全性評価ガイドライン」がステップ5に進められた。 ( コーデックス規格がつくられるまでの過程は8つのステップに分けられている)。ステップ5に進んだことは大きな前進ではあるが、追跡可能性など消費者にとって重要な概念についてはまだ合意に達していない。
2.微生物の安全性評価ガイドラインを作成することが合意され、7月の総会でこれが認められればアメリカが議長をつとめる作業部会で話合いがすすめられ、さらに第3回、3回の特別部会で話し合われることになる。
3.アレルギーに関する作業部会がカナダが議長になり設置された。9月にカナダ西海岸にて開催予定。

■「組み換えDNA技術応用植物に関する安全性評価ガイドライン」

昨日の午後に引き続き、「組み換えDNA技術応用植物に関する安全性評価ガイドライン」が話し合われた。コーデックスのガイドラインができるまでの過程は8つのステップに分けられているが、今回の会議はステップ4にあたる。今回提案されているテキストが合意に達すれば、ステップを進めることができる。時間切れで最後まで話し合いが行えなかったり、合意に達しなければ、ステップ3に戻されることになる。なんとしてもステップを進めたいとして、議長はかなり急いだペースで会議を進めた。その甲斐あって、ガイドラインはすべてのパラグラフが話し合われ、ステップ5に進められることになった。

重要な点は以下のとおり。

●組み換えの特徴 パラグラフ29で、植物に挿入された遺伝子について公表するべき情報は何か、がリストされている。その内の1つに、「遺伝子配列の情報」が挙げられているが、アメリカは、「人体の健康にリスクがある場合には」という言葉を加えたい、と提案した。配列の情報は、特許や企業秘密と密接しているため、アメリカは国益のため公表したくないようだった。しかしWHOが、専門家会議が配列の情報は必要だと結論づけたため、配列の情報が入っているのだ、と説明。また、日本も「我が国では、配列の情報を分析に使っている。配列の情報が提供されないと困る」と主張。アメリカの提案は通らなかった。

●アレルギーを引き起こす可能性に関する評価 パラグラフ38−44
これらのパラグラフには多くの提案がされたが、アレルギーに関してはWHO/FAOの専門委員会がレポートを出している。このレポートはごく最近出されたため、多くに国の代表がじっくり読みこなす時間がなかったと述べた。このレポートの内容を反映した内容にするために、次回以降、詳しく話し合われることになった。作業部会を設置することが提案され、カナダが議長を申し出た。 作業部会は9月にカナダ(おそらく西海岸)で行われる予定。

●抗生物質耐性マーカー遺伝子の使用に関して パラグラフ55-58
遺伝子組み換え作物をつくる際に、マーカーとして抗生物質耐性遺伝子が使用さ れている。しかし、これは、医療分野で使用されている抗生物質が効かなくなるという、将来的に人類の脅威となる可能性を含んでいる。そのため、一刻も早い使用の中止が求められる。現在、抗生物質耐性遺伝子以外のものをマーカーとして使う技術が発展してきており、抗生物質耐性遺伝子の使用は遺伝子組み換え食品の製造において、不可欠なものではない。IACFOは、この会議の前に、抗生物質耐性マーカー遺伝子の使用中止を求める意見書を提出した。

今日の会議では、まず提案されていたパラグラフ55がニュージーランドの提案によりさらに強い表現に変更された。 提案されていたもとの文章「将来的に、DNA組み換え植物の開発には、食品中に抗生物質耐性マーカー遺伝子が残らない代替的な技術が存在し、それが安全なものである場合、この代替技術を使用することが奨励される。」 一番最後の部分が「使用することが奨励される」から「使用すべきである」に変更。抗生物質耐性マーカーの使用はできるだけ早く中止されるべきなので、この変更は歓迎すべきものである。

パラグラフ58「もし抗生物質耐性マーカー遺伝子や遺伝子製品が人の健康にリスクを生じることが、データや情報の評価によって示された場合、これらの抗生物質耐性マーカー遺伝子や遺伝子製品は食物中に存在してはならない。一般的に、臨床的に重要な抗生物質に耐性を与えるような抗生物質耐性遺伝子は広く流通する食物中には存在してはならない。」

このパラグラフを予防原則の観点から強めるようにスウェーデン、ノルウェー、ナイジェリア、イタリア、ベルギー、タイ、IACFO、フランス、CI、グリーンピースなどが求めた。しかし、これにアメリカ、カナダ、オーストラリア、COMISA、ICGMAなどが反対。修正は「臨床的に重要な」という部分が「臨床的に使用されている」という小さなものにとどまった。しかし、意味は強まったので歓迎すべき修正である。 注目すべきは、この分野に詳しい吉倉議長が「抗生物質耐性に対する脅威は世界中で高まっている。日本でもバンコマイシン耐性のあるチキンがみつかるなど、問題は 深刻である。動物への抗生物質の使用なども含めて十分に考慮する必要がある。このセクションに関しては来年以降さらに議論を深める必要がある」と、いつもにも増して、深刻に、切実に懸念を表明したことである。IACFOとしても、大きな懸念事項であるだけに、来年以降、さらにこのテキストが改善していきたいと考えている。

■「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析に関する一般原則」

●26日に合意に達しなかった部分が話し合われた。追跡可能性(=traceability) 朝8時から9時まで行われた作業部会で主に2つの案が出された。ひとつはパラグラフ19に「リスク管理には追跡可能性がふくまれてもよい」という文章を残すというもの。こちらはヨーロッパ諸国、IACFOを含めた消費者団体が支持。もう一つはパラグラフ19に追跡可能性を明記することに合意したくなく、リスク 管理に関するセクション全体の注釈として「追跡可能性に関してはこの特別部会も含めいくつかのコーデックス会議(一般原則部会、食品輸出入検査認証制度部会など)で 話し合いが進められている」と記述するというもの。こちらはアメリカ、カナダなど、追跡可能性をこの部会でできるだけ取り上げたくない、他の部会で話し合われているからという理由で議論を遅らせたい、国々や産業界が支持。 議論は合意することなく、パラグラフ19は議論がまだ合意に達していないことを示す( )つきで(リスク管理には追跡システムがふくまれてもよい)とされることになった。 「組み換えDNA技術応用植物に関する安全性評価ガイドライン」は、ステップ5に進められることになった。

■議題6 追跡可能性のところで、ナイジェリアがとても良いコメントをしていた。「輸入国と輸出国には違いがある。追跡可能性がないことが、消費者の懸念を生み出していることを、輸出国は理解すべきだ。」

■第3回バイオテクノロジー応用食品特別部会は、2002年3月4日〜8日(幕張)の予定。また、9月にカナダで、アレルギーに関する作業部会(議長国はカナダ)が開かれる予定。
 

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