国際会議
コーデックス・第2回バイオテクノロジー応用食品特別部会
(幕張)速報-3月25日-
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本日のまとめ

10:00〜10:30 開会およびあいさつ
10:30〜11:00 議題1 議事の採択
11:00〜11:40 議題2 特別部会に関連する他のコーデックス会議の事項、 議題3 遺伝子組み換え食品の安全性と栄養面に関する他の国際会議での事項
11:40〜13:00 議題4 リスク分析の一般原則案
13:00〜14:30 昼食
14:30〜16:20 議題4 リスク分析の一般原則案
16:20〜16:35 休憩
16:35〜18:00 議題4 リスク分析の一般原則案
(19:00〜21:00 幕張プリンスホテルにて、レセプション)

■議題1「議事の採択」
普段ならば5分程度で終わる「議事の採択」に、30分もかかった。理由はスウェーデンの「議題6の追跡可能性traceabilityを、議題4のリスク分析や議題5の安全性評価を話し合う前に議論すべき」との提案、それからアメリカの「アレルギーに関する作業部会をこの会期中に設けてはどうか」との提案に関して、それぞれ議論が巻き起こったため。

「追跡可能性を最初に話し合うこと」に関しては、オランダ、イタリア、フランスなどヨーロッパ各国がサポート。しかしアメリカ、カナダ、日本などが反対。結局コンセンサスがとれず、議長は「時間が許せば、本日30分程度話し合う」とした。

「アレルギーに関する作業部会の設置」については、カナダ、イギリス、オーストラリアが賛成。一方、フランス、ノルウェー、イタリア、インドが反対。これもコンセンサスがとれず、議長は「アレルギーについての文章のところに来たら、その時決める」とした。アメリカなど、賛成した国は、本会議より小さく、透明性のない作業部会でアレルギーについて話し合うことにより、危険性はあまりない、と結論づけ、自分達に有利な方向へ持っていきたいようだ。反対した国はそれを阻止するため、「そんな作業部会を開くと思わなかったから、専門家をつれてきていない。この会期中に開催しても、十分な議論はできない」としている。

■議題4「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析に関する一般原則」
この文書は現在この特別部会で議論されている2つの文書のうちの1つ。(もう一方は 、「組み換えDNA技術応用植物に関する安全性評価ガイドライン」)リスク分析の3つの要素である、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションを中心に、一般的な原則が述べられている文書である。29パラグラフまであるこの文書で、1日目に話し合われたのは18パラグラフまで。大きな議論となったのは以下のとおり。

●パラグラフ6 従来の比較対象物(conventional counterpart)の定義: 現在行われている遺伝子操作食物の安全性評価では、「実質的同等」の概念が用いられている。実質的同等とは、「導入された遺伝子の特性がよくわかっていて、従来の比較対象物=conventional counterpartと同程度に無害であると考えられる場合は、組み換えられた食品の安全制は、もとの食品と同等に安全と考えられる」というものである。私たちIACFOを含め、多くのNGOは「実質的同等」の概念そのものに反対している。 遺伝子組み換えが行われた時点で、従来の比較対象物と組み換えられたものは、異なるものであり、実質的同等の概念を基礎にした安全性評価は不十分であると考えている。

しかし、コーデックスでは、実質的同等の概念は安全性評価の基礎となる欠かせない概念になってしまっている。そればかりか、これまで「従来の比較対象物」は、遺伝子組み換えをされていないものと考えられてきたが、将来的には遺伝子組み換えされているものも含まれてもいいのではないか、という拡大解釈がされはじめている。つまり、新しく開発された遺伝子組み換え作物を、何年か前に開発され市場化されている遺伝子組み換え作物と比べて、「ほぼ同等」とされれば、適切な安全性評価をすることなく「前の遺伝子組み替えと同じくらい安全」とされてしまうということだ。

提案されていたテキストは「「従来の比較対象物」とは、食品として安全に消費されている経験のある、関係するオーガニズム/バラエティである」。このテキストが拡大解釈がされないよう、IACFOを含め、環境・消費者NGO、ヨーロッパの国を中心に、「比較対象物はモダン バイオテクノロジーを使用したものでないものであること」という文章をいれることに努力した。これに反対する国がアメリカを始め多数あり、大きな議論となった。

従来の比較対象物には遺伝子組み換えされたものは含まれるべきでないと意見表明した国・団体は、 スウェーデン、イタリア、ノルウェー、インド、中国、韓国、CI、IACFO、EC、フランス。遺伝子組み換えされたものが含まれてもいいのでなはいかと意見表明した国・団体は、アメリカ、日本、カナダ、イギリス、IBF、COMISA、IUBS。

長い話し合い(約1時間)の後、 テキストは提案されていたとおり「従来の比較対象物とは、食品として安全に消費されている経験のある、関係するオーガニズム/バラエティである」のままで、脚注として「予見される将来においては、バイオテクノロジー応用食品は比較対象物としては使用されない」と書き添えられることになった。(日本子孫基金の解釈: この注釈がついたことで、当分の間は、遺伝子組み換えされたものが比較対象物となることはない。しかし、「予見される将来」の意味は不明で、不安が残る結果となった。)

●パラグラフ18 市場化後モニタリング(postmarket monitoring):多くのバラバラな意見が寄せられた。出た意見をいくつか挙げるとすれば、「予測できなかった影響に対応して行われるべき」(タイ、ベルギー)、「コストを考えるべき」(業界NGOのCRN)、「企業や政府は安全だと確信できないものは、市場に出さないはず。しかし、今の文章のままでは、まるでそういうことがあり得るような書き方だ」(基本的に市場化後のモニタリングに反対のアメリカ)、「ビタミンA強化米など、体に良くても、食べすぎると悪影響をおよぼす食品もある。良い面、悪い面、どちらにしろモニタリングは必要」(WHO)など。合意に達しなかったため、明日の朝、 このパラグラフから話し合われることになった。

■会議の後行われたレセプションでは、太鼓のパフォーマンスがあり、海外からの参加者は、日本の文化を驚きながらも楽しんでいた。

■明日は市場化後のモニタリング(postmarket monitoring)について書かれたパラグラフ18から。その次のパラグラフ19は、追跡可能性(traceability)について。午前中は、かなり対立の目立つ議論が行われると思われる。

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