国際会議
コーデックス(国際食品規格)プレスリリース:No.2
■5月8日 有機食品ガイドライン作業部会■


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┃目┃次┃

●本日の会議(要点を短ーくまとめました)

●会議の内容 ・おがくず・木炭の化学処理禁止について【これは重要!】
       ・亜硝酸ナトリウム・硝酸カリウムについて

●日本政府の様子(わが政府はどう?うまくやってる?
         政府のウォッチングも私の大切な仕事です。)

●議題の背景 (ちょっと小難しいので背景をよく知りたい方のみどうぞ。)

●明日の予定

●ひとこと  (私の個人的な感想です。)

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┃本┃日┃の┃会┃議┃2004年5月8日



●有機食品に関するガイドライン・作業部会が開かれました。

作業部会とは?
人数の多い会議ではなかなか議論が進展しないので、そのトピックに興味
のある人たちだけを少人数集めて、話し合いを行い、その結果を本会議に
かけます。有機食品は長年、作業部会を設置し、話し合いを進めています。


●今回の作業部会のハイライト

肥料・土壌改良に使用する「おがくず、バーク、木屑」「木灰」「木炭」に
使用される木材は「伐採後、化学的処理を行われていてはならない」など重
要な決定がされました。

●今後の進め方

今回の合意事項、まだ合意に達することなく来年も話し合いが続けられるも
のなど、本日の作業部会での決定は、報告書が作成され、5/10の表示部会に
はかられます。表示部会では、作業部会に参加しなかった国・組織もコメン
トを行えるため、作業部会での決定が覆されることもあります。作業部会で
の結論が受け入れられるかどうかが、これからの注目事項になります。


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┃会┃議┃の┃内┃容┃

●議長 カルラ・バリー議長(Ms.Carla Barry、カナダ)

●IACFO(食品国際消費者機構)からは、
食品と暮らしの安全基金・チェンジ・コーデックス市民の会の熊澤が参加。

●時間:10:00-17:40

会議の内容のなかから、特に重要と思われる議論をまとめます。

【これは重要!!!】

●肥料・土壌改良に使用する「おがくず、バーク、木屑」「木灰」「木炭」
に使用される木材は「伐採後、化学的処理を行われていてはならない」!!

木材、特に輸入木材は伐採後、防腐のために化学物質が使用されていること
が多い。この際に使用される化学物質は、クレオソート、CCA(銅・クロム・
砒素)など、人体に悪影響があり、有機食品の生産には使用できないばかり
か、一般にも販売が禁止されはじめているものも含まれている。

IACFOは、化学処理がされた木材を使用しないよう、2002年にもコメントを送
付しており、今回もこれに関して発言をおこなった。スイス、IFOAMなど多く
の国も同様の意見だったため、合意に達した。

有機農業の肥料・土壌改良に使用する木材製品は、伐採後どのような化学物質
でも処理されていてはならないという今回の結論は、今後、木材に関する議論
(畜舎や保管場所に使用される木材なども含め)に発展するものと思われ、非
常に大きな成果といえるだろう。

●「亜硝酸ナトリウム」「硝酸カリウム」は
  オーガニック肉製品に使ってもよいか?

亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムは、発ガン性物質のニトロソアミンの生成に
つながることから、できるだけ摂取しないことが好ましい添加物である。日本
においても、数は少ないものの、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムを添加して
いない無添加のハムソーセージなどは存在する。日本にはまだオーガニック肉
製品は出回っていないが、オーガニック肉製品が販売されるとしたら、当然、
消費者は亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムが入っていないことを期待すると思
われる。

日本でよく出回っているハムやソーセージの大部分は加熱をして作られている
もので、これらは亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなしでも製造が可能なこと
は、コーデックス内では周知されている。しかし、問題は、スペインやイタリ
アなどで有名な生ハムのように、火を通さずに生で塩漬けをして作る肉製品、
生ソーセージなど生貯蔵をする肉製品を、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムな
しで作ることができるかどうかということだ。

デンマークなど有機畜産の歴史が割合長く、また加工技術の進んでいる国は、
技術によって亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなしでも製造は可能であると考
えており、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムはオーガニック肉製品に許可すべ
きでないと強く主張している。

私たちIACFOも、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムは、オーガニック製品に使用
されてはならない添加物であると考えているため、デンマークを強く支持する
発言を行った。IFOAM(国際有機農業運動連盟)も同様の考えである。

しかし、フランス、スイス、スペインなど、火を通さずに生で作る肉製品に限
っては、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの使用を許可すべきとの声があり、
大きな議論となり、合意に達しなかった。

来年も引き続き、話し合いが行われることとなった。

また、議長を含め、会場の多くから、なぜ消費者は亜硝酸ナトリウム、硝酸カリ
ウムはオーガニック製品に使われるべきでないと考えているのか、亜硝酸ナトリ
ウム、硝酸カリウムを使用することは消費者を欺くことに本当につながるのかな
どについて情報が必要であるとの声があがった。

今後、CI(国際消費者機構)と協力し、消費者の声を集めて、来年の会議に持っ
ていくことが必要だ。

●そのほかIACFOが発言を行ったのは以下の点について

・消費者が有機食品を信頼し、自信を持って選択するためには、許可資材はでき
 るだけ制限し、許可資材リストは出来る限り短くするというアプローチが必要
 だと述べた。

 (議論のゆくえ:リストはまだ議論中のため、短いリストにするのはまだこれ
  から)

・リン酸を有機畜産物の乳化剤・安定剤とし使用することは許容できないと述べ
 た。
 
 (議論のゆくえ:合意に達せず、来年も引き続き話し合われる)

・チリ硝石を土壌改良剤として使用することはできな
 いと述べた。

 (議論のゆくえ:合意に達せず、来年も引き続き話し合われる)

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┃日┃本┃政┃府┃の┃様┃子┃

 坂  治己 氏
(農林水産省 消費安全局 消費安全政策課 国際食品班課長補佐)

 中野 正久 氏
(農林水産省 消費安全局 表示規格課 有機食品制度班担当課長補佐)

の2名が参加。

事前の書面コメントでは、
・キサンタンガム(乳製品・菓子類)
・カラヤガム(乳製品・菓子類)
・リン酸カリウム
 (とけるチーズ、プロセスチーズの乳化剤、殺菌済みクリームの安定剤)
・二リン酸塩
 (とけるチーズ、プロセスチーズの乳化剤、殺菌済みの安定剤)
を許可資材として提案していたが、

作業部会中は、一度も発言を行わなかった。

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┃議┃題┃の┃背┃景┃ここは、きちんと背景を知りたい方だけどうぞ。


●これまでの流れ

コーデックスの有機ガイドラインは、1999年に植物由来の食品のガイドライ
ン、2001年に畜産物のガイドラインが採択された。また、2001年から、付属
書2(許可資材リスト)と、5章(付属書2に資材を追加するための要件お
よび各国で資材リストを発展させる際の基準)の見直しが行われ、2003年
に5章は見直しが完了し、採択された。

付属書2は、表1:肥料および土壌改良剤として使用する資材
      表2:植物の病害虫防除の資材
      表3:添加物
      表4:加工助剤
から成り、現在は、ステップ5。

有機食品の生産のために使用してよい資材のリストは、各国の有機食品の生
産・製造に大きな影響を与えるため、慎重な検討がされている。

第5章の基準に優位性があることが確認されており、リストにあがっている
資材であっても、各国の環境・技術などに応じて、使用すべきでないという
判断がされたり、逆にリストにあがっていない資材であっても、第5章の基
準を満たしていることが確認できる資材であれば、国レベルで許可すること
は可能である。そのため、リストを作成する必要性に関して議論となってい
る。

●そこで、今回の話し合いは
・許可資材リストのあり方について
リストの存在に関して、なくてもよい、使用の可能性のあるものはあげてお
くべき、リストはできるだけ短くあるべきかなどの議論がある。

・許可資材にあがっている資材に関する検討

が行われた。

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┃明┃日┃の┃予┃定┃

●明日は会議はありません。
 IFOAMが有機農場ツアーを組んでくれているので、これに参加します。
 楽しみ!!これも、報告できれば、、、と思っています。

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┃ひ┃と┃こ┃と┃ふたこと?みこと?

●私は1999年から表示部会に参加してきて、今回でなんと6回目となりまし
 た。最初は右も左も分からず、あたふたしていましたが、6回目ともなれ
 ば、かなり慣れるもので、発言するのもほとんど緊張しなくなりました。
 年もとったし、心臓も強くなったのかしら??

●日本政府はほぼ3年で担当者が変わりますが、アメリカ・カナダを含め多
 くの国は長ーく関わっている人が多く、顔見知りになっています。年に1
 度、会議で会えるのは、楽しみの一つでもあります。会議の言語は英・仏
 ・西語。英語を話す人が一番多いですが、みんなそれぞれ、お国のアクセ
 ントがあって、それもまた趣があります。日本語なまりでも、ぜんぜん、
 恥ずかしがることなんてない!と強く感じます。日本政府の参加者にも、
 ぜっかく参加しているのだから、1回くらい発言してほしかったな、、。
 そう、思いません?

●議長のカルラ・バリーさんは、今回初の議長さん。昨年まで長年、この作
 業部会の議長を務めていたルビソロ女史(オーストラリア)は、ご自身も
 有機畜産農家で、有機食品を愛していることが伝わってくる方で、個人的
 にも大好きな人でした。いろいろと助言をいただいたりして、学ばせても
 らったので、彼女の定年退職は本当に残念です。バリーさんの今後の議長
 ぶりに期待したいと思います。