トップへ 他のレポ−ト 「有機ゲノム」を一蹴


狙った遺伝子を切断するゲノム編集をEU・米国の有機は禁止。
日本は有機JASで認めるかどうかを、農林水産省が検討会(9月30日)。
安全基金理事でもある岩泉好和さんが大活躍して蹴散らしました。


●「有機ゲノム」は禁止

 「結論が出るまで、有機JASはゲノム編集技術について、組換えDNA技術と同様に、その取扱いを禁止」と
10月1日に農水省。初戦は大勝利でした。
 しかし、安倍政権は「統合イノベーション戦略」として、ゲノム編集技術を社会に受け入れさせると閣議決定しているので、 手を変え品を変えして、有機ゲノムの実現を策謀します。

●決定した国際会合に参加していた

 2000年1月、カナダのモントリオールで開かれた「生物多様性条約特別締約国会議」に安全基金スタッフ2人が出席。
徹夜でトレーサビリティ(追跡システム)の議論を繰り返し、30日朝5時に「カルタヘナ議定書」が合意された瞬間を
世界で唯一、ビデオ撮影しました。
 国連・食品規格委員会(コーデックス)は、私たちが初のインターネット中継したバイオ特別部会で、
有機とトレーサビリティの合意に貢献しています。
 この2合意にしたがって、ゲノム編集食品に表示義務を課し、それから市場に出すべきなのに、
「ゲノム編集した食品は遺伝子を調べてもわからない」として9月19日、消費者庁は表示を義務化しないと決定。
 それを受けて、カルタヘナ議定書やコーデックス規格にある遺伝子操作作物の定義から、
少し外れるゲノム編集作物を有機で認めるかどうか、検討会を開催したのです。

● 憲法「第98条2項」違反

 検討会に呼ばれた岩泉さんは、2000年から2005年ごろの本誌を駆使しながら、ゲノム編集作物をEU・米国が遺伝子操作作物に含めて有機で禁止しているのに、 日本が有機で認めると、コーデックス規格に反すると主張。
 そして、ゲノム編集作物を有機に認めることは「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、 これを誠実に遵守することを必要とする」とした憲法第98条2項に反し「憲法違反」と主張しました。
 この意見に、政府側も専門家も反論できず、農水省提案を蹴散らすことができたのです。

● 伝統を重視する「有機」

 伝統を重視し、合成や遺伝子の改変を嫌うのが「有機」です。
 有機でも肥料や農薬は用いますが、昔から用いてきた資材か、使用に抵抗感のない許可資材を用いることになっています。
 遺伝子を新技術で改変した作物は、有機とは似合いません。

 ゲノム編集作物が広がって50年か100年後、伝統食品の仲間入りをしてから、有機に認証すればいいのです。
 私たちはゲノム編集作物に反対しているわけではなく、一般食品には表示させ、有機としては認めないだけです。

 次の戦いでは多くの国民が声を上げ、有機からゲノム編集作物を排除しましょう。

「食品と暮らしの安全」2019年11月1日発行 No.367

※岩泉好和さん・・・特定非営利活動法人食品と暮らしの安全基金 理事。
特定非営利活動法人アクシス委員会連合会長、検査認証(定)機関ASAC副会長・事務局長。
日本有機食品認証連絡協議会 理事。

【ゲノムとは】
 ゲノムとは生物が持つ遺伝 情報全体のこと。 その遺伝情報を構成するDNAの一部を切断し、
特定の遺伝情報を破壊したり、切断した場所に別の遺伝子を挿入したりして、
生物の形質を変える技術がゲノム編集です。
 遺伝子を操作するという点では従来の遺伝子組み換え技術と同じですが、 従来の技術だと、
目的の遺伝子を探り当てるまでに何万回と実験を繰り返さなければならないのに対し、
ゲノム編集は、目的の遺伝子の場所を最初から正確にとらえ、一発で切断できるのが、決定的な違い。
 これによって低コスト、短期間で結果が出るようになり、ゲノム食品の開発に拍車が掛かりました。

「食品と暮らしの安全」2019年8月1日発行 No.364『ゲノム食品、無規制で流通へ』より



【パブリックコメントに賛成意見を】

 この検討会を受け、農林水産省は11月8日付で、
組換えDNA技術を用いて生産されたものが、原材料等において使用できないこと、
ゲノム編集技術を用いて生産されたものについても、
原材料等において使用できないことを明確にする改正を行うことに対する、
意見募集を募っています。
この改正案に賛成が多数なら、安全審査・表示義務付けを放棄した厚生労動省や消費者庁と違い、
唯一有機食品にだけには「ゲノム編集技術」は使えなくなくなります。

ぜひ、皆さんの賛成意見を届けてください。

◆有機農産物の日本農林規格等の一部改正案の概要、意見提出フォーム
(締切日―12月7日)
>> 意見提出フォーム(外部サイト)


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