国産材で気持ちいい家を

エコ住宅、我こそはホンモノと、さまざまな論が展開。
ところが、どれがホンモノか、見極めるのは難しい。
そこで、事務所建設にご協力いただいた第1人者たちの
こだわりの視点をお届けします。

【出席】
相根昭典 一級建築士
株式会社アンビエックス代表、エコ建築の第1人者)
可能な限りケミカルフリー(有害化学物質を排除)の住宅を造る。
また、基礎を重視した耐震性抜群の建物を、自分で考案した止め金具などを使って建てている。
新事務所の設計を担当。

木村 司 木村木材工業(株)代表取締役
無垢材、造作材、注文材、窓枠、サッシ額縁、ドア枠、押入材を製造販売。
小若編集長に無垢材を勧め、新事務所にふさわしい木材を調達してくれた。

山賀康弘 一級建築士
(食品と暮らしの安全基金の建築顧問)
事務所建設に当たっては、打ち合わせから建設完了まで建築主側の相談役として助言・現場監理として活躍。
「最高の建築」へ尽力する。

小若順一 月刊誌『食品と暮らしの安全』編集長/食品と暮らしの安全代表
東海地震で浜岡原発が崩壊したら、首都圏まで放射能で汚染されることを知り、事務所移転を企画した。

内装工事

大工さんが内装工事の仕上げをする事務所の建築現場(7月3日撮影)

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小若 山賀さんには、現場に建築主の代理としてずっと立ち合っていただきましたが、いかがですか?
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山賀  現場に詰めていて、職人から相談されると木村さんに相談したりしながら、知恵を出してきました。建物は、表面を見るとすっきり単純に納まっているようでも、ウラにはさまざまな工夫と技術の粋が詰まっています。
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相根 同じように作っていても、1軒1軒、違いますからね。
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小若 素人では分からない点を、私に代わって切り盛りしていただいたことは、大変ありがたかったですね。
これほどシンプルな建物でも「納まり」に難しい点があるなら、間取りが入り組んでいる家はどうなるんでしょう?
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山賀  そのような一般の住宅では、納まりどころか、極端な言い方をすれば、切って貼って組み立てているだけ。


●エコ建築の大工のネットワークを
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山賀 ここでは職人がみんな一生懸命やってくれましたね。大工はちゃんと砥石をもってきて、刃物の手入れをしながら工事をしていました。いまどき珍しいことです。
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相根 この現場に来てもらったのは、在来工法ができる大工たちですから。それでも、だんだん仕事がなくなっています。
この現場は最後の最後まで大工さんが入りましたが、一般的には工期の3分の1ぐらいまでです。
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木村  他の現場では、大工さんの代わりにボード屋さん、クロス屋さん、ゆか屋さんが入ることが多いですね。切ったり、貼ったりする仕事がほとんどです。
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相根 建築業界は大工仕事を減らす方向に動いているから、厳しい。若い人も入ってきているのですが、仕事が減ってきて、維持できず、失速しそうです。
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小若  無垢の木で建てると建築費が高額になると、思われている。だから、住宅メーカーに頼む人が多いのでは?
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相根 実は高くない。エコ建築、国産材使用で、うちでは30坪の家で2700万円ぐらい。これは、積水ハウスのような大手住宅メーカーと同じくらいの価格です。こう言うと、皆さん驚かれますが…。
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丸田  「家を建てたいけど、いい大工さんがいませんか」と質問されても、紹介できる大工さんを、私たちは知りません。
「リフォームが一番危ない、建材に気をつけて」と忠告しながらも、安心して任せられる方を紹介できないのが残念です。
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相根 これから大工のネットワークを作ろうと考えています。暮らし方も含めた、家の造り方のブランドをつくって、ネットワークにしていきたいと計画中です。

●国産材使用で山を守る
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相根 今まで建築用木材は外国産が主でしたが、インド、中国が経済成長し、国際的に木が回らなくなってきています。これからは国産材の需要も出そうな感じです。
しかし、国産材が使われ始めているといっても、今のままだと、伐採して切り出すコストでいっぱいで、植林にまで回りません。するとはげ山ができて、土砂崩れが起きる。この悪循環がすでに始まっています。
木を使って、植林まで回していく正常な仕組みを作らなければいけないと、考えています。
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木村 その一歩として、事務所でこのような建物ができたのは画期的なことですね。
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相根 国土を守るという意味でも、大きな価値がこの建物にはあります。
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小若 1棟造っただけで国産の木を使ったとか、はげ山を守る、土砂崩れをなくすと声高に大きなことは言えませんよ。
政治権力を持たない市民としては、「いい建物でしょう」「気持ちいいですよ」と、言い続けていくこと。結果として、国産の木で家や事務所を造ろうという人がたくさん出てきたら、それが山を守ることになると思います。
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相根 今、細々とやっている小さな工務店でも、年間に5〜10棟造っています。その工務店が10社から20社ほど集まってネットワークを組めば、年100棟できます。そのネットワークが全国で100ヵ所できれば、1万棟です。これらの家を国産材で建てれば、林業が復活し、山の手入れができるようになります。

●合板・塩ビが『いい家』?
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小若 『「いい家」が欲しい』という本で宣伝している『「いい家」をつくる会』がありますね。
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相根 あのグループは、合板を使った高気密住宅だけを絶賛しているのですが、当然シックハウスになります。
地震の多い日本で、いつまで高気密が維持できるのかも疑問です。
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小若 合板を使って「いい家」を造ろうというわけですね。樹脂サッシも推奨していますが、樹脂サッシは塩ビ製ですしね。
でも、「合板を使っている」と書いてあれば別ですが、素人があの本を読むと「いい家が造れる」と思ってしまいます。一般の人には、家が建つまで問題点がわかりません。
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相根 彼らは、断熱材にはポリスチレンを使っています。壁の中とはいえ、揮発したガスは壁内に充満しているので、換気扇を使用すると室内に入ってきます。
私たちは壁の中の建材も重視していますが、建築基準法の規制は内装制限といって、仕上げ材だけ安全なものを使えばいいことになっています。下地はメチャクチャでも、「建築基準法を守っている」ことになるのです。
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小若 通気層は基礎にもありますね。
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相根 もちろん。たとえ大雨でも、基礎の湿気は上部の通気層に運ばれ、床下・壁内部・屋根裏の湿気とともに逃げるようになっています。
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小若 どこに使う建材でも、有害物質を含むものを使わないことですね。
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相根 そうです。建築は、どんな現象が起きるか読めないので、疑わしいものは使わない、どこまでも安全なものを使うのが正しいことだと考えて造っています。
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※スチレン:IARC(国際がん研究機関)による分類で「2B(ヒトに発ガン性を示す可能性がかなり高い物質)」
眼・皮膚・粘膜刺激、中枢神経作用がある

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2007年9月1日発行 No.221より

健康的で快適な空間(221号)>>

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