鉄筋コンクリートの基礎

新事務所は鉄筋コンクリートの基礎が出来上がりました。
耐震を考慮して、鉄筋も縦横に多く入った頑丈なもの。
何階建てのビルが建つかとびっくりされるほどでしたが、
この強さこそ、建築士・相根昭典さんの「基礎」です。

鉄筋コンクリートの基礎
基礎は、建物を支える基本です。
どんな建物もそうですが、建物の外周りだけでなく、中にも何本かの基礎梁が鉄筋コンクリートで造られ、それが土台の木とジョイントされます。
設計、使用する材質、さらに現場での工事の質で、建物の耐震強度が決まります。
新事務所の現場では、一般的な現場と比べると、職人も驚くような材料によって、ていねいに作業が進んでいきました。

●構造体の取り付けにステンレス

現場では、「捨てコンクリート」が白く乾くのを待って、この上に、建物の位置を設計図どおり描きます。建物の位置は土を掘るときにも測り出していますから、再確認のチェックを兼ねています。
線書きが終わったところで、外回りの基礎の外側の線にあわせ、基礎の高さに見合った型枠を組み立てます。真っ白な捨てコンクリート面の上に、建物の広さと同じ巨大な箱が出現します。
この型枠の上に耐震補強金物を取り付けるためのステンレス製のボルトを吊りこみました。
さらに建物上屋本体の土台を取り付けるための、ボルトを吊りこみます。コンクリートの中に植え込むためです。
土台の木とコンクリートの構造体を一体化する金物は、一般では亜鉛メッキ製を使いますが、120%頼れるものということでステンレス製のアンカーボルトを採用しました。ここまでステンレスを使う建物は、あまりありません。

●鉄筋を緻密に組み上げる

出来上がった型枠の中に鉄筋を運び込み、基礎の形に合わせて組み立てていきます。
基礎の幅が20cmもあるので、この幅の中に鉄筋を2列に並べます。各々の列は太さ1cmの鉄筋を20cm間隔で垂直に立てていきます。もちろん水平方向にも同じ間隔で鉄筋を通し、縦横の鉄筋を専用の針金で結び付け、設計図通りの位置に収めます。
基礎の底になるところは力がかかるので鉄筋を15cm間隔で、東西南北に並べます。底の厚さも20cmあるので鉄筋は2層に組み立てます。
この鉄筋が、最少でも3cmの厚さのコンクリートの中に埋っていないと、鉄筋コンクリート本来の効果が発揮できません。この厚みのことを、「かぶり」と言いますが、少ないかぶりでは近い将来、鉄筋が錆びてコンクリートを壊す原因にもなるからです。
新事務所は、一般より厚い5cm以上のかぶりが取れるよう、施工されていきます。

コンクリートの厚み「かぶり」
●硬いコンクリートにする

2月26日、まず倉庫部分の底床と建物の床部分からコンクリートの打ち込みを始めました。
生コンは、水が多ければ軟らかくて流動性が大きく、作業も楽です。
少なければ硬くて流動性が小さくなるため、型枠に打ち込むときに技量が要求され、十分に手間をかけ面倒を見なければなりません。この混ぜる水の量を少なくして作ったコンクリートが固まると、水を通さず、ひび割れの発生も少なく、長年にわたり劣化に耐える基礎に仕上がります。
コンクリートの出来の目安の一つにスランプ試験があります。円筒の試験用具に入れ、開けたときに広がった大きさの数値を専門用語で「スランプ」と呼びコンクリートの性質の判断材料にします。
この値は、一般的には18cmを基準としていますが、新事務所は、流動性の小さい12cmにするのが目標です。この数値ならば、表面の綺麗な、水を通さない、石のように締まったコンクリートになります。そして、この日に測定したスランプは11.5cmと、指示以上の出来となりました。
さらに、3月6日には、基礎の立ち上がり部分にコンクリートを打ち込みました。圧送車は20mある圧送ホースを一杯に伸ばし、奥の方から始めました。コンクリートを隙間なく詰めるために、振動する板状のバイブレーターという器具を使います。
基礎の幅が20cmあり、鉄筋の間隔やかぶりが正しく確保されているため、バイブレーターが無理なく使えています。スランプ「12」の固い生コンがゆっくりと落ち着いていく様子は、見事なものです。
埋め込みボルト
この日は気温が12度とこの時期にしては暖かく、生コンは水の浮き上がりもなく、打ち込む先から綺麗に設定の高さに決まっていきました。午前中に打ち込みを終えると、午後3時頃からは、埋め込みボルトの受け桟を外し、打ち込んだコンクリートの高さを再確認。確認の出来たところからレベラーを流し込み、基礎の仕上がり高さの微調整を行い、コンクリートの打ち込み作業は終わりました。
一日中暖かい日でしたが、念のため防寒マットで基礎の前面を覆い、打ち込んだばかりのコンクリートが夜間に冷えることのないように万全の備えをしました。
そして、3月12日に型枠を取り外すと、コンクリートの打ちあがった表面は密実にしっかりと仕上がっていて、慎重に作業が進められたことを物語っていました。
底床と立ち上がり基礎の打ち継ぎ部にもよくコンクリートが回り、不良箇所はまったく見当たりませんでした。

山賀康弘(一級建築士)

2007年4月1日発行 No.216より

耐震性・耐久性を求めたシンプル構造(217号)>>

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