おしゃぶりが危ない
おしゃぶりで異常になった幼児の歯並び

月刊誌記事から>おしゃぶりPL訴訟「大きな成果をあげて和解に」(No.229)


  「こんな被害をもう出してほしくない」と、
  「コンビ」に対し製造物責任を追及する裁判を起こしたAちゃん親子。
  「長い期間おしゃぶりを使用すると、歯並びや噛み合わせが悪くなる」などと
  注意表示をしたのを受けて、このほど和解しました。
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●やっと注意表示がされた
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「NUKおしゃぶりを使ったことで、歯列、あごの変形など被害を受けた」Aちゃんとお母さんは、 NUKおしゃぶりのメーカー「コンビ」相手に、製造物責任を求め、2006年5月31日に訴訟を起こしました。 自らの損害賠償を求めるとともに、メーカーの表示を含めた製品の改善を求めるためです。
裁判のさなか、コンビはホームページの記載を、 おしゃぶりの効能や欧米では4才ぐらいまで使用とする従来の内容から、注意表示に変更。 「おしゃぶりを使用する時の注意」「おしゃぶりと子供の歯並びとの関連性」を掲載しました。 また、商品のパッケージでも、「長時間にわたり、長い期間おしゃぶりを使用すると、 歯並びや噛み合わせが悪くなる場合があることが指摘され」と、表示。
こっそり注意表示を始め、以前から表示を行っていたような物言いをするコンビの姿勢には不審を覚えますが、 いずれにしろ、表示を行ったことは評価できること。 また、和解条項で、おしゃぶりが歯やあごに与える影響について、 「調査・研究に努め、より安全性の高い製品提供することができるよう、 製品の改良や適切な使用表示・情報提供の実現に向けて、真摯な努力を継続する」ことを確約するなど、 裁判の目的の大半を達成し、3月21日、Aちゃん親子は「和解」で、裁判を終結させました。
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●使い続ける害の情報はなかった
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Aちゃんにおしゃぶりが与えられたのは生後2ヵ月ごろ。
眠くなってぐずっているときにお母さんがおしゃぶりを与えると、 ぐっすり長く寝てくれていたので、寝入ってからもおしゃぶりを取らずにいたそうです。
1歳を過ぎると、眠くなると自分でおしゃぶりを口に入れて寝ていました。 お母さんは、1歳児検診などの検診のたび、小児科医、歯科医、助産婦さんにおしゃぶりの害について尋ねましたが、 「まだ小さいので無理にやめさせなくても大丈夫」の助言を受けるだけ。 育児書やインターネットなどでいろいろ調べても、やめさせたほうがいいという情報がなかったので、 そのままおしゃぶりを与えていました。
3歳になるころから前の歯がきちんと閉じずに、隙間ができていることに気がつきました。 そのため、正しく発音できない、麺類などを前歯で噛み切ることができないという支障が出始め、 癖として、あごを少し前に出すようになっていました。 歯並びが悪いのは遺伝や生まれつきなので仕方がない」とお母さんは考え、 当時受診していた歯科医からも「いずれ矯正が必要」と言われていました。
そのAちゃんの歯並びの異常が、「おしゃぶりによるもの」と診断したのは、 おばあさんに勧められ受診した亀山歯科医院の亀山孝將院長です。
即座におしゃぶりを止めると、1ヵ月ほどで前歯の隙間は半分以下になり、1年半以上たつと前歯の隙間はなくなりました。
その後、歯の矯正が行われていますが、あごの変形(下顎前突)は治らず、発音の発達も遅れがちです。
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●被害者は意外と多い
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Aちゃんの主治医である亀山歯科医の患者さんには、おしゃぶりの被害者が多くいます。
亀山先生のインタビューを本誌197号で掲載。 また、安全基金著『使うな、危険!』(2005/9講談社刊)にも おしゃぶりの項目を入れました。 すると、「兄弟のなかで1人だけ歯並びが悪い子がいる。その理由がわかった」「今は、子どもに申し訳ない気持ちでいっぱいだ」などと、 被害情報が、私たちのところにも寄せられています。気がつかないまま、被害を受けている人が少なくないことがわかります。
もし、メーカーがきちんと注意表示を行っていれば、長期間使用の害がわかり、使用をやめ、被害も受けなかったと、Aちゃんのお母さんは憤ります。
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●再び被害を出さないために
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Aちゃん親子が提訴した情報が報道され、おしゃぶりが歯列に影響を与えることが社会的に知られるなか、 亀山歯科医は厚生労働省へ粘り強く働きかけました。
その結果、2007年4月から配布の母子手帳で、 「おしゃぶりの長期間の使用によるかみ合わせへの影響について」が、記載されるようになりました。 また、「消費生活用製品安全法等の改正」(2007年5月14日施行)では、おしゃぶりによっても著しい咬合異常があって歯科矯正が必要な場合などは、重大製品事故にあたることが、 歯科医院、歯科保険医協会、弁護士会、食品と暮らしの安全基金が出したパブリックコメントへの回答で、明らかになりました。
この法律の改正は、パロマ工業製の瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒の死傷事故や、 家庭用シュレッダーによる子どもの手指切断事故などを踏まえ、国がすばやく情報を収集することができるよう、 重大な製品事故情報を報告する義務が事業者に課せられたものです。
1人の勇気あるお母さんの訴えが企業を動かしてパッケージに注意表示がなされ、母子手帳にも警告が載り、多くのお母さんにおしゃぶりの問題を知らせました。消費者被害から身を守るためには、消費者自身が声を上げていくことが求められます。
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2008年5月1日発行 No.229

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※亀山歯科医院WEBサイト >> http://www.114118.jp/
>>おしゃぶりTOPへ
>>亀山先生インタビュー(197号)
>>表示・補償について企業から回答(198号)
>>母子手帳に注意表示(215号)


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