おしゃぶりが危ない
おしゃぶりで異常になった幼児の歯並び

月刊誌記事から>亀山先生インタビュー(No.197)


聞き手:編集部
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亀山歯科医院:東京都多摩市
やさしく、わかりやすい説明、歯・神経をなるべく抜かない、安心な治療を目指して診療を行っている。

※亀山歯科医院WEBサイト >> http://www.114118.jp/
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●歯列不正の原因はおしゃぶりだった
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編集部 おしゃぶりの害を訴えられたのは、いつごろですか?
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亀山  私には3歳になる子どもがいます。その子の指しゃぶりをやめさせるために、おしゃぶりを与えようと思ったのです。
歯医者は指しゃぶりが歯並びに悪影響を与えることは学んでいても、おしゃぶりが子どもの歯並び(歯列)に影響を与えるとは、どんな教科書にも載っていないので知りません。
私が買ったおしゃぶりの説明書には、「鼻呼吸を促していい」と書いてあり、確かにそうだろうと思いました。しかし、購入したものの、実際に与えるのは、なぜか迷っていました。
ちょうどそのころ、歯並びに異常があるお子さんがおしゃぶりを使っていることを、お母さんの問診で知ったのです。
そのとき、「あっ、歯並びにおしゃぶりが関連している」とピンと来たのです。
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編集部 何例くらいでわかったのですか?
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亀山 最初の患者さんの話で分かりました。それまでは、歯列不正があっても、先天的なものだろうと思っていましたから、おしゃぶりの使用を聞きませんでした。
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編集部 歯並びに異常のあるほかの子どものお母さんに問診しても、おしゃぶりだということが出てきたのですか。
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亀山 そうです。おしゃぶりに焦点をあてて聞いてみると、何例も出てくるのです。しかし、探しても文献にはどこにもありません。むしろ推奨するデーターだけです。
事例を見ていくたびに疑問が膨らみ、自分のホームページで情報を出し始めました。

●賛否両論の意見に母親は?
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亀山 そうするうちに、歯科雑誌でおしゃぶりを勧める論文が発表されました。その論文では、歯並びがよくなるようなことが書いてありました。
ところが、うちの歯科医院にはおしゃぶりで歯並びが悪くなった子が大勢いるのですから、それを読んで、まったくでたらめでとんでもないことだと腹が立ちました。
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編集部 おしゃぶりはいいと、間違った情報が論文で出たということですね。
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亀山 その論文が発表されてから2〜3ヵ月後に、今度は、米津卓郎先生によって、おしゃぶりがよくないという論文が発表されたのです。
米津先生の論文はしっかりとした証拠に基づいていて、そこに登場する患者さんのデーターを見て、おしゃぶりがよくないことを確信できました。この論文では、数ヵ月前に出たおしゃぶり肯定の論文について「とんでもない、なんら証拠がない」と、批判していました。 まるっきり正反対の論文が立て続けに出たのです。どちらが正しいか、お母さんたちに判断できると思いますか? おしゃぶりは子どものためになると信じて使う人も出てくるかもしれないと危機感を感じ、おしゃぶりについて取り上げるよう、東京歯科保険医協会に働きかけました。それと同時に、各新聞社、テレビ局にメールで情報を流し危険性を訴えました。実際に新聞記事になったのは産経新聞だけでしたが。 2005年1月になって、「小児科と小児歯科の保健検討委員会」が、おしゃぶりについて初めて見解を出しました。 「おしゃぶりは子どもの歯の健康によくない。1歳過ぎたら常時使用しないようにする」という、正式な見解です。 この見解は読売新聞にも取り上げられ、インターネットでも「おしゃぶり有害」が広まり始めました。

●生後すぐにおしゃぶりを与える産院
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亀山 やっと確かな情報が出せたわけですが、おしゃぶりはいいですよという情報のほうが圧倒的に多いですよね。
保健所、産婦人科、小児科などでメーカーが、育児キットの形でおしゃぶりを与えてしまっている。 国立病院など、赤ちゃんが生まれるとすぐおしゃぶりを与えているところもあります。泣かなくなり、おとなしくなるので、看護婦さんが楽になります。それで新生児にズラッとおしゃぶりを与えてしまっている。
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編集部 それは、おぞましい光景ですね。
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亀山 おしゃぶりを新生児のころに与えることによって、子どもは母乳を飲まなくなりミルクを飲むようになります。  母乳を飲まなくなると誰が得するかというと、粉ミルクメーカーと哺乳ビンとかを作っているメーカーです。
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編集部 おしゃぶりを作っているメーカーとミルクメーカーとは関係があるのですか?
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亀山 おしゃぶりを作っているメーカーが、だいたい哺乳ビンとか消毒剤なども作っています。そして粉ミルクメーカーがある。
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編集部 利益共同体になっているわけですね。
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亀山 そうです。しかも、だれも損をする人がいない。
お母さんは育児が楽になる、病院も楽になる、歯医者さんも患者さんが増える。もちろんメーカーは儲かる。ただ、おしゃぶりでひどい歯並びになった子どもだけ一生苦労することになっているのですね。
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編集部 健康被害まで考えられますよね。
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亀山 多くの人は「すぐに治るんじゃないの? 」「やめれば大丈夫じゃないか?」くらいにしか考えていない。ところが、実際にはそうはいきません。
おしゃぶりを1歳半まで使うと30%、2歳まで使うと60%、3歳まで使ったら100%に歯列異常が見つかります。
3歳まで使ったら100%の子どもが矯正をしなければならないほどの歯並びになってしまいますね。放っておくと、下あごが出て受け口になったり、あごが横にずれて顔が曲がって(交叉咬合)してしまうという、大変なことになるのです。
ところが現実に、街を歩いていても、3歳くらいまでおしゃぶりを使っている子を結構見かけるでしょう。
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編集部 映画などを観ていると、外国では日本人以上にもっとおしゃぶりを使っているようなイメージがあります。アメリカでも批判論文が出てきたということですね。
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亀山 そうです。1992年にはすでにおしゃぶりによって頭痛、嘔吐、発熱、下痢の症状が出たり、中耳炎が増えるとか、使用中のおしゃぶりからカンジタ菌が78%の高率でみつかったことを指摘する論文が出ました。
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編集部 じゃあ10年前から外国でも大きな問題になりかかっていて、とうとう2002年にニューヨーク・タイムズでも取り上げられるようになったということですね。
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亀山 そうです、日本でも近々、この問題が大きく取り上げられると思います。

●メーカーの責任を追及する
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編集部 今おしゃぶりを使っている人たちには、どのようにアドバイスをしたらいいのでしょうか?
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亀山 まず、おしゃぶりをやめることです。
すでに歯列不正が出てしまっていたら、早く治した方がいいですね。 3歳以降の場合は、乳歯で歯並びを治す治療法があります。
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編集部 もっと早い段階、1歳から1歳半のときに異常が現れ始めてしまった時期だったらどうしたらいいのでしょう?
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亀山 おしゃぶりをやめると、そのまま治ることが多いです。
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編集部 やめるだけで治りますか?
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亀山 治ります。ですから、1歳過ぎたらやめたほうがいいですね。1歳過ぎまで使っていて、歯列不正が出ても、2歳ぐらいまでにやめれば、それほど異常が出ないことのほうが多いです。
ただし2歳以降まで使うと、かなり異常が出てしまう。
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編集部 歯が生えそろうのは、いつごろですか?
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亀山 だいたい1歳半くらいで全部生えそろいます。おしゃぶりが歯の生えるべき位置に居座っているのですから、歯並びがおかしくなるのは、当然です。
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編集部 先生は治療費をメーカーに請求しようと呼びかけていらっしゃいますね。
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亀山 実際に発生した治療費を請求するということです。 今すぐ矯正が必要でない子どもでも、大人の歯になってから矯正が必要になれば、100万円くらいかかります。顎関節症になることも考えられます。そうなると、頭痛、肩こり、腰痛、耳鳴りなどの症状が出てしまうこともあるのです。
おしゃぶりメーカーが、長期間使った場合、こういった被害が出るので注意しましょうとか、正しい使い方を守ってくださいと、きちんと注意書きに書いてくれれば被害は減るのですから、責任は追及していいでしょう。
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編集部 1歳でやめてくださいという注意表示を出せばいいんですよね。
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亀山 そうです。あるいは、1歳以上使っていたらこういうことが起こりますという注意書きが必要です。
1歳過ぎまでおしゃぶりを使っていると、「こういう歯並びになりますよ」という写真を見せればいいんですよ。
リスクを必ず説明書きに書くこと、もっと国民に広めるべきということ、さらに治療費をメーカーが負担すべきと、今、この3つを要求していきたいと考えています。

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2005年9月1日発行 No.197

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