ウクライナ調査報告【まとめ2012〜2014年】

英語訳:Healing health issues resulting from radioactivity in food
フランス語訳:Guerir les problemes de sante dus a la radioactivite contenue dans la nourriture


タチアナ

食品の放射能汚染による人体被害を回復させる




チェルノブイリ原発事故が起きたウクライナで始めた調査は、
多くの人の健康を回復させて、「日本プロジェクト」と呼ばれるようになっています。
「日本プロジェクト」で得た知見で、さらに多くの人を救おうと私たちは活動しています。

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放射能汚染の人体影響調査


 2012年2月、チェルノブイリ原発事故による健康影響を調査するため、ウクライナへ調査に行きました。
2度目の調査を5月に行い、婦人団体「希望」代表のタチアナ・アンドロシェンコさんに、放射能の被曝量を減らして、 健康状態がどう変わるかを調べる調査の実施を依頼し、当基金の調査の方向性を示して、 支援者からカンパを集めて、調査資金を出すことにしました。



70日間の保養で健康状態がどう変化


nataria

 原発から130qほど西にある第3種汚染地域のビグニ村に住んでいて、 体調が非常に悪かった26歳の女性ナタリアを、2012年7月から、汚染のない保養地に70日間行かせて、健康状態がどうなるかを調査。
 ナタリアは、45日まで体調が悪かったのに、そこから改善を始めて、70日後にはほとんど健康になりました。

 現在、ナタリアは1児の母になり、非汚染地域に住んでいます。
この調査で、被曝量を減らすと健康状態が良くなることを確認でき、良くなる経過も把握できました。




極低レベル食品汚染による健康影響を調査


 次は、同じ場所に住み続けながら、食品の放射能汚染を減らして被曝量を減らしたら、健康状態がどうなるかを調べました。

 当基金と提携したタチアナさんは、首都キエフから60㎞ほど東南にあるコヴァリン村に住んでいます。 この村は放射線管理区域の外の非汚染区域にあるのですが、健康状態が悪い人がたくさんいます。
 私の印象では、半数を超える人が、頭痛、足痛に悩まされ、さまざまな慢性疾患を抱えて生きています。
食品のセシウム137汚染を実測すると、キノコが210ベクレル/㎏で、あとは検出限界の10ベクレル/㎏未満でした。
川魚が平均8ベクレル/㎏というデータを入手したので、キノコと川魚を食べない代わりに、肉と牛乳を提供して被曝量を減らし、 家族の健康状態を記録するプロジェクトを、2012年11月から開始。

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翌年3月、調査に行くと、8家族の33人の健康状態が良くなっていました。
目まい、皮膚障害、頭痛、足痛、呼吸困難、鼻血、胃痛などが、全くなくなるか、非常に軽くなっていたのです。



汚染地域で食品汚染を減らすと健康が改善



 第3種汚染地域のビグニ村に住む3姉妹の家族の健康状態を取材させていただくと、子どもから老人まで、全員が健康に大きな問題を抱えていました。

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 そこで、2013年1月から、この3家族に、肉を提供する代わりに、キノコ、ベリー、ハチミツを食べないようにしてもらい、健康状態を見るプロジェクトを開始。
半年後に訪ねると、ほぼ全員が見違えるように健康になっており、よく心筋梗塞を起こしかかっていたお母さんは、もう症状が起きなくなっていました。
 これで、汚染地域で健康障害を抱えながら生きている人たちを、そこに住んだまま、健康状態をかなり良くできることが判明しました。


食品汚染による健康影響の最低値は1.1ベクレル/㎏



 非汚染地域にあるコヴァリン村で、平均的な食事のセシウム汚染値を確かめようと、2度検査しました。 検出限界を下げて、1.8ベクレル/㎏にしても、37の食事メニューで数値が出ませんでした。
1ベクレル/㎏以下のセシウム137を検査するのは大変なので、そんな検査を行うなら、人体に影響を与える最低値を調べることにしました。

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2013年3月に、ウクライナ東南部の学校を回って、頭痛と足痛を調査すると、ポルタヴァ州の北部では頭痛の子が7割いたのに、 中部から南部の学校では、頭痛・足痛の子はほぼ皆無でした。
頭痛に悩む子たち
頭痛の子が7割いた学校が、影響が出ている境界ラインと考えて、 そのノヴィ・マルチノヴィッチ村の村長に、その子たちが日常食べている食事の一日分を提供してもらって検査すると、1㎏当たり1.1ベクレル。 1日に食事を2150gを食べているので、1日に2.36ベクレルのセシウム137を食べて、頭痛が出ていることが判明しました。
肥料提供
1.1ベクレル/kgの食事で頭痛が出ることを、食べている農作物のセシウム量を減らして検証するため、 汚染されていない鉱物肥料を提供して自家畑にまき、1年後に調査すると、頭痛が大幅に減って、鉱物肥料を自家畑にまかなかった家庭と大差がつきました。

これで、セシウム137が人体に影響を与えることが判明している食品汚染の最低値は、1㎏当たり 1.1ベクレルと確定しました。

食事の表


放射能の食品基準を1000分の1に



 主な食品基準を紹介しておくと、1kg当たりアメリカは1200ベクレル、 コーデックスの国際食品規格は1000ベクレル、EUは500ベクレル、日本は100ベクレルです。
基準に大きな差がある主な理由は、汚染食品を食事全体の何%食べるか、その想定が違うからです。

 化学物質は、動物実験で安全とされた最低値に、ヒトと動物の種差や、 ヒトの年齢差を考慮して、安全率の100分の1を掛けて、一人も被害が出ないように基準が設定されます。
ところが、食品の放射能汚染は、人体に影響が出ることが確認されたレベルの1000倍に国際基準が設定されているのです。
現代の安全基準の考え方と、かけ離れた危険な基準になっているので、国際食品規格の基準を1000分の1に改訂する必要があります。


学校単位で、子どもの健康状態を改善させる



 2014年からは、学校単位で、子どもの健康状態を改善させる試みも行っています。

 原発から100qほど西にある第3種汚染地域のピシャニッツア村学校では、2012年秋には、足の痛い子が45人中28人いました。
学校の父兄に、キノコ、ベリー、ハチミツ、川魚を食べないように要請し、 鉱物肥料を提供して自家畑に撒いてもらうと、2015年3月には足痛の子は、65人中1人に減りました。
頭痛も45人中21人だったのが、65人中3人に減っています。


ピシャニツァ村体調改善

ピシャニツァ村放射能測定結果

 原発から120qほど西にある第3種汚染地域のモジャリ村では、
2012年秋に、足の痛い子は32人中23人いたのに、2015年3月には72人中2人に。
頭痛は32人中26人が、72人中4人に減っています。


モジャリ村体調改善

モジャリ村放射能測定結果

 このように、適切な方法で放射能の摂取量を減らせば、汚染地でも、
健康状態を格段によくできることを「日本プロジェクト」は実証しました。


牛に穀物を食べさせて、牛乳を安全にする




 2015年からは、ウクライナ生物資源・環境利用大学・農業放射線学研究所・ラーザレフ・ニコライ副所長の提案で、 ウクライナで人が住んでいる地域の中で、最も汚染のひどいナロジチで、健康を改善させる調査プロジェクトを進めています。
この地域は、200ベクレル/kgを超える牛乳があるので、牛乳汚染を減らすため、牛に穀物を食べさせることにしました。 幸いなことに、ウクライナ穀倉地帯は放射能でほとんど汚染されなかったので、今の穀物はまったく汚染されていません。
牛乳を安全にした上で、キノコ、ベリー、ハチミツ、川魚を食べないようにして、健康状態がどうなるかを調べるプロジェクトを、2015年6月からスタートさせています。
また、穀物を食べた牛の糞は放射能をほとんど含まないので、牧草地を安全にする効果もあります。その効果がどれくらいかも、調べる予定です。



国家プロジェクトにしたい



 ナロジチ地区には、1万人を超える人が住んでおり、ほとんどの人が健康を損ねたまま暮らしています。
「日本プロジェクト」で得た成果と、その情報を活かせば、この地区の1万人の健康被害を激減させることができます。
そこで、日本政府に汚染地域の住民を救うために援助をさせようと活動を始めました。

 2015年6月6日、ウクライナを訪問した安倍首相が、ポロシェンコ大統領と会談したとき、 安倍首相は「食品の安全の面で知見の交換を行いたい」と述べたと報道されました。
ウクライナの仲間たちと当基金が働きかけて来た結果、安倍首相は「食品安全」と発言したのです。
食品安全の知見を交換した上で、日本が数千万ドルの援助を行えば、ナロジチ地区を含む放射能汚染のひどいジトミル州の住民の健康を、 少なくとも50万人は大きく改善させることができます。
それは医療費を少なくさせるので、住民も政府も自治体も、すべてが満足する結果を得ることができます。
このことが実現するように、ウクライナの仲間たちと当基金は、日本とウクライナの外務省に働きかけています。
この文章を読んでくださったみな様は、日本プロジェクトで発見された人体影響の知見を、 国際的に広げて、放射能被害の間違った常識や基準を変えるようにしてください。



2015年7月1日
食品と暮らしの安全基金 代表 小若順一



⇒今までの ウクライナ調査報告書もご覧ください。
原発関連レポート



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