5年前に結成され、3年前に1人当選した国会議員が、今回の参院選で、18人の勢力になったのが参政党です。
そんな日本の新興極右政党に欧米メディアも注目しました。
参政党が「日本人ファースト」やら「外国人による静かな侵略」といった言葉を使い、欧米の極右と共通する主張を繰り広げていたからで、その中には、一時流行した「ワクチン陰謀論」までありました。
英紙『ガーディアン』などが参政党を「右翼ポピュリスト党」、「極右政党」と呼んで、何度も紙面で取り上げ、米紙『ニューヨークタイムズ』などは投票日直前に神谷宗幣代表の単独インタビューをやっていたようです。
極右の台頭で大混乱
いまのヨーロッパは極右勢力の台頭で、大混乱が起きています。
極右政党の影響力が強い国として、ハンガリー、オーストリア、スロバキア、ドイツ、イタリアなどが挙げられます。
一部にEU懐疑主義や親ロシア的立場などを掲げる政党がありますが、多くの極右政党の主張の根本は、反移民です。
オーストリアでは、昨年の総選挙で極右の「自由党」が第一党となりましたが、連立政権の樹立には失敗しています。
ドイツでは「、ドイツのための選択肢( AfD)」が支持を集め、第2位の議会勢力に浮上しました。連立協議の中心となる動きさえ見られます。
イタリアでは極右政党「イタリアの同胞」党首を首班とする連立政権が既に成立。
英国では「リフォームUK」が地方選で、保守・労働の二大政党を上回り、フランスでも事実上マリーヌ・ルペン氏が率いる「国民連合」が既成政党を脅かす存在となっています。
EU(欧州連合)議会も例外ではありません。
極右政党が議席を増やし、新たな院内会派「主権国家の欧州(ESN)」を設立する動きが確認されています。
ヨーロッパでの極右政党の台頭は多くの場合、移民排斥を契機に始まっています。
生活困窮への不満が、「低賃金の移民によって我々の職が奪われている」との被害者意識につながり、社会的軋轢が生まれ、欧州内の政治的な分断を深めているのです。
日本の移民問題?
日本では事情が違います。
米紙『ウォールストリート・ジャーナル』のコラムニストは、参政党が政府による外国人受け入れの縮小・廃止を求めていることについて、「現時点で移民はほとんどいない。外国生まれの人は約380万人で、人口に占める比率はわずか3%だ。これに対し、米国では少なくとも14%、ドイツでは約18%となっている」と皮肉っぽく書いています。
一般の日本人が移民の人たちと出会うことは滅多になく、賃金の安い移民や不法移民の人たちに働き場所を奪われたというケースは、きわめて稀です。
よく見かけるのは、マナーの悪い外国人観光客です。
それなら先日の参院選で、将来の可能性はともかく、いま困っているわけでもないのに、若い人たちはなぜ参政党に投票したのでしょうか。
象のグラフ

10年近く前になりますが、図のような「エレファント・カーブ」が話題になったことを思い出しました。
当時、世界銀行エコノミストのブランコ・ミラノビッチ氏が提起、賃金の伸びない先進国中間層の貧困と格差を説明するグラフだとされていました。
図は、横軸が所得です。世界120カ国、600の家計の所得を左から右へ低いほうから100分位で並べます。縦軸には、所得の増加率(この場合1988-2008年、%)3つのポイントがあります。
まず、図中のA 、グラフの真ん中あたりで所得を積み上げているのが、中国やインドの新興国の個人、経済のグローバル化の恩恵を享受した人たちと考えられます。
所得が伸びていないB については、80~85分位でその7割はOECDに加盟する先進各国の個人所得の下位半分の個人から成り立っているといいます。
C は世界のトップ1%で、先進国の個人。
半分は米国だそうです。
この象のグラフを見て気が付くのは、新興経済が一体となって、先進国経済に追いつこうとしている間に、先進国では富裕層と中流(とくにその下位)の二極化が進んだということです。
当のミラノビッチ氏は、近年の雑誌インタビューで、「現在は条件が変わり、グラフが象の形をとらない」と言っています。
中国の発展にインドが続き、国と国との間の格差は縮まっているのです。
しかし、国内格差は、話は別です。先進国内の中間層の所得は相変わらず増えず、国内の二極化は逆に進んでます。
これが伏流水となって、ヨーロッパや日本に極右化現象を噴き上げているのです。