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「調理済み流通食品」でミネラル欠乏
市販食品のミネラル不足は 食品成分表でわかる

「市販食品はミネラル不足」と本誌は検査して実証しました。でも、栄養士が今の食品成分表を見れば、すぐにわかります。栄養士は、一刻も早く改善に取り組み、病人を救うべきです。

栄養学者の指示で検査を開始

 「本当は摂れていなかった亜鉛」と、国の「食品添加物の一日摂取量調査」を2010年3月号で紹介すると、栄養の本を数十冊も書かれた大御所の吉田勉先生から、「推定平均必要量は、半分の人が病気になる基準です。大変なことが起きています。小若さんも検査しなさい」と、電話がありました。
 そこで、すぐに市販食品の検査を始めて『ミネラル不足の食事』というポスターを同年7月に作成。
 12月には市販食品の実測値をベースにした『食事でかかる新型栄養失調』(三五館)を出版しました。
 人気食品の検査を続けて、112食品の実測データ集『心身を害するミネラル不足食品』を2017年に作成すると、吉田先生は日本微量元素学会で講演させてくれました。
 それから、このデータ集を日本栄養士会の中村丁次会長に手渡して、ミネラル不足に取り組むようお願いしましたが、栄養士会は動きません。
 2年前には、同会の下浦佳之専務理事に『脳にも悪い! 違反食品』の本を渡して、「子どもを守ってほしい」と1時間以上、熱を込めて懇願。1年後に電話して、下浦専務理事に尋ねると、「何もしていません」。
 日本栄養士会は「『栄養の力で人々を健康に幸せにする』の実現を目指し、管理栄養士・栄養士の力で国内外での栄養改善の取り組みを推進していきます」と、ホームページの「会長からのメッセージ」に書いているのに、子どもの発達障害や、不健康な成人が増え続け、病気が治りにくくなっていても、何もしないのです。
 大手食品メーカーの数社は、栄養不足をすべて解消する「完全栄養食」を出し、業界団体も設立して準備を整えています。
 調べると、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の「調理済み流通食品類」に、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の分析値が載っていました。
 この50品目ほどの値を使えば、市販食品を食べているとミネラル欠乏で病気にかかることがすぐにわかるのです。
 2000年以降も私は、国会、厚生労働省、文部科学省、日本栄養士会などに働きかけてきたのですが、どこも実態の改善に動くことはありませんでした。
 そこで、食品成分表にある「調理済み流通食品」を買って、市品食品を食べている子が、ミネラル不足になることがわかる表を作成することにしました。

「 調理済み流通食品類」だけの食事

 メニューは、不登校が増えている中学生の食事にすることにして、農林水産省の「子どもの食育」で「バランスのとれた1日の食事例」に準拠して作成しました。
 朝食は、ごはん、味噌汁、アジの南蛮漬け、きんぴらごぼう、ゆで卵、牛乳、キーウイフルーツ。
 昼食は、冷凍海老ピラフ、粒コーンのクリームポタージュスープ、カニクリームコロッケ2個と、果物入りヨーグルト。
 夕食は、牛丼、ご飯、酢豚、ギョーザ、ひじき煮、切干大根、果物ヨーグルト、ミカン。
 これぐらいの品目を食べると、栄養バランスの取れた食事になるとされています。
 写真の市販食品を買って来て、摂取できるミネラル量を計算しました。
 その条件は、次のとおりです。
 ① 1パックをすべて食べる。
 ② パックが2つ入っていたり、3つセットされている食品は、密封していれば1つだけ食べ、密封していなければすべて食べる。
 ③ 重量は、食品表示の値を用いる。
 ④ 重量表示がない食品は、測定する。
1日分のメニューと、各食品に含まれる
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の含有
量を、次ページの表1に載せました。

カル・マグ・鉄が大不足

 中学生ですから、たくさん食べる子は、この倍ぐらい食べるでしょうが、女子は、これより少ない子が多いでしょう。
 このミネラル値を、12~14歳の食事摂取基準と比較してください。
 「推定平均必要量」は「不足のリスク」が0.5とされ、この水準の食事を食べ続けると、半数が病気にかかる基準です。
 「推奨量」は「不足のリスク」が0.025で、ほぼ全員が健康でいられる基準です。
 だから、推奨量より多いミネラルを摂取することが、健康の維持に必要です。
 カルシウムは、男女とも推定平均必要量を下回っています。対策は簡単で、牛乳をたくさん飲めばいいのです。

朝食
昼食
夕食

「調理済み流通食品」でミネラル欠乏

 マグネシウムは、男子が推定平均必要量を下回り、女子は少し超えています。
 推奨量を超えると健康リスクがなくなるので、最低目標が290㎎になります。
 「筑前煮」と「白和え」を加えると、推奨量を超えます。
 鉄は、男女とも基準を大きく下回っています。本誌431号に書いたように、食品から抜かれまくっているからです。
 女子は、「筑前煮」「白和え」に加えて、朝を「親子丼」にすると、推奨量を超えます。
 男子は、さらに「チキンハンバーグ」「ミートボール」「うの花」を加えると、推奨量に達します。
 亜鉛は、女子は足りていますが、それは、ごはんに多く含まれているからです。男子は推定平均必要量しか摂れていません。
 調理済み食品は、食事の半分以上を占めるようになっているので、多くの中学生が
心と体を蝕まれていたわけです。
 子どもの心が少しでもヘンになると親は目を離せないので、調理済み食品を買って来て、料理を作らなくなり、食事に占める割合が高くなります。
 そうして調理済みの食品だけを食べるようになって、心身が弱り、状況に適応できなくなって、学校に行けなくなり、不登校児が増えているのです。