代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「淡水パールは環境保護型」 安全基金の活動と考え方(28)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 2月末に上海に飛び、そこから80kmの蘇州、さらに40km先の無錫と、2002年の取材拠点を再取材しました。
 蘇州も無錫も湿地帯で、大小の湖があちこちにあります。広大な太湖は汚染が進み、6年前は、水道水のカビ臭がひどくて飲めないどころか、 シャワーをかぶるのも嫌なほど。その太湖が、昨夏は汚染が特にひどかったと報道されたので、水道水が心配でした。行ってみると、今は揚子江から水を引いて、普通の水になっていました。
 前回の取材中、「珍珠城」という看板を見かけたので車を止めると、そこは淡水パールの店が何十軒も並んだ真珠ストリート。 ネックレスのあまりの安さにビックリしましたが、現金の持ち合わせが少なく、心残りができました。
 その珍珠城は5kmほど先に移転していたので、まず真珠ストリートに行ってみました。すると淡水パールの店は4〜5軒しか残っておらず、廃墟に近づきつつある街になっていたのです。 裏にあった養殖池は埋め立てられ、その向こうは大住宅街に変わっていました。
 真珠の養殖は大丈夫だろうか、と心配になりましたが、ある店で、貝から出したばかりのくず真珠を桶に山盛りにして加工しているのを見て、まだ多くは無事のようだと一安心。 展示場のような施設に移転した珍珠城には多数の店があり、相変わらずたくさんのネックレスが陳列されていました。 ここのパールは淡水パールで、粒ぞろいの高級品でも5000円(300元)程度。丸くないパールは、驚くほど安い価格です。
 川や湖は、海より簡単に汚染が進むので、汚染するとすぐ、真珠貝を養殖できなくなります。だから、淡水パールは環境汚染された場所では生産できない装飾品です。 蘇州の淡水パールは経済を潤すとされ、観光誘致の目玉にしようと展示即売場が造られました。
 淡水パールにもピンクや黒い色があり、輝きや魅力もあるのに、本真珠より低い価格です。蘇州の真珠養殖が、 河川・湖沼を守る意識を作り出していることを考えれば、本来の価値はもっと高いといえます。
 一方、日本で若い女性が好んでつけているのがパール風のプラスチック。環境保護と無縁な装飾品で、一見するときれいですが、味わいに欠け、飽きがきます。 貴金属も、掘り出したり、精錬するときに環境を汚染するものが多いので、ほとんどは環境汚染型の装飾品になります。 安い淡水パールに貴金属は使われておらず、天然石と組み合わせたさまざまなデザインがあります。 一部に、色を付けたパールや、人工素材を使ったネックレス、ブレスレットもありますが、装飾品ですから少しなら許容していいでしょう。
 経済開発が進む中国で、環境を守らねば儲からないと思わせる装飾品は貴重な存在だと、私は思います。


2008年4月1日発行 No.228より

安全基金の活動と考え方(29)「考えは刻々と変わる」

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