代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「合理性と意地」 安全基金の活動と考え方(21)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一

 事務所を建築すると決めたらすぐ、建築士の相根昭典さんに相談しました。
相根さんとは、10年前に『健康な住まいを手に入れる本』を一緒に制作したので、可能な限りエコ素材を用いることは、2人の間では当たり前でした。
相根さんは「プラスチック」をすべて排除しようとこだわり、私は「塩ビ」「塩化ビニリデン」だけ排除しようとしているので、何も問題は起こりませんでした。
窓からの熱損失をなくすためペアガラスを採用し、それに樹脂サッシを加えることが提唱されています。しかし、樹脂サッシは塩ビ製なので、私たちは障子を採用しました。障子は夏の陽射しをさえぎるので、猛暑の中で、その良さを体験しています。
もちろん現代社会では、塩ビの完全排除はできません。しかし、十分に排除できた建物になったと思っています。
新事務所の土地は、計画道路の制限があったので、当初はコンクリートの外断熱と地下室に、木造を組み合わせる予定でした。
残念ながら予算が足らず、すべて木造で、地下室は8畳、と小さくしました。
そして、構造をシンプルにし、木を風雨にさらさないよう金属で覆った建物にしたのですが、これについては、2人の専門家の影響を大きく受けています。
阪神大震災以降、会員で一級建築士の山賀康弘さんから、シンプルな構造の建物が地震に強いと聞いていました。
木材専門家の見尾貞治氏からは、木は湿気と風雨に弱いので、保護が必要とも聞いていました。
それで、建物は、シンプルな構造にし、湿気と風雨対策をとることにしたのです。
計画が具体化すると、相根さんは想像もできないほど、建築物の丈夫さにこだわっていることがわかりました。それは正しいと思うのですが、建物予算が、事務所を丈夫に造るために取られていきます。
だから、井戸や貯水タンクなどの「遊び」施設を作ることはできませんでした。
ともかく予算不足。こだわるのは建築物のみで、合理性を最優先しました。
相根さんは、センスのいい自然派の建築家ですが、私の意向で、完全に長方形の建物になり、風雨にさらされる部分は、すべて金属をかぶせました。
こんな建築物は、相根さんのセンスとはほど遠いのですが、「合理性」はあるので、異論は出ませんでした。
合板は、接着剤や防虫剤が使われていて危険なことと、20年以上たって接着剤が老化すると、家の強度を保てなくなります。それで、意地でも合板は使いませんでした。
現在の基礎には、プラスチックやゴムで通気層を作るようになっています。しかし、20年もたてば酸化してもろくなるので、地震でつぶれれば、床が2〜3センチ波打つことに。新事務所は特殊ステンレス金具を使ったので、不都合は起こりません。
こんな小さな意地が評価される時代になるまで、生きていたいものです。


次回は「生活の快適さを追求する」の予定です。


2007年9月1日発行 No.221より

レポート『本物のエコロジー建築』(新事務所建設の記事掲載中)

安全基金の活動と考え方(22)「生活の快適さを追求する」

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