代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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悪魔でも考えない「10万年」 安全基金の活動と考え方(130)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 8月31日、原子力規制委員会は原発の廃炉で出る放射性廃棄物のうち、放射能レベルが高い原子炉の制御棒など「L1」の処分の基本方針を決定しました。
 コンクリートなどで覆って、地震や火山の影響を受けにくい場所の70mより深い地中の岩盤内に埋め、電力会社に300〜400年間管理させ、 それからは国が引き継いで、少なくとも10万年間は掘削を制限し、保管するというものです。

 原発の廃炉で出る危険な放射性廃棄物は、4種類に区分されています。
・使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」、「L1」
・原子炉圧力容器の一部など危険レベルが少し低い廃棄物「L2」
・周辺の配管などの廃棄物「L3」
 これらの処分方針は、高レベル放射性廃棄物は地下300mより深くに10万年以上、L2は地下十数m、L3は地下数mです。
 大手電力会社でつくる電気事業連合会は、原発57基が廃炉になれば、L1は8千トンになると試算しています。 すでに廃炉作業が始まっている日本原子力発電の東海原発では、最も放射能レベルの低いL3は、原発の敷地内に埋めることを今年1月、地元が容認しました。

 しかし、これ以外に、受け入れが決まったケースはありません。L2やL1の受け入れを容認した自治体は、もちろんありません。
L1の処分地は国が、年内にも候補となる「科学的有望地」の地図を示す方針ですが、受け入れる自治体が現れる可能性はほとんどありません。

 私は、L2、L3を廃棄する筋書きは次のようになっていて、推進派の暗黙の了解になっていると推定しています。
 廃炉で出たものは原発の敷地内に置き、破綻寸前になったら、再処理施設を受け入れた青森県が、 高額の補助金をもらってL3を受け入れ、さらに高額の補助金をもらってL2まで受け入れる、という筋書きです。
残りは「10万年」というのですが、こんなことに責任を持てる人はいません。

 10万年前の日本列島は、島ではありませんでした。今の朝鮮半島、サハリン、カムチャッカ半島と陸地でつながっていて、日本海やオホーツク海は湖でした。
 9万年前に阿蘇山が大爆発し、九州の形が変わりました。 5〜6万年前に箱根火山が大爆発して陥没し、箱根は現代に近い地形になりました。
 2万9千年前に鹿児島の姶良(あいら)火山が大爆発し、陥没した場所が鹿児島湾になって、火山としては桜島が残っています。
 文章に書くなら「10万年」は簡単です。
 しかし、10万年後は日本列島の地形が大きく変わり、その間に大きな火山爆発が何度もあるので、ずっと安全に保管するのは無理。
 高レベル放射性廃棄物とL1を受け入れる自治体はないので、廃炉になった原発に置いておくのでしょう。ウランがなくなって全原発が止まるころには、 今の関係者は死に絶えているので、放っておく算段に見えます。

 「悪魔」でも10万年の悪事など考えません。原発で儲けている人は、悪魔より人格が劣るといえます。

2016年10月1日発行 No.330より

安全基金の活動と考え方(131)『広島、長崎は何をしている!』

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