代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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優先順位をつけて提案する「唯比較論」 安全基金の活動と考え方(11)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一

 「比較できないと、自分と他人の区別ができないので、自分の存在を認識できなくなる。すると、ここにあるすべての存在を理解できなくなる。だから、『比較』はすべての根源である」
 こんなふうに野口体操の創始者、野口三千三先生は、よく話していました。
 野口体操では、どんな体操も必ず何度か行います。単純に上半身をぶら下げる「ぶら下げ」でも、その「感じ」が毎回異なるので、「違い」を感じて楽しむわけです。
 野口先生は「唯比較論」と呼んで、体操だけでなく、鉱物の標本もネックレスも鈴も、常に2つ以上を用意して比較しました。
 その影響で私も、何か問題点を指摘するとき、いくつかを比較するようにしています。
 
 商品の場合は、まずいくつも集めますが、それよりも重要なのは、どのように比較するかです。
 国や業界の基準は頼りにならないことが多いので、その物の特性を考えて比較方法を決めねばなりません。
 野口体操流に言うと、その「物」と時間をかけて付き合っているうちに、その「物」がここをこう比較してくれ、と語りかけてくるわけです。
 形式に従って比較すると、問題点が浮き上がってこないどころか、的を外して比較したために誤解を生じることがあります。現代社会では、むしろ、そういうことの方が多いと思います。
 
 掃除機の商品テストもそうです。
 日経新聞(10月7日付)の「NIKKEIプラス1」が掃除機をテストしています。掲載写真では少なくとも5人のテスターがマスクしてテストしているのに、テスト項目に「排気のきれいさ」はありません。
 これまでに『月刊消費者』、『暮らしの手帳』、『たしかな目』も掃除機をテストしていますが、やはり「排気」はテストしていません。
 特別に排気が汚い「水フィルター掃除機」が批判されただけです。
 なぜ、健康に大きな影響を与える排気のきれいさに触れないのでしょうか。
 理由の一つは、比較できる「基準」がないからだと思います。
 批判されなかったので、家電メーカーは排気を改善せず、「吸込仕事率」という健康とは無関係な指標で競争しているのです。
 それがエスカレートして、「吸込仕事率」は“無意味な”指標になっていることを、巻頭の特集でお知らせしました。
 日本の家電メーカーの「横並び意識」は、始末に終えないほどひどいのですが、これは日本人の体質の一部でもあります。「横並び意識」をなくすことを考えるより、うまく利用して、すべての掃除機の排気をアっという間にきれいにさせたいと願って、私は批判を続けているわけです。
 韓国やEUでは、排気に新基準ができる可能性が高まっています。新基準ができれば、日本の掃除機の排気を、韓国・EUの基準と比較するつもりです。そのあたりで日本の家電メーカーは、横並びで改善策を取らねばならなくなるでしょう。

 次回は「比較・消費者運動論」を書きます。


2006年11月1日発行 No.211より

安全基金の活動と考え方(12)「比較・消費者運動論」

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