国際会議
コーデックス(国際食品規格)プレスリリース:No.8

■5月14日 表示部会第4日目:今回の表示部会のまとめ



目次

1.  今回の表示部会の要点
2.  重要な議論の解説
2.1●「遺伝子操作食品表示」今年も合意せず
2.2●有機食品生産に重要な決定:木材の化学物質処理は禁止
2.3●トレーサビリティの議論打ち切りは
どのような意味を持つのか?
2.4●原料原産地の議論は困難に


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1【今回の表示部会の要点】
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●2004年5月10日ー14日、カナダ・モントリオールにて、コーデックス(国
際食品規格)委員会の表示部会が開かれ、遺伝子操作食品の表示、有機食品、
原産国表示などについて、参加者249人(48か国、EC、32国際NGO)による話
し合いが行われた。

今年こそはと進展が望まれていた遺伝子操作食品の表示は、今年も、欧米の
対立の溝は埋まらず、合意されることはなかった。

有機食品に関しては、炭、灰などの木材製品を土壌改良の目的で使用する場
合、この木材は伐採後は化学処理をされていてはならないという、重要な決
定がされた。今後、日本でも有機JASに反映されていくこととなるだろう。

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2.重要な議論の解説

今回の表示部会の議論で、重要と思われる点を少し解説をします。

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2.1 ●「遺伝子操作食品表示」今年も合意せず
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遺伝子操作食品の表は、19931年の第22回表示部会から議論されており、世界
中の消費者が注目していた。しかしながら、アメリカ・カナダ・アルゼンチ
ンなど表示に消極的な国々と、ヨーロッパ諸国をはじめとする表示に積極的
な国々の溝は、大きく、今年も合意に至ることはなかった。

アメリカ、カナダが妥協しなければ、この議題はこれ以上進まない。アメリ
カ、カナダの消費者が遺伝子操作食品の問題にもっと興味を持ち、表示を強
く政府に求めていくことでしか、状況は変わらないと思われる。

この会議の間にも、カナダのニュース番組では、モンサント社が遺伝子操作
小麦の販売を止めたこと、ケベック州の消費者の95%が遺伝子操作食品の表示
を義務付けて欲しいと感じていることが、繰り返し報道されている。北米の
消費者団体と協力し、さらに遺伝子操作の反対運動や、表示を求める動きを
盛んにしていきたいと思う。


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2.2●有機食品生産に重要な決定:木材の化学物質処理は禁止
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●今回の表示部会の中で、私が一番重要(日本にとって影響が大きいという
意味で)のは、有機食品のガイドラインの「おがくず」などに関する使用条
件の変更だと考えている。

●これは、肥料・土壌改良に使用する「おがくず、バーク、木屑」「木灰」
「木炭」に使用される木材は「伐採後、化学的処理を行われていてはならな
い」というものだ。

今回の結論は、今後、木材に関する議論(シックハウス症候群や、畜舎や保
管場所に使用される木材に関する議論)に発展するものと思われ、非常に大
きな成果といえる。

日本の有機食品生産者のなかには、木材製品の化学処理まで把握しないまま、
おがくず、灰、炭などを使用している場合があることが、予測される。これは
、コーデックスの基準違反となることから、今後、有機生産者、有機登録認定
団体は、木材製品を使用する場合、伐採後は化学処理がされていないことを確
かめ、これを証明できなければならない。まずは、この問題に関する周知徹底
が必要だ。

木材に関するJAS規格との関連を明らかにすることも、今後の日本の課題とな
る。
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2.3●トレーサビリティの議論打ち切りはどのような意味を持つのか?
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●表示部会でトレーサビリティの議論を打ち切ることが合意された。これは
トレーサビリティが表示とは無関係であることをしめすのではなく、単に
他の部会(食品輸出入検査認証制度部会、一般原則部会)の議論を待ち、
今後必要であれば、話し合いを再開するという意味である。

●2004年5月3-7日(この表示部会の直前)に開かれた一般原則部会で、
「トレーサビリティ/プロダクト・トレーシング」の定義が以下のように合
意されたことは、今後のコーデックスの「トレーサビリティ」に関する議論
に大きな影響を与える。

Traceability/product tracing:the ability to follow the movement of
food through specified stage(s) of production, processing and
distribution.

「トレーサビリティ/プロダクト・トレーシング:生産、加工、流通の特定
の段階の食品の動きを追うことができる能力。」

●この定義がきちんと決まったことも、また、表示部会でとりあえずは議論
を打ち切りにしたことも、ECの周到な計画と、交渉能力によるものと考えら
れる。今後の、トレーサビリティの議論に注目したい。

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2.4●原料原産地の議論は困難に
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●日本では注目の話題となっている「原料原産地表示」。コーデックスでは
、話し合いを続けることが困難になった。

「うなぎの蒲焼」のうなぎは中国産なのか、国産なのか、
「アジの干物」のアジはどこからやってきたのか、

加工食品がどこで加工されたかだけでなく、原材料がどこから来たのか、知り
たいと考えている消費者は多い。日本ではこの期待にこたえて、うなぎ加工食
品、干物などを含め週種類の加工食品にこの「原料原産地」が義務付けられて
いる。

日本だけでなく、世界各国でこの消費者の要求は高まっており、そのため、原
産地表示に関する規格の見直しをしたいというという提案がされていた。しか
し、アメリカ、カナダ、途上国などが、これに反対。

話し合いを続けるかどうか合意に達しなかった。日本は、独自路線で日本の消
費者の望む表示をしていくしかない。輸入品にまで原料原産地を義務付けるこ
とは、貿易障壁とみなされる可能性もあり、難しくなりそうだ。


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┃ひ┃と┃こ┃と┃ふたこと、みこと、、、、

●5月8日から8つのプレスリリースを発信しましたが、今回がこのコーデッ
クス表示部会、モントリオール現地から速報の最後となりました。時差と
戦いながらの初めての挑戦でしたが、いかがでしょうか。ぜひ、ご感想、解
釈の違い、ミスなどございましたら、メールをいただければと思います。

●水曜日に日本政府と夕食を一緒にしました。私たちが99年に初めてコーデ
ックスに参加した頃との大きな違いは、日本政府代表団が、農水省、厚生労
働省のわけ隔てなく、非常にまとまっていること。省庁間のコミュニケーシ
ョンがよく行われているようで、とてもよいことだと感じました。それから、
有機食品に関しては日本から全く発言がなかったのは残念でしたが、その他
は、わかりやすい発言が見られるようになりました。今後も、頑張って欲し
いです。日本政府!

●日本の食を守るには、コーデックスへの積極的な参加をはじめとする国際
的な視点で活動することは欠かせないと感じます。もっと、もっと、政府と
企業と消費者団体が、日本国内でコーデックスへの対応をきちんと話し合い、
役割分担をして、策略を練って、コーデックスに参加することが必要である
と思います。

●、、、ということで、その第一歩になるように、7月16日(金)の13:30
から、「コーデックスシンポジウム」を食糧会館(東京・千代田区麹町)で
主催します。日本で一番コーデックスに詳しい山田友紀子氏、厚生労働省の
方、私どもIACFOの会長ブルース・シルバーグレード氏などを交え、今後の
コーデックスに関して考えていこうと思います。詳細は、またホームページ
に載せますので、ぜひ、参加してください。

●最後に、、、私ども日本子孫基金、チェンジコーデックス市民の会のコー
デックス活動は、皆様の寄付金で行っております。寄付をお寄せくださった
方々に御礼申し上げます。私がコーデックスに情熱を持って、こうして参加
し続けられているのは、本当に皆様のおかげです。ありがとうございます。

また、今後もコーデックス活動の寄付を募集しております。寄付の方法はこ
ちらにございます。
http://tabemono.info/kokusai/donation.html

私どもがこのコーデックス活動を引き続き行えますように、ぜひ、ご寄付を
お寄せ下さい。よろしくお願いいたします。


(熊澤 夏子)


カナダのおまけ写真



農場でのんびりする牛


子牛は私たちにびっくり


犬はきょっとん。


土地が広いので、有機農家にはプールがありました。


レセプションはこんな会場で開催


左はグリーンピースのブルーノさん。
真ん中はIFORMのダイアン・ボーエンさん。


会議中に、食品のパッケージを片手に熱弁を振るうブルースさん。