国際会議
コーデックス(国際食品規格)プレスリリース:No.6


■5月12日 表示部会第3日目

遺伝子操作食品、パーセント表示、原産国表示、トレーサビリティ、誤解を招く表示


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┃目┃次┃

●本日の会議

●会議の内容 
       ・遺伝子操作食品の表示
              →来年に議論持ち越し

       ・原材料数量表示(%表示)
              →来年に議論持ち越し、作業部会開催

       ・原産国表示
         →話し合いを続けるかどうか合意せず、総会にかける

       ・トレーサビリティ
              →検討を打ち切り

       ・誤解を招く表示
              →検討打ち切り

●日本政府の様子 (消費者に好意的な発言をしてくれました!)

●明日の予定

●ひとこと  (私の個人的な感想です。)

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┃本┃日┃の┃議┃題┃2004年5月12日

●表示部会第3日目(実質的な会議の最終日)

●議題

議題6 遺伝子組換え食品の表示
議題7 包装食品の表示に関する一般規格の修正案(原材料数量表示)
議題8 原産国表示についての検討
議題9 食品表示およびトレーサビリティの検討
議題10 誤認を招く表示についてのディスカッションペーパー
議題11 その他(広告について)次回の会議

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議題6 遺伝子組換え食品の表示・昨日の続き
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【結論】

●来年の表示部会に持ち越し。

●来年は丸1日話し合いをすること、現在、出されている素案を1文、1文
すべて話し合うことが確認された。

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┃会┃議┃の┃内┃容┃

●今年も「どう議事をすすめるか」という議論に終始し、実際の素案は1文
も話し合われることはなかった。一言で言うと、進展なし。

●本日は朝7時から一部の国が集まって作業部会が行われたが、EC諸国がす
べてこの作業部会の参加を拒否。集まったのは、遺伝子操作表示に消極的な
アメリカ、カナダなどの国とバイテク産業関連NGOだけ。

●昨年と同様に、今回と次回の表示部会の間に作業部会を開催することが提
案されたが、これも、EC諸国が拒否。

作業部会は、多くの国が参加できない可能性があり、またNGOの参加をも制限
される。そのため、昨年開かれた作業部会の話し合いの結果を尊重して次回
の表示部会で話し合うべきというECの判断だ。(IACFOもこのECの考えに賛成。)

●結局、来年にすべて持ち越されることになった。

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議題7 包装食品の表示に関する一般規格の修正案(QUID:原材料数量表示)
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【結論】ステップ3のまま、来年、作業部会を開き、話し合いがすすめられる。
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┃議┃題┃の┃背┃景┃

●QUIDは、IACFOの提案により検討が進められている議題である。

現在コーデックスでは、原材料を表示する際、重量の多い順にリストアップ
することが決まっているが、QUIDはそれに加え、実際にどのくらいの割合で
その材料が入っているのか表示するというものだ。例えばいちごジャムであ
れば、「いちご(60%)、砂糖(30%)、レモン果汁(5%)、ペクチン」な
どである。タイ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス及びEUでは
何らかの形のQUIDが現在すでに行われている。

昨年の第31回表示部会(2003年)では、コメントや会場で発せられた意見を
もとに議論が進められたものの、ステップは3のままになり、今回、第32
回でも引き続き、話し合いを続けることとされた。

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┃会┃議┃の┃内┃容┃


●消費者のための情報として、何らかの%表示をすることを支持した国は
タイ、日本、ノルウェー、ドイツ、イギリス他、ECなど。昨年よりも増
えたといえる。

●どのような場合には、%表示をすべきなのか、また、これを義務付ける
のか、各国の判断にまかせるのか、などが議論された

●IACFOはこの議題の担当であるブルース・シルバーグレード氏が、背景
などを説明する発言を行い、さらに詳細に渡って話し合いをするために
作業部会の開催を求めた。

●意見はさまざまであることから、ステップ3のままにし、来年、表示部
会の開催の直前に作業部会を開くことになった。IACFOの作業部会の開催の
要求が通ったことは喜ばしいことだ。

●作業部会の日時などは、来年はこの表示部会がマレーシアで行われるこ
とから、マレーシア政府(今年は欠席)と相談してから、近々に決めるこ
となった。

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議題8 原産国表示についての検討
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【結論】表示部会で話し合いを続けるのかどうか、合意に達しなかった。
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┃議┃題┃の┃背┃景┃

●原産国の表示に関するコーデックス規格は、わずか2文しかない、不十分
なものである。

●BSEの発生などにより、特に加工食品の原産国表示は、加工された場所だ
けでなく、原材料の原産地まで知りたいという消費者が増えてきた。これは
日本も例外ではなく、うなぎの蒲焼が静岡産となっていても、うなぎがどこ
の国から来たかが書いていなければ、本当の「国産うなぎ蒲焼」を食べられ
ない。そこで、JAS規格では、うなぎ加工品、干物などに、原料の原産地まで
表示することを義務付けた。コーデックスでは、まだこのような規格がない
ことから、イギリスなどを中心に、原産国表示の見直しが求められていた。

●しかし、この見直しに反対する国も多く、昨年第31回の表示部会で、検
討打ち切りが決定した。その後に行われた第26回総会で打ち切りを報告し、
総会に承認を求めたが、イギリス、日本、ノルウェー、フランス、スウェー
デン、トルコ、国際消費者機構(CI)と食品国際消費者機構(IACFO)が検討
をすることを再び求めた。合意がなかったと判断され、もう一度今回、今後
どうするか検討する
ことが求められた。


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┃会┃議┃の┃内┃容┃

●議長から「原産国表示について検討を打ち切るのか」「表示部会の新しい
議題として原産国表示を話し合うこと許可をコーデックス総会に求めるのか
どうか」の意見が問われた。

●日本政府は日本では干物などに原材料原産地表示を義務付けていること、
原産国表示に関しては消費者が多くの関心をよせていることなどを述べ、
原産国表示の話し合いを続けることを支持した。

●IACFOも、日本を支持し、すでに現在の原産国表示では、消費者は表示を
誤解しているというケースが出てきており、原材料原産地を含めて、原産
国表示を話し合うことは重要であることを述べた。

●アメリカ、カナダ、途上国などが、原産国表示の話し合いを続けることに
反対し、日本、ヨーロッパ、IACFO、CIなどが賛成。ほぼ、まっぷたつに意見
がわかれ、「合意なし」という結論になった。7月の総会にかけられ、今後
どうするか検討される。

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議題9 食品表示およびトレーサビリティの検討
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【結論】表示部会では、当面の間、トレーサビリティに関する議論を行わな
い。他の部会での話し合い結果を待つ。

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┃議┃題┃の┃背┃景┃

●トレーサビリティに関しては、食品輸出入検査認証制度部会、一般原則部
会、バイオテクノロジー応用部会など、コーデックスで複数の部会で話し合
われている。昨年の表示部会では、他の部会での進展を考慮に入れながら、
話し合いを続けることが合意された。


●2004年5月3-7日(この表示部会の直前)に開かれた一般原則部会で、
「トレーサビリティ/プロダクト・トレーシング」の定義が以下のように合
意された。

Traceability/product tracing:the ability to follow the movement of
food through specified stage(s) of production, processing and
distribution.

「トレーサビリティ/プロダクト・トレーシング:生産、加工、流通の特定
の段階の食品の動きを追うことができる能力。」

この定義は、総会にかけられ合意されれば、コーデックスのマニュアルに
納められる。

●本年度は、この一般原則部会の定義や、その他のコーデックス部会がト
レーサビリティに取り組んでいることを受けて、表示部会としてどう取り
組むかが議論された。

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┃会┃議┃の┃内┃容┃

●発言を行った多くの国が、定義が一般原則部会で決まったことを歓迎し、
この総会での採択を待つこと、また、食品輸出入検査認証制度部会などの
部会での話し合いの結果がでるまで、表示部会では話し合いを進めないこ
とを支持し、合意された。

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議題10 誤認を招く表示について
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【結論】誤解を招く表示については、話し合いを打ち切ることとなった。
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┃議┃題┃の┃背┃景┃

●世の中には特に違法ではないけれども、消費者の誤解を呼ぶ表示というも
のがたくさんある。たとえば、赤・白・青のトリコロールのパッケージは、
フランスの国旗を発想させるため、赤・白・青の模様のパッケージのチーズ
を見ると、消費者は「フランスのチーズかな」と思ってしまう。「国産ソー
セージ」という表示があると、肉も含め原材料もみんな国産だろうと思って
しまう消費者が多いが、実は国内で加工されただけで、肉は輸入品のものが
使われていたりする。このように、誤解を招く表示について話し合おうとい
うのがこの議題である。

●一見、消費者のために話し合うべき議題のようだが、この議題は、第27回
表示部会(1999年)にてアメリカが提案した議題である。消費者NGOや遺伝子
組換え食品の表示を必要だと考えている国々の間では、アメリカが遺伝子組
換え食品の表示を阻止するために提案した策略なのではないかと言われてき
た。

●第28回部会(2000年)では、アメリカが検討ペーパーの作成にもう少し時
間がかかるとして、話し合いが行われなかった。

●第29回(2001年)では時間が足りず話し合いができなかった。

●第30回(2002年)にてようやく議論が進んだが、そこでそれまでアメリカ
に対し懐疑的でこの議題を話し合うことに反対だったヨーロッパ諸国が、一
転して議論の継続支持を表明。原産国表示などで誤解を招く表示があるとし
て、検討の継続を支持する声があった。そのため各国から表示の事例を集め
検討する作業部会が設置された。作業部会はEメールで行われ、議長はオース
トラリアが務めた。

●第31回(2003年)では、その作業部会の報告書について議論が進められ
た。このトピックについて話し合うことに賛成・反対、両方の意見が出て合
意に達しなかったため、今回も引き続き話し合いがされることとなった。

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┃会┃議┃の┃内┃容┃

●誤解を招く表示に関して、議論を続けることを支持する国は少なかった
ため、この議論を打ち切ることとなった。

●この議題がアメリカの策略(「遺伝子操作の表示は消費者に誤解を与え
る」として遺伝子操作食品の表示をなんとか阻止しようという策略)だった
のかどうかは、会議の中ではあからさまにはならないため、真意のほどはわ
からない。しかし、私たちも含め、これをアメリカの策略と考えている国、
NGOは多い。アメリカの策略は失敗に終わった!!

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議題11 その他(広告)について
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●コーデックス規格の中で、「広告」に関するガイドライン、規格などを
作成しているのは、この表示部会だけである。広告は、表示部会の権限で
話し合いをしてよいのかどうかという点について議論が行われた。広告の
定義が必要だという意見が出された。

●広告の扱いに関しては、産業界にも消費者にも大きな影響を与える可能
性があるので、慎重な議論が必要である。

●カナダがディスカッション・ペーパーを作成しこれを配布し、来年の表
示部会で話し合いを行うこととなった。

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┃日┃本┃政┃府┃の┃様┃子┃

●「原材料数量表示」と「原産国表示」について発言

 IACFOと意見をほぼ同じくする意見を言ってくれたので、助かりました!
 Thanks!!

 両方とも農水省の柄澤氏が発言。具体的な食品の例を引用した、とても
 わかりやすい発言でした。

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┃明┃日┃の┃予┃定┃

●明日は議長団が議事録を用意するため、会議はお休みです。
金曜日に議事録が英語・スペイン語・フランス語で出され、この議事録
の採択が行われます。

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┃ひ┃と┃こ┃と┃ふたこと、みこと

●予測されていはいたものの、、、、
今年も遺伝子操作食品の表示は、進展がありませんでした。消費者が表示
を求めていることは確かな事実なのに、、、歯がゆい思いです。

●本日、私は原産国表示について話し合いをすべきことを強調する発言を
しました。今回の表示部会では、有機の作業部会での発言を入れると、7
ー8回(回数ははっきり覚えていませんが)しました。発言をすると、
その後のコーヒーブレイクや、昼休みなどに、「発言、よかったよ」など
といろいろな人に話しかけられ、話がはずみ、さらにいろいろな情報が集
まってきます。「情報は、自分から出せば出すほど集まってくる」という
現象をこの国際会議で実感しています。

●カナダが議長国のこの表示部会は、これまでずっとカナダ国内で行われ
て来ましたが、来年はマレーシアで行われます。戦争との関連で、イスラ
ム教国に行くことをためらう参加者もいるようです。昨年も戦争とSARSの
影響でコーデックスの参加者は極端に減ってしまいました。今年は、少し
回復しているものの、改めて、平和であることの大切さを感じます。


 (熊澤 夏子)