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想定される揺れは?
>>首都直下地震に備えて!『家具を凶器にしない準備を』

「首都直下地震の危険が迫っている」と塩坂邦雄博士が前号で緊急警告。
では、実際に起きたら、揺れの範囲や大きさはどれくらいになるのか。
再び、塩坂氏に伺いました。


塩坂邦雄氏
 工学博士、特別上級技術者(土木学会・環境)潟Tイエンス技師長。
2010年9月に台湾第四原発北側の海岸で活断層を発見。
台湾新聞各紙、テレビで注目を浴び、2014年には原発敷地内に危険な断層を見つけて、廃炉決定への足掛かりをつくった。


広大な激震域


――  自宅がどのくらい揺れるのか不安です。今度の地震の規模を教えてください。

塩坂  地震は、地下の岩盤が破壊されたときに起きます。 規模は破壊される長さに比例しますから、最悪、銚子〜前橋間で全部破壊される右横ずれ断層が起きれば、マグニチュード(M)8.0以上になってしまいます。
東の方だけか、北の方か、銚子〜前橋間の半分の破壊ならM7くらいです。
どの程度の規模になるか、それはまだわかりません。
深さ50〜60㎞ぐらいのところで起きると考えられますので、仮に深度60㎞で、銚子〜前橋間が破壊されたとすると、 断層をまたいで南北に60㎞ずつ、120㎞の範囲が1.5倍強く揺れます。下の地図に書き込んだ2本の点線の間です。

――  東京だけでなく地震動の激しい地域に、関東全域がすっぽり入るとは、驚きです。

想定される被害区域

地盤によって違う揺れ


――  地震動が激しい地域でも、地盤によって揺れ方が違うということですか?

塩坂 まな板に乗ったコンニャクをイメージしてください。 薄くスライスされたコンニャクより、分厚い方が、まな板を揺らしたときにブヨブヨ震えるように長く揺れますね。 それと同じことで、地震によって伝わるエネルギーは同じでも、受ける側が固いか、軟らかいかで揺れ方が違ってきます。 つまり、軟弱地盤では振動が増幅されて、被害が大きくなります。 上の地図の白い部分は、「沖積(ちゅうせき)平野」と言います。10万年前は海だったところで、そこに軟弱な泥や砂層が厚く積もってできた平野です。 地下水面が高いので、揺さぶられると液状化します。 2011年の東日本大震災では、長周波地震動で千葉県浦安市が液状化現象で大きな被害を受けました。 軟弱地盤では地震波が増幅されますから、建物固有の周期と同調すると、耐震を施した戸建て住宅でも倒壊します。

マンションはどうなる?


――  マンション、高層ビルはどうですか?

塩坂 地盤に合わせてきちんと工事をされているかどうかですね。
下の図のように、本来は固い地層に届く杭打ちがなされているはずです。
ところが、2015年、横浜のマンションが、データの改ざんまでするというずさんな杭工事によって傾斜していた問題が、大きく取り上げられました。 同じようなことが他でもあるかもしれません。
マンションで異常を見つけるには、1軒だけではなく、建物全体で見ることです。 ひび割れも、各階の同じ場所で出ているか、どう出ているかを見ます。
地盤の一部が沈下した場合、土台に近い1階に影響が出るので、1階で確認します。廊下を歩いてみて、ピンポン玉を置いて転がるかどうか試してみるといいですね。 傾きの影響は、最上階の方が出やすいので、錘が下がった糸(「下げ振り」など)を吊して、建物が傾いていないか、確認します。
高層の建物で気を付けていただきたいのは、横揺れしても倒壊しないように免震設計されていますが、そのため揺れが大きくなることです。
住宅の場合、室内の家具を厳重に固定しないと、家具に押しつぶされます。
高層ビルに入っている事務所の場合、対策が取られているのか心配ですね。

免震設計でも、縦揺れについては考慮されていません。縦揺れと言っても、単純な揺れではありません。 今度の地震では、右に回転するように浮き上がり、バンと落ちます。
高層の建物が10pでも上がって落ちたら、ライフラインは当然、断ち切られます。
1階は地震の際に構造的に危ないと言えますが、地震波と建物の固有振動が重なって、たまたま4、5階がつぶれたこともあります。

現在の東京の東西断面

台地の谷に要注意


塩坂 地図の少し濃い色のところは、台地(洪積(こうせき)台地)です。 武蔵野台地、大宮台地、下総台地、猿島台地、筑波稲敷台地などがあります。
山地や丘陵、台地は、地表から比較的浅いところに固い地盤があるので、地震の揺れは、それほど増幅しません。 ですから、大まかに見ると揺れが少ない、つまり、被害が少ない地盤といえます。 しかし、大宮台地、武蔵野台地などの台地には、多くの河川が流れ、それぞれ深さ数mから10m程度、場所によっては20mを越える谷を刻んでいます。 その谷に堆積物がたまっている場所を谷底(こくてい)低地といい、軟弱地盤です。例えば、渋谷は目黒川の谷底です。

――  安全基金の事務所の地盤診断をしていただいたとき、ここは大丈夫だけど、 わずかの距離しか離れていない駅の近くは軟弱地盤と言われました。

塩坂 事務所から駅に向かうと、150 mほどで坂になり下りだしますね。 下るというのは、川が削った証拠なのです。
削った底が駅前の道路となります。その道路付近は地盤が悪いのです。

――  その道路の手前で現在建築工事が行われているのですが、 水が湧いてくるので工事を始めて半年も経つのに、まだ土台工事で苦労しています。

塩坂 そういうところは地下水が揺れるので、液状化します。 坂を上がりきったところは削られる前の地盤だから、いいのです。
このように、わずかな距離で地盤は変わります。
大まかな地盤は、前ページの地図の通りですが、実際には、「〇〇町〇丁目〇番地」と限定し、 その場所を土地条件図などで判断しないと、どの程度安全か、危険なのか、診断できないのです。

――  塩坂さんが読者さんに地盤診断してくださることを前月号で紹介しました。 電話でお願いできて、費用1万円で確実なことがわかるので安心と好評です。これからもよろしくお願い致します。

ガス管の破断がこわい


――  縦揺れの高低差はどれほどですか?

塩坂 それは難しい質問ですね。今度起きる地震は内陸型の横ずれ断層なので、 今まで私が見聞きしているなかでは、富士川断層が最大です。これは水平に3m、垂直方向で1.5mくらいですが、これは断層の真上の話です。
断層の真上で固いところではズレがそのまま現れますが、堆積物が厚いので、断層の上でも地上には、雁(かり)が飛んだような「雁行亀裂(がんこうきれつ)」が入ります。

――  上下振動でライフラインは切られますか?

塩坂 ライフラインは、変形に耐えられるように設計されていないので、間違いなく破断されます。
水道管の破断は水があふれるだけですが、ガス管が怖い。漏れたら引火して火事が発生しますからね。
電話、電気、ガス、上・下水道などのライフラインは、地下に埋設された「共同溝」によって、電話局間、変電所間、浄水場間等を結ばれています。これも破断します。

断層の上は揺れが大きくなる


――  関東にある活断層も動きますか?

塩坂 活断層だけが問題なのではなく、断層は死んでいようが生きていようが、 地下に埋もれて知られていない断層でも、外部からの力が加わったら、その上の揺れは他の所より1.5倍大きくなります。
例えば、洗面器に張った氷に割れ目を入れてから洗面器の側面をハンマーで叩くと、ひび割れの部分がさらに割れていきますね。それと一緒です。
しかも、本震後に動いた隙間を埋めるよう、余震として何度か動きます。

どう逃げるかイメージを


――  昨年12月にNHKスペシャルで『体感 首都直下地震』という番組が放送されました。
想定M7.3、最大震度7の首都直下地震で何が起きるのか、内閣府中央防災会議作成の被害想定に最新の研究成果を加えて被害の全貌を紹介したという、 悲惨な被害がよくわかる番組でした。この中で、東京・江東区のゼロメートル地帯で堤防が決壊したときの被害も取り上げられていました。

塩坂 それは当然考えられることです。この地震による津波はありませんが、 堤防が決壊すれば、水没の被害は広範囲になるでしょう。
逃げるといっても、道路は液状化して車は通れません。強固な高層ビルとか、高台に逃げることが必要です。

――  さらに、地下鉄に流れ込む危険性も指摘されていて、不安に駆られました。

塩坂 地震が起きたとき、どこにいてもパニックにならずに、 冷静に判断できるよう、事前に逃げ方や逃げる方向をイメージしておくことです。どういう逃げ方をすればいいか、 家族で話し合ってお互いに確認しておいた方がいいですね。一人一人が自分の身を守ることで、全員が助かる道が開けます。

――  よほど考えておかないと無理ですね。

塩坂 私はいつも自分がどのような地盤状況にいて、どの方角を向いているのか、意識しています。
それには方位がわからないとだめ、北も南もわからないのでは困ります。いつも、自分がどこにいるか意識して、どう逃げるのが合理的か、考えられるようにしてください。

――  内閣府の想定では、死者2万3千人、負傷者12万3千人です。場所が悪いと、生き延びるのは大変ですね。

地震はいつ?


――  丹沢山の近く神奈川県西部で2020年5月以降3回地震が発生していますが、首都直下地震の前触れですか?

塩坂 そうですが、メリメリと押しつぶされ、バリっと割れるその「メ」の始まりです。 長野・岐阜のように頻発しだしたら赤信号ですから、まだ少し時間があります。
その前に、どんな事態が起きるのか、知って、準備おくことが必要です。


月刊誌『食品と暮らしの安全』2020年7月1日発行 No.375 塩坂邦雄氏インタビュー記事全文



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