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月刊誌記事から> 排気を安全にするJIS規格を(2004年12月号 No.188)


JIS規格に問題があった

掃除機が人間に危険な排気を出す理由の一つは、JIS(日本工業規格)が細かいチリを問題にしていないからです。
JISに、「排気試験じんあい」の規格があります。
下の表を見れば一目瞭然で、5μm(=ミクロン)の粒子径が最小単位で、大きなチリ(じんあい)を対象に測定していて、私たちが問題にしてきた0.3ミクロンのチリは対象になっていません。

■排気試験じんあい

粒子範囲
μm
通過量−質量の百分率
        %
5
10
20
40
75
69±5
40±5
12±5
3±5
0
[JIS規格(1999年版)。国際規格のICは一部変更されているが、
5μmから規格が決まっていることは変わっていない。]

表の意味がわかりにくいので、原案作成に協力した日本電気工業会に問い合わせると、「国際規格を翻訳したもの」ということでした。それで、わかりにくい用語が使われているらしいのですが、表の意味は、特定の径の濾過装置を通過させて、残った粒子の量が、重量%で規定されているとのことです。
JISは、国際規格とつながっているので、基準の改善は、国際的なつながりの中で解決していかねばならないといえます。
JISの「じんあい測定装置」項には、「じんあい測定装置は、少なくとも0.5〜10μmの測定できるパーティクルカウンターからなる」とされています。
実際に売られているパーティクルカウンターは、ほとんどが0.3μmまで測定できます。それで「少なくとも0.5μm」と書かれているのかと思ったら、「測定値は5μm以上の実態がある粒子放出を示すべき」とも書かれていました。
微粒子をどう扱うかは、おそらく国際的にも議論が分かれているところなのでしょう。
鼻毛で取れるような大きなチリを除くだけの規格では人間の健康が守れないことは、1970年ごろの公害問題のときには、すでに指摘されていました。大気汚染公害防止管理者の資格をもっている人は、肺の中まで入ってしまうチリが危ないことは常識で、そのサイズのチリを排気に出さないように集塵機を設計していたのです。
ところが、家庭用の掃除機には、カーペットなどから吸い出した危ないサイズのチリを放出できる規格があったので、驚きました。
寺澤政彦医師は、肺の中まで入る0.3ミクロンのチリは喘息を悪化させるので、人の命を危険にさらすと心配しています。
JIS規格を変更する際には、この0.3ミクロンのチリを排気に出さないようにすることが重要なポイントとわかりました。
表に「通過量−質量の百分率」とありますが、これは重量で比較することを意味しています。
重量は、粒子の径が10分の1になると、1000分の1になります。だから、チリの捕捉率を重量で捉えると、大きなチリだけを取る性能になってしまうのです。
JISは、排気の危険性の実態を考慮していない問題のある規格です。
パーティクルカウンターで測定することを基本に規格を改定することがポイントです。そうなれば0.3ミクロンのチリを出さない規格は簡単に作れ、家電メーカーは排気をきれいにせざるを得なくなります。



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※調査対象とした「オキシジェン」は、販売終了となっております。



※最新情報は月刊誌『食品と暮らしの安全』2012年7月号に掲載されています。

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