心消費者庁関連3法が成立
消費者がようやく主人公へ

月刊誌記事から>中村雅人弁護士にインタビュー(No.243)


消費者庁、消費者委員会が、いよいよこの秋に発足。
消費者自身の消費者行政というすごいシステムまであと一歩です。
精力的に取り組んでこられた中村弁護士に伺いました。

聞き手:編集部

中村雅人弁護士:
日本弁護士連合会の消費者行政一元化推進本部長代行。
参院の特別委員会に参考人として出席。
消費者問題の経験が豊富な人たちで固めないと務まらない」と発言、
参院の付帯決議に「委員の任命理由を明確化するなど、
説明責任を果たすよう努めること」の一文が加えられた。
製造物責任法(PL法)制定に尽力するなど、
消費者救済に精力的に活動。東京弁護士会元副会長。
日本弁護士会連合会元常務理事。



編集部 いよいよ消費者庁が設置されますね。

中村  今回、出来上がった組織は日本の行政では画期的なものです。
当初の提案の法律名は「消費者庁設置法」でした。ところが、成立したのは「消費者庁及び消費者委員会設置法」です。
弁護士・消費者の活動で、消費者庁の一部にすぎなかった「消費者委員会」が格上げされ、委員長も委員も、すべて民間から登用することになりました。また、この委員会でやるべきことが、法自体にも附則にも、付帯決議にもたくさん書かれました。
消費者行政の監視機関として関係する行政機関に資料が要求できますし、建議もできます。また、内閣総理大臣経由で各省庁に勧告・報告の要求もできます。

●中身づくりも消費者の手で

編集部 すると、これからの課題は、消費者のために本当に役立つ組織にできるかどうかですね。

中村 そうです。6月4日に設立準備室が、内閣府、経済産業省、公正取引委員会等からの57名で発足しました。さらに、関連省庁からの人員で消費者庁の職員が集められますが、この準備室に消費者は参加していません。
このままでは、官僚の都合のいい組織が出来上がりかねません。そのいい例が食品安全委員会ですね。当初の期待とは裏腹に、消費者の代表も加わらず、消費者の意向が入りにくい組織になってしまいました。その轍を踏まないようにしなければなりません。
この法律の中身は、私たち弁護士会、消費者が提案し、運動し、作り上げてきました。
消費者委員会も、私たちが主導権を持って人員の配置、組織の充実を図れば、消費者自身の消費者行政というすごいシステムを作ることができます。そのための中身づくりがこれからです。

編集部 組織を充実させるとは?

中村 消費者委員会は10名以内ですが、下にいくつかの専門委員会を持つようにしておく必要があります。日本弁護士会の消費者問題対策委員会は製造物責任(PL)法、多重債務など10を超える部会で活動しています。それだけのテーマがあるということです。
消費者庁やほかの省庁がちゃんと動いているか監視する役割があるのですから、あらゆる消費者問題の分野がわかる人たちが、ここに揃っていないといけない。その組み立てをどうするかも、これからの課題です。

●最先端の情報システムを

編集部 消費者庁がスタートして最も重要なのは情報公開だと発言されていますね。

中村 今回の消費者庁設立は、縦割り行政で各省庁バラバラだった消費者行政を、消費者目線で一元化するということですが、情報についても一元化、公開が重要です。
例えば東京都港区のエレベーター事故で市川大輔君が死亡した事件。3年たっても事故原因について何ら説明がありません。役所に聞くと警察が証拠品を持っていったという。しかし、事件解明のための警察の捜査と切り離し、行政機関が被害分析をして、再発防止へ規制することが重要です。
そのためには諸々の情報をどのように集め、どこに情報を置き、誰が調査、分析し、どのように活用し、公開していくか、そのシステムをいま構築しなければなりません。
世界の大企業は、自社製品についての報道、クレーム、事故報告を世界中から集め、どの部品が問題か、いつ製造したものかを分析できる検索ソフトを持っています。その資料に基づき、リコールする製品の判断もしています。そのぐらいの調査システムが必要です。今、国民生活センターが持っている程度のシステムでは、もう対応できないのです。
その上で調査分析し、事故原因を究明しなければ、事故の再発防止はできません。
5月31日に開催の「赤とんぼの会」のシンポジウムでは、この問題で日本の最先端の方たちが集まり、方向性がイメージできました。

●消費者からも情報提供を

編集部 新しい消費者行政機関がスタートして、消費者はどのようにかかわっていったらいいのでしょうか。

中村 事故、被害にあったとき、泣き寝入りしないで、情報を出していただきたい。
消費者センターが各都道府県、市町村に整備されていきます。そこに自分が経験した被害を報告してください。それも、「前に被害に遭った」ではなく、病院で診てもらった、警察で調べてもらった……という公的な“足跡”を残していくことです。「この製品でこのような被害が」というデータが多く集まることで重大な事故を防ぐことができます。
10人の消費者委員会が機能していくには、消費者から風通しのいい情報が集まることが必要です。

消費者行政のイメージ

内閣府ホームページから
消費者行政のイメージ(PDF)

2009年7月1日発行 No.243
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>>「消費者行政を一元化する新組織」への提言(PDF)
>>消費者が守られる社会に(PDF)


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