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止まらないコストアップ
   それでも原発を推進する政府


原発再稼働に向けた安全対策費などのコストが急増しているため、
「原発は最も安い電源」とする政府は、発電コストの見直しをやめ、
2015年以降、電源別・発電コストの試算公表も見送っています。


際限のない安全対策費

 東京新聞が電力11社を対象に、原発再稼働に伴う追加の安全対策費を調査したところ、 2015年の2兆5900億円超から5兆5000億円へと、2倍以上に増加していました。
 東京電力と関西電力の2社の対策費は1兆円を超え、 保有する原発4基すべてを再稼働させた九州電力の対策費も九千億円を上回っています。
 また、新規制基準で必要となった「テロ対策施設」は、再稼働を始めた関電高浜原発3号機、 九電川内原発1、2号機の3基以外では、まだ完成しておらず、その他の再稼働を目指す原発でも、 1基当たり数百億円以上の上積みが必要となっています。
 これらに、今後も増加し続ける原発の廃炉費用や、福島第一原発の汚染水対策費用などを加えると、 原発の発電コストはとんでもない数値に跳ね上がります。


事故でコストは無限大に

 資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループは2015年、電源別の発電コストを比較検証、 その数値を公表しています。
 それによると、2030年モデルプラント試算結果で、原発は1キロワット(kW)当たりの発電コストが10.3円/kWhと、 発電コストの最も安い電源だとされています。
 しかし、これは設備利用率が70%で、稼働年数は40年とした仮定の数値です。 2011年以降は、大半の原発がストップしているので、政府は実際の設備利用率を公表しなくなっています。
 そこで、電源別の発電割合から発電量を推定すると、2010年まで3割ほどを占めていたものが、 2011年以降は3%のため、この10年の発電量は10分の1程度です。コストが10倍になっているのです。
 東京電力に限れば、発電量はゼロなのに事故処理費用が少なくとも16兆円かかる原発の発電コストは無限大といえ、 通常なら破綻します。


政府の計算方法でも高コスト

 原子力市民委員会座長の大島堅一龍谷大学教授が昨年、エネ庁の計算方法に沿って、 再稼働した9基と再稼働申請検査中の14基を対象に原発の発電単価を試算すると「16. 3円/kWh」と、 水力、石炭、太陽光など他の電源の発電コストを上回っていました。
 この他にも、ここ数年、むつ市や柏崎市、敦賀市、玄海町、伊方町などの原発関連施設自治体からの 電力会社に対する使用済み核燃料への課税強化によるコスト高もあります。
 これらのコストも、当然、電気料金に上乗せされ、最終的には消費者への負担増として帰ってきます。


国民負担を増やすだけ

 それらに加え、電力会社の原発負担を減少させるため、 政府は支援策として送電線使用料「託送金」の新たな負担金上乗せ、 再生可能エネルギーや省エネの普及などを目的とした「エネルギー需給勘定」からの借り入れなどの措置を行うとともに、 特定財源である「電源開発促進税」や「石油石炭税」などからの流用も視野に入れています。
 いずれも、国民の税金を税の目的以外に使用する方策で、このような補助金を投入せざるを得ないこと自体が、 原発が高コスト電源であることを裏付けています。
 原発は動かせば動かすほど、国民の首を絞めることは明らかです。
各種世論調査で国民の60%以上が反対する原発の再稼働を進める必要性はなくなっています。


地熱発電への期待

 日本が原発再稼働へ無駄な資金を投入している間に、欧州は再生エネルギー開発に 余力を振り向けて発電効率を上昇させ、構成比率が40%〜70%と、20%の日本は大きく引き離されてしまいました。

 日本の再生エネルギーは、火山列島の地の利を活かすという観点から、地熱の潜在力が注目されます。
地熱発電は、地球の水循環と天然ボイラーを使った完全な再生可能エネルギーで、日本は地熱資源量で、 米国、インドネシアに次ぐ、世界第3位の地熱資源保有国です。
技術力には定評があり、世界シェアの70%を日本企業が占めています。
奇しくも地熱発電のメリットである安全電源、高い年間設備利用率、少ないCO2排出量、 高いエネルギー収支比は、これまで原発のメリットと主張されていたものと共通しています。
 弱点は、日本では最大でも11万kW程度と小規模なことです。
 それでも、地域の持つ熱エネルギー以上の発電をせず、地方活性化に向けた地産地消のベース電源として開発すれば、 小規模が長所になります。
 多くの資源が国立公園内にあるため、温泉業者と調整できれば、 日本の地熱資源開発は地域に貢献できる再生可能エネルギーとして大いに期待できます。


原発ゼロ社会の実現

 欧州で再生可能エネルギーが台頭する中、安全対策でコストがかさんでいる原発の競争力低下は世界の大勢になっています。
 日立製作所が約3兆円に膨らんだ総事業費を巡って収益が見込めないと英国への原発輸出計画から撤退、 米国の電力大手エクセロンの経営幹部も、「新しい原発は高くてもう建てられない」と発言しています。

 止まらない原発のコスト高は、企業の撤退を招き、国民からも支持されず、原発ゼロ社会の実現を導きつつあります。


文:小沼紀雄(文筆家)
月刊『食品と暮らしの安全』2021年4月号No384 掲載記事(全文)



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