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東電の嘘―危険なトリチウムを海に流すな


多くの反証があるにも関わらず、東京電力はそれには一切答えることなく、
福島第一原子力発電所汚染水の海洋への放出を強行する計画です。
汚染を拡大させるだけの嘘で塗り固められた海洋放出を許すことはできません。


東電3つの大罪

東電の汚染水処理の嘘で許せないのが
@トリチウムの特異性と危険性の隠蔽
A内部被爆と外部被爆を意図的に混同
B貯蔵タンク建設の可能敷地の虚偽
です。

 これらは1つだけでも問題ですが、それが3つも重なったとなると大罪です。
どうしてこのような嘘を突き通してまで、海洋放出に固執する必要があるのか。
東電と政府(経済産業省)の意図が理解できません。


変幻自在なトリチウム

 汚染水の主役となるトリチウム(三重水素)は、通常1個の陽子で構成される水素原子核に中性子2個が加わったもので、 弱いβ(ベータ)線を出しながらヘリウム3に変わります。
 化学的性質が水素と同じことから、自然界ではその多くが水の形で存在しており、 水のためALPS(多核種除去設備)でも取り除くことができず、汚染水として貯蔵タンクに保存されています。
また、水なので、固体、液体、気体と自由に姿を変えて地球上に拡散してしまいます。

 海洋に放出した場合には、魚介類の体内に取り込まれるだけでなく、 水蒸気として空気中に浮遊して移動するとともに雨水となって広範囲に降り注ぐことになります。
東電は放射線濃度を規制基準内に薄めて海に流すので問題ないと説明しますが、 重要なのは薄めて放出しても、トリチウムの絶対量は変わらないということです。
 自由に形態を変えられるトリチウムの変幻自在性を考えれば大事なのは放出量です。


沈黙の殺人鬼

 トリチウムの危険性は、放射線が細胞の遺伝子(DNA)を傷つけるだけでなく、 水素同位体として遺伝子そのものの構成元素にもなってしまうことです(遺伝子の4塩基をつなげているのは水素結合力)
その場合、β線を放出するヘリウム変換では、遺伝子自身が崩壊、損傷してしまいます。
遺伝子は外部から受けた放射線の傷は治せますが、自己崩壊した傷を治すことはできません。
 発ガン性が高まるだけでなく、生殖細胞の遺伝子損傷は子孫へと受け継がれていきます。
トリチウムは、素知らぬ顔をして静かに近づいて取り付き、徐々に体をむしばむ「沈黙の殺人鬼」なのです。


怖ろしい内部被爆

 東電と原子力関係者は、トリチウムは自然界にも存在し、原発から40年以上放出し続けているものの、 放射線も極めて弱く、人体への影響は見られないと強弁しています。
 しかし、これは外部被爆と内部被爆を完全に混同した議論です。
内部被爆による極微量放射能が人体に与える影響については、チェルノブイリ汚染地で、 食品と暮らしの安全基金が続けている 「日本プロジェクト」の実態調査でも明らかになっています (詳細は3.11別冊『食品汚染を減らして実証・極微量放射能の危険』参照)。
 妊婦へのエックス線検査禁止を訴えた英国のアリス・スチュアート博士(1906年〜2002年)が 「ピンポイント放射線」と呼んだように、至近距離から直接遺伝子を傷つける内部被曝に放射線の強弱は関係ありません。
 特に脂肪や蛋白質などと結合した有期結合型トリチウムは、体内に長く留まるため影響は大きく、 米国では原発稼働地域と乳ガン罹患率の相関性が実証されており、 日本でも原発に近い地域での白血病やガン死亡者数の増加が報告されています。


記事:小沼紀雄(文筆家)
月刊『食品と暮らしの安全』2021年4月号No384 掲載記事(全文)



pdf東電の嘘―危険なトリチウムを海に流すな(PDF 657KB)

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