断熱材は10cm厚
オーストラリア産羊毛

新事務所の断熱は、オーストラリアのウールを使用。
断熱効果はもちろん、チクチクする粉じんも飛ばないので、
作業者への安全性も考慮されています。

断熱材構造
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●作業員の健康を守る
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新事務所の断熱材には、オーストラリア産100%天然のウールを、高価ですが採用しています。コンクリート断熱に適した「外断熱」は採用しませんでした。
ウールの利点は、作業する人の安全と健康を守れることです。
断熱材として一般的なグラスウールやロックウールの素材は、文字どおりガラスや石。そのため細かな粒子が飛ぶので、人体に入るのを防ぐために特別なマスクを装着して作業しなければなりません。ロックウールとグラスウールは発ガン性を指摘されるので、作業者の安全を守る必要があるからです。
また、作業中にチクチクしますし、作業後は作業服から取り除くのが大変です。
天然ウール素材はこのような問題が少なく、作業する人にとって安全で快適なのです。
第2の理由は、隙間をふわっと埋めて断熱できること。壁内部の柱・梁・窓枠・配線関係など複雑な形に対応できる柔らかいウールは自在に対応できます。
天然ムク材は、収縮や変形することがあります。また、地震が起きて変形することもあるでしょう。ボード型の堅い断熱材だと、このような変化に対応できず、隙間ができてしまいます。こうなると断熱効果が低下し、結露を起こすことも考えられるのです。天然ウールはこういうときにも柔軟に対応できます。

ウール断熱材

ウール断熱材は、柱と幅の同じ10センチの厚さ

貼り付け作業

断熱材の貼り付け作業

ウール断熱材
作業性がいいウール断熱材
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外観
壁が出来上がり始めた外観
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●結露を防ぐ調湿機能
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「せっかく土台や躯体の耐久性を高めても、断熱材自体が長持ちしないと効果は薄れてしまいます。天然のウールは水分を吸収できるので、結露を防げるし、断熱材の耐久性にもつながります」
中心になって設計した相根昭典さんは、こう指摘します。冬の暖房で室内が乾燥しても、断熱材を入れた壁面とその近くは湿度が80%くらいになっていることも珍しくありません。そのためにカビやダニが発生してしまいますが、この点を改善しようとウール断熱材を選択しました。実際に触ってみると、ふんわりと柔らかく、さらさらした気持ちいい感触です。
吸音性にも優れており、室内の反響を減らしたり屋外の騒音を防ぐこともできます。
なお、羊毛ですから防虫・防カビ処理は必要で、ホウ酸で処理しています。
断熱材を入れる壁の構造は上のようになっています(イラスト参照)。
壁の外側はガルバリウム鋼板。これは、アルミ二ウムと亜鉛合金で鉄鋼を挟んだもので耐食性・耐熱性・加工性などに優れた鋼板です。トタンに比べて少なくとも3倍以上の耐久性があります。
ガルバリウムの内側は10mmの空間、その内側は耐火壁で5mm厚の珪酸カルシウム板(ケイカル板)、次が100mm厚の天然ウール断熱材、12.5mm厚のプラスター(石膏)ボード、一番内側の内壁表面は、貝がらしっくいスプレー(『貝てきパウダー』)で仕上げます。
何層にもなりますが、接着剤は使いません。シックハウスを防ぐために、基本的に接着剤は不使用です。ただし、扉に米のデンプンのりを使うなどの例外はあります。
なお、壁だけでなく床下にも5センチ厚のウール断熱材を使っています。

●資源再利用の内壁

室内にいる人が直接触れたり目にする内壁は、木と、貝がらを原料にしたしっくいです。年間60万トンの貝がらが産業廃棄物として捨てられているので、これを利用しています。
このしっくいは、合成樹脂などの化学物質を使用していないため、人の健康を保ち、なおかつ室内の生活臭やホルムアルデヒドなど有害物質をある程度吸収し、吸湿性もあります。
今まで見てきたように、ウール断熱材を特長とする新事務所の壁は、(1)作業者の安全性 (2)天然素材使用 (3)湿気の吸収放出 (4)それにともなう結露の軽減 (5)耐久性 (6)快適性 (7)資源再利用の7点を考慮しています。

林克明(ライター)
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2007年7月1日発行 No.219より


外壁は耐久性に優れた建材(ガリバリウム)(220号)>>

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