オリジナル構造金具で
抜群の耐震・耐久構造

ステンレス製の特殊金具を用い、強い揺れに耐える耐震・耐久構造。
長くもつ工夫をご紹介します。

筋交い外観

●筋交いにも工夫
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連休明けの5月7日に現場に行くと、柱や梁に金具が多数取り付けられているのが目にとまりした。
新事務所は群馬県産のヒノキの土台に杉の柱を使用、1階から3階まで柱が一直線のシンプル構造。この簡素な造りが垂直加重や揺れにも抜群の強度を保つことは、前回報告しました。
しかし、これだけではありません。軸組みが出来上がった段階で大切なのは、柱や梁・筋交いと、それを固定する構造金具です。
筋交いとは、柱と柱の間に斜めに渡す補強材のこと。台風や地震でかかる力に耐えて軸組みの変形を防ぐために使用します。
タスキ型(・字型)に入れて軸組みを支えることによって左右両方からの力(地震・風圧)に対処させて、構造をより強固に保てるわけです。
普通は、圧縮の力に対して機能を果たすのですが、ここに金具を取り付けることで引っ張りの力にも対応できるのがポイントです。そして、この構造金具は設計の相根昭典さんが考案し、メーカーに特注したオリジナル製品。耐震性・耐久性を徹底させる相根さんの建築思想を具体的に表す材料といえるでしょう。


金具試験

上:構造金具の試験風景
下:一般的に使われるZ金具では筋交いが破損

Z金具

下:事務所で使われる金具。試験ではZ金具の2倍の加重でも破損しなかった

事務所使用金具

●一体型で強度増す
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構造金具は、ステンレス製です。奈良の東大寺大仏殿(1709年再建)は、世界最大の木造建築物ですが、明治時代の改修で鉄骨を入れたり、鉄のアンカーボルトを打ち込んでいました。アンカーが錆びてしまったことが、昭和の大修理を行う必要が生じた理由の一つです。
良質な材木より、先に鉄が劣化してしまうことは十分考えられるので、新事務所の構造金具は、すべてステンレス製にして耐久性を高めています。
柱と土台と筋交いが交差する部分に注目してください。筋交いに付いている金具・土台と柱の角にある三角状の金具を一体化させています。これによって、柱・土台・筋交いが連結されるため、筋交いが外れにくいのです。
さらに、ワイヤーを取り付けることで最高水準の引っ張り強度を実現しました。このワイヤーは、強度は違うものの、基本的にはエレベーターに使用するものをイメージしてもらって構いません。自由度のあるワイヤーの特性を活かし、地震の衝撃を吸収させるようにしています。
本来なら長くて丈夫なボルトでつなげればいいのですが、現代の技術では、コンクリートのアンカー金具と柱の受け金具の位置を正確に合わすことができません。そのため、通常は金具を歪めて変形させ、強引に締め付けているのですが、新事務所では、ワイヤーで強度を補っているのです。ワイヤーには可撓性、つまり自由度があるので微妙な施工誤差にも対応します。

●標準より3倍の強度

オリジナルの筋交い金具は、試験でその強度が証明されています。通常使用されているZ金具と呼ばれるものを使った場合と比較した試験結果を見てみましょう。
もちろん、Z金具は建築基準法で認められている構造金具です。
筋交いを組み合わせた軸組に機械的圧力をかけました。まず、オリジナル金具使用の筋交いは、14.0kN(キロニュートン)の加重をかけて270mm軸組みを変形させてもまったく破損しません。
これに対してZ金具では、6.77kN(キロニュートン)という半分以下の加重で80mm変形させた段階で筋交いが裂けてしまいました。
つまり、オリジナル金具は、約2倍の加重に耐え、約3倍の変形圧力にも耐えるという試験結果が出ているのです。
これまで述べてきたように、新事務所は石のように堅固なコンクリート土台に15cm角(ふつうは10・5cm)の柱、そして構造をシンプルなものにすることによって、耐震性と耐久性を追求しています。これに加えて適切に考案されたオリジナル構造金具が、軸組みを安定させ、強度を保っています。
現在の一般的な木造建築は30年ほどしかもちませんが、それに警鐘を鳴らし、手本を見せる仕様になっています。

林克明(ライター)
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2007年6月1日発行 No.218より

断熱材は10cm厚(219号)>>


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