おしゃぶりが危ない
おしゃぶりで異常になった幼児の歯並び

月刊誌記事から>母子手帳に注意表示(No.215)


  厚労省が認めた「おしゃぶりの弊害」   おしゃぶりによるかみ合わせへの悪影響について、
  2007年4月から、母子健康手帳に記載されることに。
  危険性を訴え続けた亀山先生の歴史的大勝利です。
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「おしゃぶりによる顎顔面変形症は、子どもにとって深刻な障害で、一生を左右しかねない。自分にも同年齢の子どもがいるためか、どうしてもこの問題に真剣になりすぎてしまう」と話す歯科医の亀山孝將先生は、精力的に「おしゃぶりの危険性」を訴えてきました。
 亀山先生の意見を受けて、小児歯科学会(小児科と小児歯科の保健検討委員会)が、2005年1月に「おしゃぶりについての考え方」を発表。「おしゃぶりを長期に使用すると乳歯のかみ合わせに悪影響を与えると考えている」と見解を出しました。

●子どもたちの深刻な被害
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 東京弁護士会で講演をしていた亀山先生が、その足で安全基金を訪れたのは同年の8月、熱意を持って語られる「おしゃぶりの弊害」に私たちは驚き、すぐに本誌に掲載(197号)。発行直前だった『使うな、危険!』にも、記事を差し替えて記載。
 すると、読者から「上の子に、おしゃぶりを使用して育てたら歯並びがガタガタになったので、下の子におしゃぶりを与えなかったところ、その子の歯並びはきれいに育った」「今まで、なぜ1人だけ歯並びが悪いのかと思っていたら、その子だけおしゃぶりを与えていた、記事を見て、子どもに申し訳ない思いでいっぱいだ」など、たくさんの情報が寄せられました。
 私たちの活動によって、おしゃぶりの危険性が広く知れわたることになったのです。
 続いて安全基金は、おしゃぶりの3大メーカーに質問状を送り、表示・補償について問い合わせました。おしゃぶりの弊害について、お母さんたちが知らなければ、被害者は増える一方だからです。
 すると、コンビから、「間違った使用法における危険性などを、パッケージや取り扱い説明書に表記していく方向で検討中」と、前向きな回答が寄せられました。
 ところが、1年後でも総合カタログでも製品パッケージにも注意表示が表記されませんでした。
 亀山歯科医院のホームページには、おしゃぶりの被害事例が30件以上、掲載されています。
☆3歳2か月女児−交叉咬合・下顎前突(ピジョンおしゃぶりを生後6か月から現在まで寝る時昼2時間・夜1時間使用)。
☆2歳6か月男児−開咬5mm(NUK〈コンビ製〉おしゃぶりを生後3か月頃から寝る時に1日約4〜5時間使用。鼻呼吸と顎の筋力のために使用)
☆2歳0か月女児−開咬2〜3mm(NUKおしゃぶりを生後6か月ぐらいから鼻呼吸のために1日約2〜3時間使用。こうなると知っていればやらせなかった)」
など。

 開咬とは口を閉じたとき奥歯以外の歯がかみ合わず、前歯に隙間が出来る状態のこと。
 交叉咬合とは、上下の歯のかみ合わせが横にずれている状態をいいます。
 子どもたちの被害は深刻です。
 2006年6月には、被害者親子が使用していたおしゃぶりのメーカーに対し、製造物責任の追及、製品の改善を求める訴訟を起こしました。被害者の女の子は、長期使用で顎が変形し、発音の発達も遅れ、幼稚園生活では精神ストレスが高まっていると訴え、裁判は今も続いています。
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※亀山歯科医院WEBサイト >> http://www.114118.jp/
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●メーカーは早く表示を
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 亀山先生はさらに昨年夏、厚生労働省に直訴。粘り強く働きかけた結果、今年の1月23日に出された通知、「母子健康手帳の改正について」によって、「おしゃぶりの長期間の使用によるかみ合わせへの影響について記載」が、「育児のしおり 幼児期 1歳頃」の項に載ることになりました。
 今年4月1日以降に配布される母子健康手帳から新規追加されます。
 2007年2月に改めてメーカーのホームページを見てみると、
 ピジョンは、「商品に関してよくいただくお問い合わせ」の中で、「おしゃぶりを使うと歯並びが悪くなると聞きましたが?」の質問に、「歯がはえそろう時期に、厚みのある固いものを噛んでいると歯に強い圧力がかかり、歯並びに影響が出ることがあります」と記載しました。
 ところが、コンビの場合はQ&Aで、「おしゃぶりってホントにいいの?」に対し、「はい。今ではアゴの発育に大変効果があることが認められ、ドイツではおしゃぶりのことを「訓練器」と呼ぶそうです。中でもNUKおしゃぶりは、その優秀性から欧米で歯列矯正補助用具として広く使われています」と回答。
 また、「おしゃぶりはいつまでしていいの?」に対し、「欧米ではエクササイザー(訓練器)として4才くらいまで使用していますが、日本では2才から3才までの使用が多いようです」などと記載。
 今おしゃぶりを使っている子どもとお母さんたちのために、コンビは、一刻も早く記載内容を変更し、注意表示をすべきです。

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2007年3月1日発行 No.215

>>おしゃぶりTOPへ
>>亀山先生インタビュー(197号)
>>表示・補償について企業から回答(198号)
>>おしゃぶりPL訴訟(229号)


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